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今でも夢に見るのは舞台の仕事

何かに間に合わない夢を見る、ということがたまにある。

あるプロレスラーは、「入場テーマが鳴ってお客さんが待っているのに、リングシューズの紐が結べないで焦る」夢をベテランになっても見ると言っていた。

わたしの場合は、劇団の音響スタッフをしている頃の夢を見る。

もう開場するのに、音響だけ仕込みが全然終わっていない。
もちろん仕込みが終わっていないのだから、サウンドテストもしていない。
でも、お客さんは入ってくる。

ああ、もう間に合わない!

そういう夢を何度か見た。

昨夜の夢はちょっと違った。
最後の場はたいてい効果音やBGMも無いので、ラストシーン近くまで音響の仕事が無い。
それで、その時間に楽屋に休憩しに行っていた。
ラストシーンからはオーラスの音楽をかけて、最後のアナウンスのマイクを操作して、送り出しの音楽をかけて、ロビーで送り出しの様子を会報やホームページ用に撮影したりして、急いで黒子から作業着に着替えて、お客さんが引けてからバラシに入る。
そこからトラックへの積み込み完了まで休憩無く時間に追われるので、その前にちょっと一息したりトイレに行ったり、楽屋の俳優の様子を見に行ったりするのだ。

だけど、会場によっては楽屋と客席の導線がえらく悪い時がある。
その夢の中では、まったく客席の中の音響卓まで戻れるルートがわからず、ついには外に出てしまう。
もうすぐ最後の音楽をかけるシーンが来てしまう!
焦って走り回るけれど、戻る道がわからない。
無音のままで俳優はラストを演じて、無音の中で幕が下りるのだろうか。
最後に主題歌の合唱があるのだが、それは舞台監督が急きょカットするだろうか。送り出しのアナウンスも無しでお客さんは終わった気持ちになれるだろうか?
ああ、なんでこんな会場の時に休憩に来てしまったのだろう。
後悔しながら、もうとっくに劇が終わったであろう会場内に戻ろうとする。

そんな夢を見た。

疲れた。

社会に出てからの四半世紀以上、様々な仕事をしてきたけれど、今でも夢に見るのは舞台の仕事。

妊娠出産子育てを機にすっかり遠ざかってしまったけれど。

一番本気だったし、今でも未練があるのだと思う。

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