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ドラマ『レイズド・バイ・ウルブス 神なき惑星』レビュー

【アンドロイドは子育ての愛情を持つか】

入江泰浩監督による『エデン』というアニメーションがNetflixオリジナルアニメとして5月27日に配信開始となる。人類が死に絶えた世界で、ロボットたちだけが暮らしている中に、新生児が発見されたものの人間を危険視するロボットたちに見つかったら大変ということで、2体の農業用ロボットが新生児を街から外へと運び出し、育てることにした、というストーリーだ。

そこから、どうして世界から人類が消えてしまったのか、ロボットが育てるといってもいわゆる人間のような愛情を持って育てることは可能なのか、自分だけが唯一の人間だということで、育てられた少女には成長過程の心理に何か問題は生じなかったのか、といったなんて興味が今から浮かぶ。

 ロボットと人類の逆転した勢力関係を背景に持った物語。それと同じようなシチュエーションのドラマが、『エデン』よりも一足早くHBO maxというワーナー・ブラザース系の配信サービスと提携したU-NEXTから、4月1日に配信スタートとなった。『ブレードランナー』や『ブラックレイン』『高い城の男』のリドリー・スコットが製作総指揮を務め、監督までした『レイズド・バイ・ウルブス 神なき惑星』というドラマのことだ。

 2話までを試写で見た『レイズド・バイ・ウルブス』は、何か地球でごたごたがあって、ミトラ神を崇める教徒の者たちが地球を船で脱出しようと試みていいる一方で、男型と女形に見えるアンドロイドが2体、シャトルめいた乗りもので地球から遠く離れた惑星ケプラー22bへと降下しているという状況が描かれる。

 2体のアンドロイドは着陸地点を誤り、シャトルを深い井戸のような大穴に落としてしまったものの、持ち出した機材を使って住居を作りつつ、持ちこんだ受精卵から赤ん坊を人工子宮めいたもので培養し、どうにか生み出すことができた6人の子供たちと一緒に暮らし始める。

 過酷な環境で人間が生きるのは難しいかったものの、どうにか10余年、それなりに道具も知識もあるファーザーとマザーのアンドロイドたちに挟まれ成長しては生き続けていた子供。もっとも、このままでは繁殖も難しくいずれ先細りは必至というところで、敵対する相手でもミトラ教徒にひきとってもらうべきだというファーザーと、ミトラ教徒は敵だと訴えるマザーとのあいだで諍いも起こる。

 そこにミトラ教団の移民船がやって来ては、調査団が降りてきて起こる対立から、始まる新しい生活はいったいどこへと向かうのか? 2話までではまだ先が見えない。

 そもそも地球でどうして兵器のロボットが人間たちを追い詰めていたのかが分からない。『ターミネーター』的な反乱なのか、それとも科学派と宗教派の対立が激化しただけなのか。ファーザーとマザーは誰によって命じられ、受精卵を持って地球を脱出しては、惑星ケプラー22bまでやって来て子供たちを育てようとしたのか。はっきりしたところは明かされていない。

 ミトラ教徒はどれだけの規模で宇宙に移民船団を送り出しているのか。その教義は何で人類をどうしようとしているのか、等々の謎もあってまだ先が見えないが、ひとつ気になるのは、やはり人類が賢明に繁殖していこうとする一方で、アンドロイドたちがそれをどういう“感情”で眺めているかということだ。

 愛情なのか、プログラムなのか。マザーの狂信的とも言えそうなキャンピオンら子供たちへの関心は、プログラムを超えてロボットの魂めいたものにも触れていそうな気がする。SFとして大いに気になるテーマを持ったドラマだ。

 全10話ある上にセカンドシーズンも決まったそうで、どういった主題が浮かび、その先にどれだけのドラマが待っているかも気になる。同じようにたったひとり、生き残っていた人間の少女がロボットたちと暮らす『エデン』とも展開を比べてみたい。最大の問題は、HBO maxもU-NEXTも入っていないことか。

 どうしよう。(タニグチリウイチ)

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