【差別化しないと死んじゃう病】顧客のペインを考えろとは言うけれど、机上では解像度が低いので最大公約数でやりたい話

延長戦第2回。タイトルを長くしてみるテスト。プロダクトづくりが不慣れな人に多いのですが、企画会議をやっていると、とにかく業界的に目新しいものや既存サービスにない差別化要因を作ることばかりに執着してしまうことがあります。

気持ちはわかる、わかるよ。でもきみの経験値では、いやほとんどの人は、残念ながら解像度の高いペインはそうそう見えてこないんだ。特に机上の企画会議ではね。ごめんね。とういう気持ちで企画会議で置物になることが多いです。

「起業家ではなく雇われのPdM(or候補生)が」「社内の企画会議を通過させて事業に挑む」という点においては、企画書だけでまず社内を通さないといけないので、これは仕方ありません。ですがそうだったとしても、解像度の高いユーザニーズというのは往々にしてサービスを使ってもらう中で見つかることも多いのです。

ちなみにドクセルを提供する中で、サービス開始前にわからなかった解像度の高いペインというかユースケースはこういうものです。

  • 加盟店向けにメール一括配信システムがあるが、ファイル添付ができないので困っていた。ドクセル(Groupfile)だとURL化できるので助かる。

    • ぼく「Google Drive使おうよ」

    • 全社一括ではいってるストレージは、社外向けに利用を制限されている。それ以外のツールも高機能かつ高いので部署導入しにくい。

  • 採用資料をドクセルで公開できると助かる。会社についていろんなことを見やすく説明できる。

    • ぼく「採用Webサイトとか作らないんですか?わざわざ資料にしなくても・・・」※ひどい発言

    • 人事部門だけで会社のWebサイトを更新するのは情シスに相談したり大変。出入りの広告代理店にサイト作成見積もってもらったけど数百万かかるって。しかも更新したいときに自分たちでできない。パワポ+ドクセル(Groupfile)なら、自分たちで作成・更新できる

  • ちなみに、当初想定していたユーザ層であるエンジニアの皆さんにも山ほどご利用いただいております。今回の記事は、そういう価値提供の幅の広さに思いをはせてほしいという趣旨になります。

どうすれば解像度たかくペインが見えてくるのか

こういった解像度が、リリース前の企画会議において出てくることは稀です。特に新規事業の現場においては「なんか新しいことしなければ」という空気ができやすいため、「新しいこと=自分がよくわからないこと」を無理やりひねりだしてしまうことが多いのです。

本当は、自分が今までやってきたことをおさらいしながら、自分がそこらの人より解像度高く物事を知っているなかで見えてきたペインを事業化すればいいのですが「ブロックチェーンでなんか考えて」「OpenAIでなんか考えて」みたいなお題が出たらもう大変ですね。

だから、アイデアができたらまずは顧客にヒアリングしないとだめなのです。しかしヒアリングにも課題があります。聞く方も聞かれる方もそんなすぐに強いペインなんて思い浮かばないわけです。ただそれでも、何人かと話していくうえで、浅くても目次というか、地図みたいなものが見えてきますよね。僕は多くの人にとってこの程度のスタートでいいと思っています。

コストを抑えて最大公約数に提供する

たとえばドクセルだとエンジニアの発表資料からスタートし、大学、医療系、会社案内、営業資料、パンフレット、幼稚園のお知らせまで広がっていきます。作成ソフトもパワポ、Tex、Figma、Google Slideといろいろあるわけです。

そこで、よくある間違いが、どこかに特化しようというものです。アイデアが浅いのにいきなり絞ろうとしてもいい結果になりません。ではどうするのか。特化のためではなくコストを抑えるために絞るのです。まだ解像度が浅い状態なので、顧客から学ばないといけません。しかしここから先はコストがかかってきます。できるだけコスパよく学びを得るために(主に機能を)絞るのです。

ドクセルには最初、リンクを知っている人だけに公開機能はありませんでしたが、公開当初に要望をもらったので付けました。しかし、この機能は

  • 公開する予定の人が社内で確認するためにも使える

  • OEM的に使いたい人が使える

  • 営業資料など一般公開しないもののために使える

といういろんな用途のためにフィットしました。一番上の要望だけをかなえるなら、公開ページに「プレビュー」機能をつければよかったかもしれません。でもそうすると2番目3番目の要望は満たせません。

価値とは受け手の数だけある

こういうプロダクト企画が好きそうな人はジョブ理論を知ってる前提で書きますが、ミルクシェークを雇用するシーンひとつとっても朝昼晩で異なるわけです。

しかしながら、通勤前に腹ごしらえをしたい顧客のジョブが、本当に企画段階で解像度高く意識できるでしょうか。あるいはそれができていたとして、昼と夜はどうするつもりだったでしょうか。同じミルクシェークの材料と製造装置、店舗、人を用いて、できるだけ多くのユースケースに低コストで応えながら「これぞ」というジョブを発見したほうがよいのではないでしょうか。

企画会議でよく出てくる「どういう価値を提供するか」みたいな言い方をちょっと変えてみて「どういう価値を感じてもらえるか」という視点に立つと「そんなん客ごとにちゃうやん」ということにすぐ気づけると思います。

なので、プロダクトが顧客との間で成立する「価値」というのは、ポートフォリオ的になっていくものだと考えて、そのなかで最大公約数に価値を感じてもらえる機能を入れ込んでいくのがいいと思います。

細かいところだとUI設計思想にも表れていて、ドクセルのプレーヤには目次ボタンに「目次」とラベルがついています。これはリテラシー低い人でも高い人でも最大公約数的に拾えることを意図してあえて日本語ラベルを付けています。リテラシー高い人からするとちょっとダサいんだけどね。

じゃあ差別化はしなくていいのか?

しないとだめなんじゃないですかね・・・。ただ順序があると思います。リクルートの時とかは「まず同質化、そして差別化」などと言っていましたが、大体似たような製品サービスは世の中にあるので、まず基本となる部分はライバルと同じものを提供できるように頑張る。ここは市場にお手本があるので後追いの方が楽なはずですよね。

そして、スモールビジネスの場合、そこで完了です。業界10位くらいでも黒字になれるようにのんびりコストかけず改善やっていきましょう。

しかし、そんなんじゃ会社の企画会議とおらないよぉ・・という場合もあろうかとおもいます、そういう時は、客寄せパンダ的な目玉機能を一つだけ作りましょう。価値には「使い始めたくなる価値」と「使い続けたくなる価値」があります。プレスリリース映えする機能を一つだけ、ちょっと使ってみようかな、と思えるちいさな目玉機能を一つだけ搭載して、あとは低コストに同質化することを考えるとよいとおもいます。

そうして、ユーザが使ってくれたら、どんなシーンで使っているのか、今まではどうしていたのか。このサービスが応用できそうなところはあるか、そんなことよりも別で困ってることはないかなど、どんどん解像度を高めて、使い続ける価値の方に投資していった方が、競合優位性を結局は築けると思います。

まとめ

  • 机上で本物のペインなんて見つからないので小さく始めよう

  • パーツに分けるとすでに似たようなものは市場にあるので、同質化から始めよう。

  • どうしても差別化したい場合は、目玉機能を一つだけ。それよりはリリース後の深い学びを「使い続ける価値」に投資しよう

おまけ:個人開発者、あるいは1~2人のごく少人数でやってる場合は、モチベーションの管理が最優先事項なので、やってて楽しいか。をちゃんと大事にしましょう。深いペインがあっても、興味がないことをやるのは続かないですからね(やり続けることで興味がある分野もあると思いますが)

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