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【10】2020年はキジェ浦和への準備期間なのか?

①西野努TDとの関係性
②浦和と湘南の蜜月関係
③空白の2020年問題
④パワハラ問題をどうするのか

浦和レッズを追いかけている人間の中で噂話となっているのが、湘南ベルマーレ前監督の曹貴裁氏の将来的な浦和の監督就任である。

現在Jリーグ監督ライセンス停止中の曹氏は、研修の一環で関東大学リーグ2部・流通経済大学サッカー部を指導する予定であることが1月下旬に発表されたばかりだが、浦和の不可解な監督続投劇により曹氏のライセンス復帰までの時間稼ぎをしているのではとの見方が一部である。あくまでただの噂話だが、色々な要素をこじつけて踊ってみたい。

①西野努TDとの関係性

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新TDの西野氏が情報マネジメント学部教授(スポーツマネジメント専攻)として在籍している産業能率大学は湘南ベルマーレとスポンサーの一つであると共に提携関係にあり、曹貴裁氏もスポーツマネジメントの客員教授として授業を担当している。94年、95年に浦和でチームメイトであった2人は、現在でも何らかの関係性があると想像できる。西野氏の文献に曹氏について言及している部分がある。

コミュニケーションの質
ありがちなのは、チーム全体のミーティングで試合や練習の説明を一方的にすることだ。もちろん、やりたいことを伝えるときには一方通行になるかもしれないが、選手が理解しているかどうか、選手が理解した上で実践できる状態にあるかを確認するには、選手の声も拾うことが求められる。このコミュニケーションに長けているのが、湘南ベルマーレの曹貴裁監督だ。
 クラブチームの監督は、選手の編成が重要な仕事でもある。一方で、自分のほしい選手だけで編成できるわけではなく、予算の制限等もあり、シーズン最初に目の前にいる選手でチーム(組織)を創り上げていかなければならない。曹監督は、育て上げた主力選手たちを高額な年俸を掲示する他クラブに毎年のように移籍で引き抜かれていくにもかかわらず、常に若い選手を育成し、チームのパフォーマンスも上げていくという難しい課題に挑戦し、実績を上げている。
 曹監督は、ミーティングの重視・丁寧な1on1・常に全力で取り組むトレーニングで選手育成とチームパフォーマンスの両立を進めている。
 まず、ミーティングという限られた機会で、何をどう伝えるかということを常に考えている。そのミーティングの準備にも相当な時間を割く、試合に勝つことを富士登山に例えたり人生に例えたりという、話す際の工夫だけでなく、ビデオを活用し、けがで離脱している選手からのメッセージビデオを試合直前のミーティングで見せるなど、さまざまなものに興味を持つことで情報やネタの仕入れもしているという。
 また、選手との会話・対話もできる限り行い、率直に思っていることを伝える。時にはチーム全体の前で、時には個別に、その相手のキャラクターや話すべき内容によって、伝え方も考える。今でこそ、1on1というコミュニケーションスタイルは広まってきているが、曹監督は常に実践している。
 1on1で重要となるのが、監督と選手がいかに良い関係性を構築できるかであり、安全性の確保・傾聴の二つが関係性を構築する上で重要となる。安全性の確保とは、「その組織(チーム)に自分がいて良い」と無条件に感じることができる状態を言う。安心することで、本音を打ち明けることができるようになる。逆に、万が一、会社の方針や上司の意見に反することを言ってしまうと不利益を被るという恐れを感じているとすれば、本音を引き出すことはできないし、本当のコミュニケーションがとれない。英語では傾聴をアクティブラーニングと表現するが、「ただ、黙って相手の話を聞くのではなく、うなずいたり、相づちを打ったり、相手が発したキーワードを繰り返したりすることが大切である」。(『ヤフーの1on1』本間浩輔著 ダイヤモンド社)
 このような1on1を継続して実践するからこそ、選手の気持ちや状態に対する理解が生まれ、ミーティングやトレーニングを選手が満足するものにすることができ、選手の育成を促すことができる。
 また、トレーニングでは、常に全力を出し切ることを求め、飽きさせないことや常にサッカーを楽しませることを念頭に置いている。曜日やタイミングによってパターン化させると、選手は「またこのトレーニングか」と飽きる状態になってしまうことがあるが、曹監督は、常に選手の期待を裏切る、選手に読まれないトレーニングメニューにしている。さらに、少しでもそのトレーニングが選手に合っていないと察知した瞬間に別のトレーニングに切り替える。さまざまなトレーニングを持っているという引き出しの多さとともに、普段から質の高いコミュニケーションを積み重ね、選手のパフォーマンスや選手のパフォーマンスや様子を常に観察しているからこそ、なせる業である。
(西野努「スポーツチームのリーダーシップと人的マネジメント」.『経営センサー』211:40-43)

所属する大学の提携先ということで多少の贔屓もあるかもしれないが、ブログやTwitterにおいて湘南と浦和を比較し、金銭面に恵まれている浦和はもっと頑張れるのでは。というような発言もしており、湘南および曹氏を好意的に捉えているのは間違いないだろう。浦和のフロントに入った今、曹氏の2歳上で同じくチームメイトであった土田SDともに曹氏招聘に乗り出すのは想像に難くない。
周知の通り曹氏は一連のパワハラ問題で湘南の監督を退任。その後S級ライセンスの1年間停止が決定され2020年10月3日まで指揮することができない。私はこの機会を渡りの船と浦和フロントは思っているのではないかと予想している。ライセンス復活までは新しく暫定監督を呼ぶのも面倒だし、引き続き大槻にやってもらい2021年シーズンからは曹さんにやってもらいましょうと。多くの人が感じた大槻監督留任の違和感も解消されるのではないだろうか。

