『電音部』が発表したDAO型IPに関する個人的なメモ

注意

話を分かりやすくするために具体的な企業やIPの名前を出していますが、あくまで例えとして出しているので勘違いしないようにお願いします。

前口上

3/25に開催された電音部カンファレンスで「『電音部』は2023年から世界初のDAO型IPになる」と発表がありました。

この記事はDAO型IPについて私なりの考えをまとめたものです。だから実際とは異なる可能性がありますが、あくまでもそういうものとして捉えていただければと思います。

DAO型IPとは

まず「DAO」とは何か。DAOとは日本語に訳すと「分散型自立組織」とのことで、Web3.0の本で目にしたことがあるのですが公式の説明は以下の通りです。

電音部プロジェクトが推進する、権利と収益を分配するDAO型の新たなIPの在り方です。
製作委員会やライセンスアウトとは異なり、
様々なパートナー企業が独自のエリアを創出し、展開します。
電音部プロジェクトからは独立したプロデュース及び運用を行うことで、
世界を共に拡張していく制度です。

https://denonbu.jp/news/3280

ここで肝となるのは「電音部プロジェクトからは独立したプロデュース及び運用を行うことで、世界を共に拡張していく制度」というところでしょう。つまり語義通りに解釈すれば「電音部プロジェクトは運営していないが、電音部のコンテンツである」となります。

これについてTwitterで「現状の『アイドルマスター』5ブランドがそれぞれに展開していくようなものか」というつぶやきを見ましたが、それとは次元の違う話となると思います。その場合はバンダイナムコエンターテインメントが運営にかかわっているため、アイマスプロジェクトからは独立していないからです。

『アイドルマスター』で例えるなら『アイドルマスターシンデレラガールズ』からバンダイナムコエンターテインメントが手を引いて完全にサイゲームスの運営になるとか、ブシロードが運営しバンナムの手が全くかかっていない「246プロダクション」が『アイドルマスター』に新しく加わるという事態の方が近いと思います。

また本部の指示が大きく反映されるコンビニのフランチャイズで例えるのも間違いでしょう。むしろのれん分けの方が近いのではないでしょうか。

DAO型IPのメリットとは

1.幅広い展開が容易にできる

IPを展開していく中で新しいキャラクター、新しいコンテンツは不可欠です。しかし会社の規模やマンパワーから思うような展開ができないこともありますし、新しいキャラクターを出した結果既存のキャラクターの扱いが悪くなったと感じられるとゴリ押しという批判が出てきます。

しかし自社以外の企業が運営をするのであれば自分たちでやらずとも様々な展開が可能となりますし、新キャラや新エリアは外部企業に運営させるという手段も使えるわけです。で、物語の根幹となるエリアについてはバンナムが運営すればいいわけで。

新しい展開としてゲーム化について考えてみるとバンナムがやらなくても、シンオオクボエリアを運営するHIKEは子会社に『うたわれるもの』シリーズや『To Heart』でお馴染みのアクアプラスがあるため、アクアプラスから『電音部』のビジュアルノベルを出すことも出来るわけです。

2.IPの幅が広がる

1ともつながる部分ではありますが、運営企業が自社の得意分野に注力することでIPの幅を広げられる可能性があります。芸能が得意な会社はそこに注力するし、ゲームが作れる会社はそこに注力すれば、バンナムが自前でやらなくてもいいわけです。

自前でやろうとすると規模が大きくなり小回りが効かなくなりますが、他社に運営を任せることで小回りが効くようにしつつIPの幅を広げられるのがメリットかと思います。

DAO型IPのデメリットとは

1.分かりにくい

「IPはバンナムのものだが、運営はバンナムとは関係ない会社がやっているところもあるし、バンナムが運営しているところもある」というのはIPを追いかけている人ならともかく、そうでない人からするとかなり分かりにくいと思います。

「いやIPの運営とコンテンツの運営が別というのは普通ではないか。例えば『バンドリ』だってIPはブシロードが運営しているけど、ガルパはCraft Eggの運営でしょ」と言われるかもしれません。確かにその通りですがCraft Eggがブシロードに無断でゲームに新キャラや新バンドを出すなんてことはしないわけです。

でも『電音部』の場合DAO型とわざわざ言っているからそういう事態もあり得るわけです。だいたい新しくできるシンサイバシエリア、ネオトーキョーエリア・ネオナカノエリアのオーディションサイトはバンナムではないわけで。

そうなると、例えばこういう会話が想定されます。

「シンサイバシエリア、サブスクで聞いてすごく良かったのにバンナムフェスに出ないのか」
「シンサイバシエリアはディアステージが運営しているからね」
「え、『電音部』ってバンナムじゃなくなったの?」
「いやシンサイバシエリアはディアステージが運営しているけど、『電音部』はバンナムだよ」
「じゃあ何でシンサイバシエリアは出ないんだよ」
「だからディアステージが運営しているからだよ。それにアキバやハラジュク、アザブは出るだろ」
「なんでバンナムじゃない会社が運営しているんだよ」
「そういうIPだからだよ」
「お前は何を言っているんだ」

またバンナムでない会社が運営しているエリアの展開が終了しても、他のエリアは活動しているという事態も想定されます。しかし外から見れば運営企業がバンナムだろうと他の企業だろうと『電音部』は『電音部』なわけです。そうするとネガティブなイメージが付いてしまう可能性があるのですが、その辺りをどのように考えているのかという疑問はあります。オタクはいちいち調べないよ。

2.IPのイメージがぶれる

『電音部』は近未来を舞台に電子音楽(DJカルチャー)が主流となった世界観なわけですが、他の企業が運営しているエリアでそれがどこまで反映されるかは分かりません。それゆえ出てきたものによっては「こんなのは『電音部』じゃない」という意見が出ることも想定されます。また外から見たときに「何が売りか分からないIP」になっている可能性もあるわけです。

DAO型IPは普及するのか

正直なところ普及しないと思っています。これが成功すれば話は別かもしれませんが、結局のところIPにしろアイドルにしろ、それを運営している企業や人にファンはついていっているのが大半だと思うんですね。「自分が好きなのは『アイドルマスター』だから人や企業は関係ない」という人でも「明日から運営がブシロードの『アイドルマスター』が出ます」となったらどうするか考えると思うんですよ。

結局のところオタクが求めているのは単一の企業や人が運営しているという安心感であって(スピンオフだって基本的に監修が入っているでしょう)、複数の企業が公式であるという展開には馴染めないんじゃないかと思うのです。

まとめ

個人的には面白ければまぁ何でもという感じだし、個人的に飽きが来る3年目にとんでもないことを言い出したので楽しみではあります。

グダグダと書きましたが『電音部』としては「みんなまとめてアイドルマスター」ではなく「みんなバラバラで電音部」をやりたいのかなぁと思います。以下の子川Pの発言もそんな感じだし。

エリアが増えていくと、すべてのコンテンツを追い切るのも大変になると思うんですよ。なので、自分の好きな部分だけを見ていただいてもかまいません。もちろん全部見ていただいたら最高なんですけど(笑)。軽い気持ちで楽しんでもらって大丈夫、ということは伝えたいですね。無理に全部を好きになる必要はなく、好きな部分だけを好きでいてくれれば、と思います。

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ただNFTとかDAOといったWeb3.0の用語を使うのは止めた方がいいと思うんですよね。それで真意が伝わっているかも不明ですし、そういう用語はすぐに風化するんじゃないかと思うのですが。

というわけで子川Pと石田Dはこれについて早くインタビューを受けてください。

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