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女で生まれ男として生きる孫が田舎のおじいちゃんを見送った話


ひろです。

今回ちょっと重いテーマかもしれませんが、自分なりに真摯に向き合ったつもりなので、よかったら読んでみてください。

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先日、本田健さんの著書「30代にしておきたい17のこと」を読みました。その中に、30代からは命にまつわるドラマ、すなわち新たな命の誕生や、亡くなる人を見届ける、といった事が多くなっていくとあり、そうなんだろうなあと想像はしていましたが、そんな矢先に、30代初っ端から祖父が亡くなるという出来事がありました。

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祖父は東海地方某県の漁村地域という、まさに田舎中の田舎に住んでいるとあり、ゴリッゴリのムラ社会という人間関係の中で生活していました。お正月になれば、祖父母や叔父叔母のみならず、縁戚含め大勢の人が集まりどんちゃん騒ぎ…みたいな感じで、良くも悪くも、人と人との結びつきが強く、それで助けられる事もある一方で、人間関係が心身の重いストレスとなる事もあるような、要は都会以上に周囲との関係が生活の大きなウエイトを占める環境、です。

かたや僕はトランスジェンダーです。田舎の人々からすれば、異物オブ異物です。◯◯さん家の孫娘の××ちゃん(僕)が、大人になったら男の格好をしているし声もなんだかおかしい。という事実を田舎社会の人々が目にした時、果たしてどれだけの人が違和感なく受け取る事ができるか?祖父母の生活が脅かされることはないか?

僕が彼らの目の前に現れることで、様々な問題が起こりうることは、想像に難くありませんでした。

祖父母には会いたいと思っていたものの、祖母や叔父叔母は僕の事情も理解していたものの、そんな理由ゆえとにかく田舎には足を運びたくなくて、トランジションを始めてからはおそらく一度も会えないまま、この時を迎えてしまいました。世の中のトランスジェンダーの人々なら結構ありがちな悩みかと思います。

親戚一同が先に集まっていた葬祭場に遅ればせながら到着し、無言の面会を果たし、落ち着いてしばらくした後、驚いた事に実に沢山の方が僕に駆け寄ってきてくれました。祖父母のみならず親戚にも長年会っていませんでした。祖母の兄妹や、叔父叔母、いろんな人が僕に会いたかった、心配していたと。

僕はトランスジェンダーです。一般的な人々からすればおそらく非常に特異な存在、のはずです。

僕は、僕に対して排他的な社会を勝手に想像して長年生きていました。田舎だからとか、年配だからとか、僕が勝手に、自分の頭の中だけでそんな世界を造って、近しい人と向き合うことから逃げていました。

間違いを恥じました。愚かでした。

現実の人は、僕の周りの何人もの人たちは、僕の顔が見れて声が聞けるだけで良くて、また、この病気に対する専門性には乏しいながら、彼ら彼女ら自身の言葉で共感を示し、理解する、寄り添ってくれると表現してくれました。

そりゃ、ところどころ細かいところでは気になる発言はありましたよ。大丈夫や!口が裂けても(僕の病気のこと)他の人には言わへんからな!!!とか(笑)(笑)

でもいいじゃないですか、そんなん。それ以上の思いやりが表情や言葉の調子で伝わったから、僕はもう十分に心を震わせてもらったんです。そんな所まで追及するメリットなんかないし、相手が寄り添ってくれたように、こちらも出来る限りは普通の人の立場を理解し寄り添う必要があるんじゃないかと思うんです。

10代の頃から世の中を、人を、殆ど信頼せずに生きてきました。己だけを信じてここまで来ました。それは、己だけでここまでできるという自信と、自分に対する確固たる絆へ繋がりましたが、30代のいま、そう生きてきた事が100%正しかったわけではなかったのだと、感じざるを得ません。

どんな自分でも、生きているうちに祖父と会わなければいけなかったんだと思いました。今となっては言い訳のようになってしまいますが、ここ一二年で、その方向に気持ちは傾きかけてはいたのです。しかしながら、そんな最中でコロナ流行があり、また流行著しい都市部に暮らしていることもあり、実現ができませんでした。後悔の念でいっぱいです。


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祖父の死と、様々な人との再会をきっかけに、自分への不信感とまではいきませんが、10代の頃から自分とガチガチに築いてきた絆を、ここで一旦解きほぐす必要があると思いました。

30代以降は、より多様な価値観で物事を捉え、正しさが己の外側にある可能性も蔑ろにせず考えるようにしなければいけないと痛感しました。また、いま生きている人、僕と僕の周りの家族を思ってくれる人と誠実に向き合い、尽くしていこうと思います。

もちろん、僕が周りの人に恵まれていたというのは理解しています。残念ながら、世の中には例外も多くあると思います。

僕以外のトランスジェンダー当事者によっては、出来る限り手を尽くしたけど、受け入れてもらえない、最後の最後まで身内に理解されなかった、という事もあるでしょう。しかし、もし自分から向き合う事をせず、家族親戚と断絶しているなら、一度だけ、向き合ってみてはいかがでしょうか。永遠の別れの前に。



























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