②浦和と湘南の蜜月関係

2015 山田直輝→out 期限付き
2015 坪井慶介→out 完全移籍
2016 遠藤航←in    完全移籍
2016 岡本拓也→out 期限付き
2017 菊池大介←in   完全移籍
2018 山田直輝←in   復帰
2018 梅崎司→out  完全移籍
2019 武富孝介→out 期限付き
2019 岡本拓也→out 完全移籍
2019 武富孝介←in    復帰
2019 山田直輝→out 期限付き(2020に完全移籍に移行)

そもそも浦和と湘南は西野氏との関係性以前に選手の取引がここ5年ほど盛んな間柄である。曹氏の湘南監督3年目で2回目のJ1挑戦である2015年から始まっている。浦和の下部組織出身である山田直輝は浦和では出場機会が満足に得られない中で、2度の湘南移籍を経験するなど曹氏の下では重用されている選手の1人である。武富孝介もそんな選手の1人で、浦和加入1度目の前の所属クラブは柏であるものの2013、2014年の湘南への期限付き移籍で名を上げた選手である。彼も2018年浦和での出場機会を満足に得られず期限付きで湘南に復帰し重用されていたが、曹氏の一連の騒動を理由に浦和に復帰している。

武富は移籍の際のコメントで「今いろいろなことが言われていますが、僕自身は曺監督の指導には愛情があったと思っています。」と語っている通り、曹氏との関係性は良好なままであるようだ。山田直輝の完全移籍や杉岡の鹿島移籍など逆風とも取れる事柄はある。

③空白の2020年問題

曹体制を見据えたとして、問題なのは2020年シーズンが空白期間になってしまうということである。ただ、浦和のフロントの動きを見るとその辺の埋め合わせはすでに準備されていると見ることもできる。
土田SD「攻撃はとにかくスピードです。運ぶ、味方のスピードを生かす、数的有利をつくる、ボールを奪ったら短時間でフィニッシュまで持っていくことです。相手が引いて守るときには時間をかけることも選択肢としてありますが、フィニッシュを仕掛けるときにはスピードを上げていくことが重要です。攻守において、認知、判断、実行のプロセス、全てのスピードを上げることが重要になります。このプロセスをチームとして共有して、パフォーマンスとして見せることを目指します。」
これは新強化体制会見で話された言葉の一節で、この新体制が目指すサッカーというものが初めて明確に示された場面だが、曹氏が湘南で長年標榜し湘南スタイルと呼ばれたサッカーに酷似したものが語られたのである。

曹貴裁「ラングニックは現在、2部で首位に立つライプツィヒの監督を務めている。彼がホッフェンハイムで志向していたボールに対して人数をかけて前線から奪いに行き、スピーディに迫力をもって攻め切るサッカーに、僕はシンパシーを覚えていた。」(2016年『欧州サッカー批評12』)
ストーミングと自身のサッカースタイルの類似性を曹氏は度々語っており、2015年にストーミングの元祖とも言うべきラングニックと対談、2017年にはアタランタのガスペリーニと対談している。ちなみに平川コーチは2019年オフにザルツブルクやエイバルの視察を行ったようだ。両方ともストーミングを志向しているチームで、ザルツブルクはラングニックがかつてディレクターを務めていたストーミングのメッカであり、エイバルはメンディリバル監督によってラ・リーガでは珍しくストーミングが行われているチームである。

2021年の曹氏の就任の前にストーミングスタイルの意識づけをさせて土台固めをしておこうという算段なのかもしれない。度々使われる3年計画という言葉は、曹氏待ちの期間、そのスタイルの浸透期間という意味合いがあるのかもしれない。

④パワハラ問題をどうするのか

以前に私もストーミングの浦和をリクエストしていたように、曹氏就任は本当は喜ばれる未来であったかもしれないが、それを阻む最大の事案は湘南で起きたパワハラ問題である。

上記は、Jリーグが発表した曹氏の問題に対する調査報告書であり、プロ選手・スタッフを相手にした行動とは思えない暴言・暴力の数々が報告されている。この報告にある通り、曹氏の賛同者が複数いることや本人もスパルタを志向していることを認めているとしているが、奮起を促すためのパフォーマンスのレベルを超えた憂さ晴らしとも取れる行動も多いと感じる者も多かったようだ。
この報告書から考えると、日本古来の部活動にある恐怖政治に近いものが展開されていたのではと感じてしまう。曹氏の作り出した湘南スタイルが一時代を築き上げたことは動かぬ事実ではあるが、見た目の良い表面上だけをすくい取って浦和が求めるレガシーとして良いスタイルなのだろうかと甚だ疑問である。湘南はいわばそれを日常としてきた環境であったが、浦和に入る場合新参者になるわけでそもそも曹氏の暴力的なものを含んだスタイルに内部で拒否感が巻き起こる可能性もある。
1年のライセンス停止期間にはユース世代での指導等、更正に向けてのプログラムが用意されているとされているが、その1年足らずで完璧に更正されたとして、パワハラ的行動含めて曹スタイルだったものがパワハラに頼らずに指導するというものに移行するのは素人目に見ても1年では流石に短いのではと思うところである。
近い未来曹氏が就任するにしても、徹底したパワハラ監視機能が整った状態で浦和スタイルなるものを築き上げてほしいと切に願うばかりである。



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