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魔法の呪文はスキトキメキキス(きょうの本)

OLの茅ヶ崎リナは、日々降りかかってくる無理難題も、魔法のコンパクトでミラクリーナに“変身”し、妄想力を駆使して乗り切っている。そんなある日、元魔法少女仲間のレイコが、恋人の正志と喧嘩。よりを戻すためには「レイコの代わりに魔法少女になること」を条件に出すと、意外にも彼は魔法少女活動にのめり込んでいくが……。(amazon掲載記事による)

 読むでしょ。
 このあらすじを見たらまず読むでしょ読まざるをえないでしょ、とおもい手にとった1冊。
 はずかしながら村田沙耶香さんの作品をはじめて読みました。
 お噂はかねがね、芥川賞作家にして世界でも大人気との評判も存じ上げておりましたがなんとなく手にとったことがなかったのでした、が、あのね、あのですね、このご本、すごくおもしろかったです。
 おもしろかった!
 ええーなんでいままで読んでなかったんだろうわたしのばかばかーってくらいすべてがしっくりと馴染む感じでよかった。
 最近立て続けにちかごろ流行りの日本の女性作家の作品を読んではいやたしかに時代のあれこれを描かれてはいるんだけど、現代日本社会に生きる身としてわかるわかるとおもうところもあるんだけどでもなんとなく文章とか肌合いがうまくいかないなあと0おもったりしてどれも途中でやめてしまっていて、今回もそうだったらいやだなあ、いやそれはすべてわたしのこころもちというかタイミング的に日本の現代文学にシフトできない時期になってるとかそういう問題なんだろうけど、本を読むのを途中でやめるってけっこうストレスなんだよなーとかってそんな、個人的な感慨は置いておくとしてもそういう状況だったのでこの御本に出会えて二重の意味でよかった。
 おもしろかったです。
 しばらくぶりにやっと息がつけた感じ。

 短編集でした。
 表題作の「丸の内魔法少女ミラクリーナ」は読んであるあいだに、こどものころおさななじみと遊んだ思い出とかいろいろとよみがえったし、なんならいまもおさななじみにあだなす者は成敗してくれるというこころざしがわりとどっかにあるのでたぶんそれでよけいに、彼女たちの選択というか行動や感覚がわかるわかるーってなったし、あとなんていうか出てくるひとのすべて、ああこういうひといるよなっておもいました。
 登場人物の造形が細部もすごいリアルで、しかもその描き方が悪にも善にもかたよってなくて、ああこういうひといるいる、こまるときもあるしうわーってなるときもあるしすきってなるときもあるわーという、ちょうどいいフラットな距離感で読むことができました。
 すごいなあ。
 うまいなあ。
 
「秘密の花園」は「初恋を終わらせるため」に初恋の相手である早川くんをマンションの一室に一週間監禁する女子大生の話。
 あっこういう設定知ってる読んだことあるとおもって本棚からひっぱりだしたのはトジツキハジメ『不連続世界』。

 こちらも十年以上みつめつづけていた初恋(なんだろうか)の相手をマンションの一室に一週間監禁する男子大学生の話です。
 BLだよ。
 小説とBL漫画、閉じ込める側が女性と男性、くらべてみるとおもしろいかもしれないなとおもいました。
 「無性教室」は性別を禁止された学校に通う生徒たちの日常と恋。
 いまのところはありえないはずの世界設定なのにもしかしてとおもわせるような、登場人物たちの心情や動きにひきこまれました。
 おっもしろいな!
 「変容」は母親の介護が一段落してファミレスでバイトをはじめた40歳の女性が介護と家事に明け暮れていた2年のあいだに社会から「怒り」の感情が消えているようだということに気づき、そしてという話。
 読みながらおもったんですけどわたしもちょっとまえまでいろいろなことにひたすら怒ったりなんだりしていたんですけど(主に職場方面で)最近それを「かなしい」っていう表現でやりすごすことがふえてきた気がしていたんですよね。
 まさにこの世界だよね。
 こういうやりくちでいろいろと自分を守ろうとするひとふえてきてるんじゃないかしらとかちょっとおもっているところだったので、まさにどんぴしゃで、ウワー!! と叫びたくなりました。
 突拍子もないようでいて日常から地続きにある世界かもしれないなとおもわせる、この筆力がすごい。
 なんでいままで村田作品読んでなかったんだろう、おもしろいな……!
 ほんとに何回おもしろいって言うねんって感じですがほんとおもしろかったので何度でも。
 
 これから村田作品をせっせこ読もうとおもいます。
 たのしみがふえたよ。
 前回ご紹介したクレア・ノースも、あと黒田夏子さんの作品もいま手元にあるのでいろいろとしあわせです。
 おもしろいとばっちりわかっている作家さんの作品が手元に控えているのってさながら大富豪になった気分ですね。
 読むぞー。

 

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