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うんちとはアートである!

書籍『うんちはすごい』の担当編集の高部です。ここでは本には書けなかった「うんちこぼれ話」をたくさんお伝えしたいと思っています。4回にわたってお送りしてきたインタビューもいよいよ最終回。今回はなぜ著者の加藤さんがこのような仕事(プロフィールをご参照ください)に就いたのかのお話から。

ちょっとダメな学生だった

高部:加藤さんはなぜこの仕事に就こうと思われたんですか?

加藤:少し話が長くなるんですがいいですか?

高部:ええ、もちろんです。

加藤:子どもの頃から絵を描くことがすきだったんです。それで、デザイン方面に興味を持ち、大学もそういう方向に進もうと思っていたんです。

高部:ほう。

加藤:美術大学に入るためにはデッサンが必要ということを知ったぐらいのとき。美大を目指す友人がデッサンをしているのをたまたま見ることがあったんです。私だったら輪郭から描きますが、友人は影から描き始め、そしてそのまま影を描ききることで見事に対象を浮かび上がらせたんです。それで私は悟りました。「こんな人たちに勝てるわけない」と(笑)。

高部:学校に入る前から、画力の差を見せつけられたわけですね。

加藤:そうです、それまではまあまあ上手く描けると勘違いしていたので、ガックリ落ち込みました。でもデザインへの憧れは捨てられず、どうしたらいいかと考えた結果、「建築」にしようと決めたんです。

高部:いや建築も結構難しいと思うんですけど……。

加藤:ですよね。建築学科もかなり難しいです。でも、建築こそデザインと工学の融合が生み出すアートだ!と思い、画力が足りない部分を勉強で補うことで可能性が高まると思ったのです。
美大はやっぱり不合格でしたが、運よく工業大学に入ることができました。そこで建築を学ぶことになるんですが、学生の時には教授に「君の作品は建築じゃない」って言われてました。

高部:どういう意味ですか?

加藤:当時はその意味がわからなかったんですが、2階が無いのに階段を作ったり、河川敷に巨大な帯状の銭湯を作ったり……建築というよりもモニュメントみたいなものばっかり作っていたので、そういうことを言われたんだと、今はわかります。

高部:かなりユニークな学生だったんですね。

加藤:いや、多分ちょっとダメな学生だったんです。

高部:自分で言っちゃうんですね。

加藤:はい。「暮らす」とか「生活する」という大切なことがすっぽり抜け落ちていました。それにも気づかないで大学を卒業して建築設計事務所に就職したんです。当時は建築家になりたかったですから。
でも、実際に働いてみたら、めちゃくちゃ辛かったんです。何が辛いかというと、あんなに好きだと思っていた設計がどうしても楽しいと感じられなくて。それで、わずか1年も経たないうちに転職を決意しました。決意というとそれっぽいですが、今思えば設計から逃げ出したんだと思います。

高部:うわ、すごい転換ですね。

加藤:はい、ようやく気づいたんです。自分がやり続けてきたのは建築じゃなくて、モニュメントだったと(笑)

高部:とうとう気づいてしまったわけですね。

トイレはその人の生活を象徴するもの

加藤:気づいてしまってからは、かなり悶々と悩みました。本当にやりたいことは何だったんだろうと。
そもそも設計事務所に入った理由は、1つひとつの建築を丁寧につくり続ければすてきな街ができると思っていたからです。でも、現実はそうはいきませんよね。それで、建築に代わって街や暮らしを象徴するものってなんだろうと、もっと、もっと突き詰めて考えていたら、トイレが舞い降りてきたんです!

高部:いや、それがなんでトイレにつながるのか全然わかりません!

加藤:ちょっと飛躍しちゃってるんですけど。その当時、マンションや戸建住宅の設計図を見ながら、何が象徴なんだろう、どこが大切な空間なのかと、何度も考えていたんです。そうすると、それはリビングでもダイニングでもなく、トイレがすごいシンボリックで、生活感が凝縮している場所だと、なぜか感じてしまったんです!

