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第8話「テレビ局をやめようと思った日」

水曜どうでしょうカメラ担当ディレクター・嬉野雅道と、SHARP公式の中の人・シャープさん。大阪で語り合った連載の第8話をお届けします。(聞き手:嬉野珈琲店、T木)
*前回のお話はこちら→第7話「会社に頼らず、ファンに頼る」 

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T木:

お二人とも、企業にいるサラリーマンでもあるけれど、こういう風に挑戦する覚悟もおありなんでしょうね。

嬉野:
さっきの控え室の話だね。「そら、21年かかるんですよ」っていう。

T木:
シャープさんはあと15年ぐらいですよね。結構お辛い目にあったり…?

会場:
(笑)

嬉野:
友達3人って言ってましたもんね。

シャープさん:
誇張なく3人。


嬉野:
誇張なく(笑) あとシャープさんがあなただっていう整合性が社内でも取れてない人もいる?

シャープさん:
社内でもいっぱいいますよ。僕がやってるって知らない方。

嬉野:
そこ、あんまり疑問にはなっていかないんだね。

シャープさん:
というか、ぼく、ファンの人と仲良くやっていくには、会社にいるっていう立場を半分くらい捨てないといけないと思っていて。

T木:
会社の立場を半分捨てる。

シャープさん:
はい。今日から半分くらいシャープ社員をやめようと思って、ツイッターを始めたから、こういう話し方ができてるんです。どっぷり会社にいる人からしたら「こいつ会社から半分出て好き放題しやがってけしからん」って言われるかもしれないってのは想像できる。

嬉野:
なるほどねえー。

シャープさん:
会議とかたくさんあるんですけど、会議で何も考えずに「お客様目線で」なんて言ってるわけですよ、思考停止してると思うんです。お客様との距離なんて実際にこちらから近づいていかないと変わらないわけですよね。でもそれをせずに「お客様目線」なんていってるのは僕はナンセンスだなと思って、もう半分会社やめようと。でもそうすると友達が減るという。

会場:
(笑)

嬉野:
僕なんてねえ、会社の立場を半分捨てるもなにもなくて、最初からそんな感じで…。

T木:
そうですよね、そう考えると藤村さんはどうなんでしょうね。新卒で入社されて、5年間は他の部署で働かれてたわけですが。

嬉野:
あの人は特殊な人だからね。
みなさんこそご存知でしょう。オレだって21年一緒にいて、そう思うんだ。

会場:
(笑)

嬉野:
あんな人見たことない。あんなサラリーマンいないと思うよ。
最初から捨てるっていうことがないっていうのは、元々入ってないというか。出たり入ったりじゃなくて。社外と社内の境界線を感じないというか。

T木:
さきほどもありましたが、必ずしも追い風というわけではなかったと。

嬉野:
まあ向かい風の時期もあったし色々話はあるんだけど、いま潮目が変わって追い風なもんだから。こちらとしてはことをあらだてる気もないんだけどね。いま、いいから(笑)

シャープさん:
やめようと思ったことは…。

嬉野:
そりゃあありますよ、2010年にね。俺と藤やんともう一人、福屋渉っていう。

T木:
福屋キャップですね。

嬉野:
どうでしょうも他の番組もやってたわけ。ドラマ「ミエルヒ」っていうのも賞とかまでもらったのに。ある日会社いったら「大改革する」っていって、制作部なくなってた。なんでうちの制作部なくしたのって。意味がわからん。考えても考えても意味がわからん。ってことはそもそも、あの人たちには考えというものがないんだろうなってとこにたどり着いた。

T木:
考えがそもそもない。

嬉野:
正統な理由などはないのだろうと。でも、そんなことばっかり考えてると、どんどん具合が悪くなっていくんで、コーヒーを始めたわけ。具合の悪くなることを考えてしまう連鎖から逃れたいと思って。社内カフェを始めたら楽になった。良くないものに奪われていた私の心がコーヒーのアロマでハッピーになっていく。そして、いまではコーヒーまで売ってるわけですよ、いつのまにやら。

シャープさん:
じゃあコーヒーはじめられたときは、結構しんどいというか「なんだかなあ」と思うところがあったんですか?

嬉野:
そうですよ、やめようと思って。でも考えて考えて、やめるっていうのはよそうっていう。

T木:
やめるのもやめる。

嬉野:
そうそう。これだけ会社に貢献してるのに、貢献してる俺らがやめるっていうのはどうだろうっていう。あと、この会社でこそできた「どうでしょう」なのだから、この会社を出るっていうのはやめようっていう。それはつまりこの会社の地下深くに目に見えない鉱脈みたいなのが流れてるんじゃないかなって。その鉱脈からの影響に守られて「水曜どうでしょう」は出来上がった。とすれば、会社全てにろくでもないなと反感を持ってしまうことは、いったん無視してしまったほうが、あとあと自分たちにとって得なんじゃないかなって。思い直した。思い直してよかったと思いますよ。

(つづく)

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お読みいただきありがとうございました。明日は、会場からの質問に二人が答えます。「新しいことをはじめる、または環境を変えるときに何を考えますか」という質問に、返って来た答えは意外なもので…!?どうぞお楽しみに。
(明日の記事「前向きに、友達を減らそう」に続きます)

《連載目次》
第1話(3月13日)
まずは前枠「ほんとうに初めまして。」
第2話(3月14日)
「行きがかり上、中の人やってます」
第3話(3月15日)
「宣伝しながら宣伝しない」
第4話(3月16日)
「『ありがとう』に泣かされる」
第5話(3月17日)
「炎上の火中、エモさで飛び込む」
第6話(3月18日)
「水曜どうでしょうVSコンプライアンス」
第7話(3月19日)
「会社に頼らず、ファンに頼る」
第8話(3月20日)
「テレビ局をやめようと思った日」
第9話(3月21日)
「前向きに、友達を減らそう」
第10話(3月22日)
「注釈は、堂々と言えば、文脈になる」
最終話(3月23日)
「幸せな働き方ってどんなものですか?」

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表紙はアニメ「進撃の巨人」を手がける浅野恭司さんの書き下ろし。
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◎水曜どうでしょうディレクター藤村忠寿・嬉野雅道と人生を旅するマガジン 『Wednesday Style』創刊!

水曜どうでしょうディレクター(D陣)藤村忠寿と嬉野雅道が、毎月多彩なゲストを編集長にむかえてお届けする月額マガジン「Wednesday style」。3月のゲスト編集長は、ライター・カツセマサヒコさんです。テーマはあえて直球の、「テレビとインターネット」。購読受付中です!

〇「テレビとインターネット」について徹底的に考えた『Wednesday Style』創刊号、公開開始!一部無料公開中。

(今後のゲスト編集長:SHARP公式さん病理医ヤンデルさんたらればさん

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