恋。驚きの吸引力。

二十歳の時、恋をした。
出会った瞬間、その人と目があって言葉を交わした瞬間、
体ごと心ごと、その人に吸い寄せられた。
ダイソン並みの驚きの吸引力である。
当時はまだダイソンはなかったけど。

背はそれほど高くなくて、
口が大きくて、愛嬌があるタイプ。
ああ、私はこういう顔が好きなんだ、と自覚した。
それなのに、家に帰ってその人を思い出そうとすると、
どうしても顔が思い出せない。
その人のことがとてもとても好きなのに。
その人の顔も、とてもとても好きなのに。

いつものカフェで女友達にそう話したら、
ベビーフェイスの彼女はタバコの煙を
斜め上にフーッと吐き出しながら、
「わかる」とうなずいた。
嬉しかった。

あの時の私は、その人の顔だけじゃなくて、
その人が醸し出す空気、話すリズム、
生き物として発するすべて、
そういうものに惹きつけられたんだと思う。
もちろん、顔も性格も笑い方も喋り方も、
もう二十歳なのに「大人になったらさあ」と
言っちゃう子どもっぽいところも、
大勢の中では控えめなのに
自分の軸があるところも、
全部好きだったけれど、
本当に好きだったのは、
その人が生き物として発する
すべて、だったのだと思う。

けれど、そんな種類の「好き」は
私にとって初めてで、
それはあまりにも捉えどころがなさすぎて、
怖くなって手放してしまった。

今になって思うと、そういう「好き」は
恋だけとは限らないよなあ、と思う。
誰かが、何かが発しているすべてに
一瞬で引き寄せられてしまう。
そんな出会いがある。
今思うと、欅坂46もその一つだった。

では、自分にとって櫻坂46はどうか。
と、ふと考えてみた。
少し違うかもしれない、と思った。
なぜか。時間は情報の積み重ねだ。
欅坂46から推し続けているからこそ、
私は膨大な情報を持ちすぎてしまっているのだ。
私の頭の中にぎっしり入った情報が、
思考が、時々邪魔をしてしまう。
もっと曖昧な「何か」を身体全体で受け取るよりも先に、
頭が情報に反応してしまっていないだろうか。
私はあのグループが好きだということを
私が知ってしまっているのだ。
それはもう、仕方のないことなのだけれど。

だから、今、櫻坂46に出会う人が羨ましい。
櫻坂46をよく知らないけど、だからこそ
あの子たちが発するすべてに強烈に惹かれる─。
そんなふうに感じられる人が羨ましいなと思う。

もう一度、新たな気持ちで出逢い直せたらいいな。
とふと思った冬の夜更け。
そんなことを今年は期待している。

そして、実はそれは可能かもしれない、
とも思う。
昔から知っている人の意外な一面を見て、
新たなその人に出会ったような、
そんな気持ちになることがある。
そのためには、私自身もどんどん変わっていきたい。
転がる石に苔は生えない。

櫻坂46のことはこれまでも今もずっと好きだ。
だからこそ、新たに出会ってみたいなとも思ってしまう。
期待しすぎと言われたらそれまでだけど。
2月15日に発売される5thシングルの「桜月」が
そんな出会いになったらいいな。と思う。
そんな出逢い直しに備えて、
私も心を柔らかくして、
いろんな感動に敏感でいたい。
いろんな世界に心を開いて、
心を、感情をぶるぶる震わせていきたい。




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