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2019年映画BEST10

2019年は放送や再上映を除いた劇場公開作を52本見ているが、そこから選んだ今年のベスト10を記録。BEST1が2作あるがいずれも甲乙つけられず同着1位とした。

1「パラサイト 半地下の家族」ポン・ジュノ監督・韓
1「バーニング 劇場版」イ・チャンドン監督・韓
3「蜜蜂と遠雷」石川慶監督・日
4「幸福路のチー」ソン・シンイン監督・台
5「幸福なラザロ」アリーチェ・ロルヴァケル監督・伊
6「工作 黒金星と呼ばれた男」ユン・ジョンビン監督・韓
7「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」クエンティン・タランティーノ監督・米
8「宮本から君へ」真利子哲也監督・日
9「COLD WAR あの歌、二つの心」パヴェウ・パブリコフスキ監督・波
10「愛がなんだ」今泉力哉監督・日
チャンピオン「象は静かに座っている」フー・ボー監督・中


1「パラサイト 半地下の家族」ポン・ジュノ監督・韓 ('20 5/4現在配信なし

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1「バーニング 劇場版」イ・チャンドン監督・韓 (配信あり
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同着1位はいずれも韓国の激しい格差社会を描いた大傑作。ポン・ジュノは黒いコメディ・スリラーとして、イ・チャンドンは青春ミステリーとして、と切り口こそ異なるがいずれもエンタテインメントとしても面白くかつ芸術性は頂きを極めており、まさに現代の映画のマスターピースと呼んで差し支えないもの。それにしても「国家が破産する日」のような経済史映画だけではなく「EXIT」といったアホな設定のエンタメでさえ社会格差の問題が映画の設定に密接に絡んでくる韓国の現状はかなり深刻なのだろうと想像させられる。

3「蜜蜂と遠雷」石川慶監督・日(配信あり
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3「蜜蜂と遠雷」についてはクラシック映画音楽ジャンルでの世界最高の作品が日本から出たということを寿ぎたい。松岡茉優はじめとする役者陣の抜群の演技、音楽を実写動画で演出することの粋を極めた映像いずれも最高、そしてプロコフィエフ最高。

4「幸福路のチー」ソン・シンイン監督・台('20 5/4現在配信なし)

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4「幸福路のチー」は劇場アニメーション不毛の地台湾に急に現れた大傑作…といわれるが不毛の地って本当なのか?と疑いを持ってしまうほどあまりにも豊かなイマジネーションとノスタルジーと台湾現代史を強靭に結びつけた「悲情城市」にも匹敵する台湾映画の傑作と個人的には思う。

5「幸福なラザロ」アリーチェ・ロルヴァケル監督・伊(配信あり)Amazon Prime Videoでの配信はこちら

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5「幸福なラザロ」はもう見てもらう他ないが、寓意的物語なのか現実を描いているのかなんだかよく分からないライン上を浮いたり沈んだりしているうちにこれはすごい人間の業を描いてるんではないかというあたりが徐々に描き出されてくる、ファンタジーともミステリーとも教訓物語ともなんともジャンル分け不能だがとにかく面白い、面白さの説明困難度で今年No1。


6「工作 黒金星と呼ばれた男」ユン・ジョンビン監督・韓(配信ありAmazon Prime Videoでの配信はこちら

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6「工作 黒金星と呼ばれた男」はスパイ映画として「裏切りのサーカス」以来近年最高のものではないかと思う。

7「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」クエンティン・タランティーノ監督・米(配信あり
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7「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」はとにかく映画を攻撃するものへのタランティーノのストレートな怒りが最高であり今年最も映画で爆笑させてもらったぜGJなシーンは本作のあの器具を持ってくるシーンであった。

8「宮本から君へ」真利子哲也監督・日(配信あり)
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8「宮本から君へ」はもう蒼井優には米アカデミー賞主演女優賞あげてくださいマジで…素晴らしかった。

9「COLD WAR あの歌、二つの心」パヴェウ・パブリコフスキ監督・波(配信あり)
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9「COLD WAR あの歌、二つの心」は冒頭のバルトークとかがやってたであろう民俗音楽採集シーンからすっかり画作りのあまりの美しさに完全にヤラれていた感があるがストーリーともあいまって本年最強の耽美映画と言えるのでは。身勝手な男女がくっついたり離れたりしながら周りに迷惑かけるだけの映画と感じた人も多かったと思うがそれも全く道理であり「耽美主義、本人以外にゃ単なる身勝手」なのだと思う。

10「愛がなんだ」今泉力哉監督・日(配信あり)
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10「愛がなんだ」はもちろん本年最高の恋愛映画であるが、9の耽美主義的な恋愛とは異なる「恋愛について考えさせられる映画」と言える。成田凌は「スマホを落としただけなのに」の印象しかなく何がいいんだかと思っていたが本作でああなるほどねと思った。