高部:なぜか感じてしまったんですね。

加藤:もうこれは感覚。前回のインタビューで言うところの「Feel!」ですよね。説明をしろと言われても無理なんです。

高部:「考える」前に「感じて」しまったわけですね。

加藤:いや今回は考えたうえで感じました...。おそらく根底にあったのは、何かシンボリックなものを作りたい、大切な部分に関わりたいという思いだったんだと思います。自分では建築だと思い込んでいたんですけど、そうではなかった。しかもこのことに最近気づいたんです。

高部:え! 最近ですか。トイレをテーマにしたお仕事をされてどれぐらいになるんでしたっけ?

加藤:え〜と、約20年です。

高部:20年やってきて、ようやく気づいたという……。

加藤:あっ、気づいたというのは、自分の関心は何かを象徴するようなものをつくることにあるんだ、ということですよ。デザインやアートって象徴的な何かを掴み取ろうとする作業でもあると思うんです。その手段がずっと建築だと思い込んでいたんですけど、なかなかそっちには行けなくて。
最終的には社会を象徴する、その人の生活を象徴するものがトイレだと感じてしまい、そこから社会、街、人の暮らしを見るみたいなことをやりたいと思ったんですね。

高部:なかなか壮大な話ですね。

加藤:だからうんちも象徴的な存在なんですよ! その人の全てを物語るアート。いろんなことがあった結果としてアウトプットされるのがうんちなわけですから。貴重な作品なんです。

高部:うわ、また名言が。うんちとはアートである!

加藤:マルセル・デュシャンの小便器をひっくり返したみたいな作品**がありますけど、あれとは違うアプローチですが、うんちはかなりアートだと思います。

マルセル・デュシャンの作品「泉」
**
高部:じゃあ僕たちは毎日アートを生み出しているわけですね。

加藤:そうです。しかも1度として同じものは生まれない。そして死んだらアート活動は終了するわけです。もう、うんちが出てこないですから。

高部:そう考えると、なんか面白いですね。アートと言っても他人のうんちを見るわけにはいかないので、個人で楽しむアートという感じですね。

加藤:確かに小さなお子さんでもいれば、オムツを替えるときに見たりするでしょうし、あとはペットを飼っていれば見る機会もあるかもしれませんが。

高部:でもなんか興味はある。うんちがアートだと言ったらみんなそれぞれ違うというか、見てみたい気も……。

加藤:いや、これ以上の深堀りはやめましょう(笑)

高部:そうですね(笑)。

うんちでGOを作りたい

加藤:今の話で思い出したんですが、ひとつやりたいことがあるんですが、それを言ってもいいですか。

高部:どうぞどうぞ。

加藤:前にゲーム会社の方と話していて盛り上がって、まだ実現できていないことがあります。自分がしたうんちにスマホのカメラをかざすと、うんちの色や形が評価されて、画面にモンスターのようなキャラが表示されるというのをやりたいんです。

高部:ポケモンGOみたいな感じでしょうか。いや、うんちでGOか。

加藤:そうですそうです。そしたらうんちも見せ合えると思うんです。本物のうんちはしんどいですけど。
それで、いいうんちだとキャラのHP2000とか数値に換算されて、高部さんと私のキャラが戦ったり、ランキングが分かったりする。あなたは日本で200位とか、昨日のうんちは日本で3位だったとか。

高部:1位の人にぜひ会ってみたいですね。どんなもん食べてるのかとか聞いてみたい。

加藤:私もぜひ聞いてみたいです。国によって食生活も違うでしょうから、国際ランキングも気になります。

高部:確かに繊維質の食事をしている国とか強そうですね。

うんちのすごいについて話して欲しい

高部:さて、4回にわたってお送りしてきた特別インタビューもいよいよ今回がラストということで、最後にこれを読んでくださっている読者の皆様に何かメッセージをお願いいたします。

加藤:はい。noteでも書籍でもよいので「うんちはすごい」を読んだ人にとって一つでも二つでも「お、すごい!」というのを感じてもらえたら嬉しいです。そしてその「すごい」をぜひ勇気を出して誰かに話してみてほしいです。そのときに何が起きたかをぜひ知りたいです。
ドン引きされたのか、意外と淡々としてなんともないのか、あるいはいい反応だったのか、そこが知りたい。それをこの記事のコメント欄に投稿してください!

高部:いや〜それ、コメントこないと思いますよ(笑)

加藤:やっぱり、そうですよね、、、でも、あきらめませんよ。一人ひとりのその勇気がうんち文化をいい方向に変えていくと信じていますから。なので、ぜひよろしくお願いします!


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