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「私の経歴書 6」マレーシアでの宿題と課長試験という重石を携え、失望の地シンガポールへ

ペナンで最初で最後の夏休みは、ランカウイ島に行ってみた。マラッカ海峡とインド洋がつながる所に位置する島。ペナンから飛行機で30分くらいだ。海の近くではなくて、島北部のジャングルの中のリゾートでゆっくり過ごした。いい骨休めになった。

夏休みが終わると、シンガポールへの引っ越しと課長試験の準備を始めなければならなかった。ペナンに1軒あった日本の書籍を扱うお店で筆記試験用の参考書を買った。シンガポールに異動して直ぐ筆記試験になる予定だ。

日本からもやたら参考書とか資料が送られてくるようになった。筆記試験の小論文の練習といって課題も送られてきた。小論文を書いては日本に送るようになった。普段あまり触れることのないテーマに新鮮を感じ、興味をもって読み考察したりする。いい勉強になる。書くためには必然思考が伴う。こうした長いトレーニングの期間もどうやら課長試験のプロセスらしい。

後で聞いた話だが、国内だと課長試験に集中して、ある程度、業務が免除されるという。こっちではなかなかそうはいかない。だいたい直属の上司もいないし、課長試験のことで親身に援助してくれる人もいなかった。
そうこうしているうちに時間がどんどん過ぎていく。

シンガポールへの異動の準備も加速させる必要があった。何でも、自分でやらなければならなかった。家や諸々の解約、車の売却、海外引越の手配。費用精算だけは会社が代行してくれた。駐在員事務所で、総務機能がないのだから仕方がないと諦めるしかなかった。

異動するシンガポールの会社はアジア地域の統括会社、アジアでの本社みたいな会社で、総務人事、財務、広報、購買などの機能があり、そこにいくつかの事業部が進出していた。そこの購買部門に間借りして、彼らと協力して、この先仕事を進めることになる。

シンガポールには総務人事があったので、異動準備はあまり苦にならなかった。総務人事が取り仕切ってくれるので、それに合わせて準備すればよかった。住む家は予算内であれば自分で選択でき、契約は会社。エージェント手配もすべて会社がやってくれるので、住みたいエリアを知らせ内見して、決めればあとは会社が進めてくれる。マレーシアとは大違いであった。

シンガポールでの準備が整い異動日程も決まった。マレーシア赴任時とは違って今度はバタバタしなくて済みそうだ。ただ、課長試験という重石が圧し掛かってはいるが。

マレーシアに着任し、その後の事業再編で辞令が遅れることになって、4か月くらい続けたホテル生活。ペナンに家を借りて住み始めてみると、異動やら昇進試験の話が持ち上がり、落ち着くことなく過ごした5か月間。とりあえず島内で行けそうな観光スポットには行ってみた。マレーシア暮らしの余韻に浸ることもなく、また、新天地に向かうことになるとは。

着任当初は激しくぶつかりあった現地スタッフともしばしの別れ。勤務地は変わっても、これからもつき合っていく仲間たちだ。少しばかり頼られるようになっていただけに感情の高ぶりもある。

失望の地、シンガポール。かつて、そこで仕事を奪われた。4年ぶり戻り、また、いちから出直すことになる。
どんな波乱が待っているのだろうか。
課長試験に、新たな業務の構築。会社生活はいつも波乱ばかりで、そのたびに感情を大きく揺さぶられてきた。

短いマレーシア生活ではあったが、ありがたいことに、シンガポールに移動する日、取引先や関係者が見送ってくれた。少しばかり照れ臭かった。
(つづく)

(前回までのお話はこちらから ↓↓↓ )

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