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映画『あなたの旅立ち、綴ります』のススメ

異質な取り合わせの人間たちが出会い、互いに影響を与え、そして別れていく—そんな物語が好きです。

ハナっから意気投合した人と長く付き合えるのはもちろんサイコーですが、「何考えてるんじゃコイツ…」から始まったただひとたびの邂逅が、いつかどこかで互いの支えになる。そんな関係、プライスレス。


さて、本作の台風の目は、元やり手の広告代理店経営者ハリエット。

昨今、本邦でも"終活"が流行っていますが、この方はそんなしんみり情緒的なタマではございません。才能あり、決断力あり、なんでもできちゃウーマン。事業で成功し、金もうなるほどある。しかし性格がアレです。訃報を聞いたらみんな喜ぶと言わしめるほどのアレです。

そんな傍若無人な態度が高じてリアルに・そして誰もいなくなった系・くそBBAが、「はて、自分が死んだら訃報欄には何が書かれるのか?内容に口出しできないのは我慢ならない」という理由で、今すぐおくやみ記事を書かせようとするところから物語が始まります。

執筆依頼(ほぼ強迫)を受けたのは弱小地方紙の若手記者アン。
訃報専門のライターです。

実は、アンには創作で食っていきたいという秘めた思いがあり、しこしこ文章を書き溜めているものの、才能に自信がなく誰にも作品を見せていません。現状に満足はしていないものの、そこそこ幸せなので踏み出さなくてもまぁいいかと思っている、こじらせ系サブカル女子。のにほいがします。

この新聞社では、故人についての情報を周囲の人間から集めておくやみ記事を書くのですが、今回はなんせターゲットの性格が性格ですから悪評が出るわ出るわ…。どうあがいてもまともな内容になりません。
あまりの酷さにドラフト提出後、互いにブチ切れて「この能無し!」「てめーの性格が悪すぎなんじゃ!」か~ら~の、ハリエット Presents "『完璧なおくやみ記事』を成立させるための4つの方法・実践編"スタート。これは面白くならないわけがない。

アンはハリエットの人生の軌跡をたどり、これまでに起きたさまざまな事件や人間関係を垣間見ます。そして、自分のやりたいと思ったことに一切の躊躇なく(時に力ずくで)取り掛かるハリエットの生き方に少しずつ影響を受けていきます。

一方、ハリエットはアンが趣味について熱く語る様子や、自信のなさに懊悩する様子をみて、若き日の情熱を、自らの苦い過去を思い出します。(そしてとんでもない行動に出るのですが笑)

はたして、『完璧なおくやみ記事』は無事にできあがったのでしょうか?
詳細は本編をご覧ください。


やがてハリエットとアンは人生を見つめなおし、物語終盤で新しいステージへと旅立ちます。

家族でも恋人でも友人ですらない、ちょっとしたきっかけで出会った2人。
互いがこれほどまでに自分の人生に影響を与えるとは、思ってもみなかったことでしょう。

思うように生きる。それが人生において一番大事なこと。そして、どんな出会いも、自分と世界を変える可能性を秘めている。早すぎたり遅すぎたりなんてことはない。その気になったのなら、いつでも針路を修正してよいのだ。
そんなメッセージが伝わってくるようです。

さて、自らをかえりみて、わたしは思うように生きることができているでしょうか。いつかどこかですれ違った誰かの力になれているのでしょうかね。
もしそうであれば、この人生もそう悪くはないと思えるのですが。

時節柄、新たな出会いと別れに向き合う方も多いのではないでしょうか。
どうか、あなたの旅立ちが希望に満ちたものになりますように。
あなたの行く先によき出会いがありますように。
あなたとの出会いが、誰かにとって希望となりますように。


映画公式サイト
http://tsuzurimasu.jp/



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