10本中3本は韓国映画。アメリカ映画は一本しか入らなかったのだがマーベルを見てないせいだけではあるまいと思う。いま韓国映画を見ないのは松阪牛を食わずに和牛が旨いと言っているのと同じ、と昨夜とある集まりで言ったが、まさに映画作法といい同時代との切り結び方といい、時代と心情を映す器としての映画ということを考えたときに、その最良の果実の多くは韓国映画にあると思う。

次点「家族を想うとき」ケン・ローチ監督・英
次点「帰れない二人」ジャ・ジャンクー監督・中

(追記)
…というのが2019年末の時点で投稿した2019年ベストだったのだが、その後アップリンクの「見逃した映画特集」でものすごい傑作を見てしまったのでBEST1を超える「チャンピオン枠」として1本挙げさせてほしい。

チャンピオン「象は静かに座っている」フー・ボー監督・中('20 05/04現在配信なし)

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本作のすごさはなかなか千字二千字でも書き尽くせない。以下長いが末尾でもあるので、初見時の投稿をそのまま貼っておく。サマライズなくてすみません。​

アップリンク吉祥寺の見逃していた映画特集で胡波監督の中国映画「象は静かに座っている」見たんだがものすごい芸術的に完成されまくった大傑作で度肝ミューティレーション状態である。知人のjunkoroちゃんが2019年ベスト1に挙げてるのを見るまでノーチェックだった不明を恥じる。これはベスト1だわー。と言うか「パラサイト」正式には2020公開なので俺のベスト1も入れ換えていいっすか?というレベル。
胡波監督、29歳にして3時間54分のこの大作を完成させてベルリンで大評価されたのだが映画の完成直後に自殺、称賛の嵐を見ることもできなかったし私たちは彼の次回作を見ることもできない。そういう経緯を聞くとついつい、とてもナイーブな作風の人で若さと脆さの疾走一点突破映画なのかと先入観持っちゃうんだが、あにはからんや、とんでもなく緻密に構築された大伽藍みたいな作品になっている。
中国東北部の寂れめな町に暮らす孤独な人々が、町を歩き回っているうちにその人生を交錯させる。タイトルは主人公の一人が語る「満州里の動物園にはただ静かに座っているだけの象がいるんだ、見に行かないか」という誘いの言葉に由来する。象が静かに座ってるからって何なんだ?という話であるし実際映画の中のセリフでもそのような扱いを受けるのだが、孤独で貧しい人々の魂は様々に起こる事件のなかで吹き寄せられるように、その静かに座っている象に傾いていく…。この私たち観客にとっては必然性がないとしか言い様のない「象を見に行く」という行為にむかう動機が、映画の語りの力によって「理解」はできないんだけど「納得」させられてしまう。
それも隅々まで配慮の行き届いた設計によることは、あとから一個一個のディティールの意味を思い返せばすぐに分かるようにできている(例えば駅でキップを売り付けてくる長髪の男がほとんど土田世紀のマンガ「編集王」の宮副編集長みたいな濃いビジュアルなのだが、これは本作が登場人物の内面に徹底してピントを合わせる作画であり、しばしば出来事は遠景でピンぼけのまま進行する、このため必要な登場人物にはボケ画でも事態が把握できる様にそれとなく濃い所作や姿が与えられているのだ)。こうした緻密さの細かい積み上げが説得力となってストーリーへの感情的納得へ私たちを導く。私たちはこういう映像による納得のマジックを見たくて映画を見ているのであり、「『シス・ファインダー』を入手する必要があるんだ!」などと劇中で登場人物が大声で叫ぶから「お、おう」とムリに納得した顔をする、みたいなのはおよそ映画体験としては上質とは言えないのだ…等と思った。その他とにかく本作の芸術性の高さは語り尽くせない。カメラワークの超絶な素晴らしさ、音楽の使い方、ロケ地の現場感、映画史上屈指といえる金属バットシーンなど魅惑的な要素に満ちている。胡波監督の次回作が見られないのはまったく痛恨の一言である。


以下に一部ドラマやアニメシリーズ、旧作含めた見たものリストを記録しておく。

2019年12月
「スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け」
「パラサイト 半地下の家族」
「家族を想うとき」
「EXIT」
「幸福路のチー」
「フリーソロ」

2019年11月
「国家が破産する日」
「月曜日が嫌い」
「蜜蜂と遠雷」
「ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん」
「真実」
「ボーダー 二つの世界」
「ジョーカー」

2019年10月
「空の青さを知る人よ」
「T-34 レジェンド・オブ・ウォー」
「バタリオン ロシア婦人決死隊VSドイツ軍」
「ジャッキーと女たちの王国」
「帰れない二人」
「宮本から君へ」

2019年9月
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」
「アス」
「工作 黒金星と呼ばれた男」
「天気の子」
「ドッグマン」

2019年7月
「COLD WAR あの歌、二つの心」
「トイ・ストーリー4」

2019年6月
「人狼」
「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」
「乱世備忘 僕らの雨傘運動」
「岬の兄妹」
「イーダ」(リバイバル上映)
「デス・バレット」(EUフィルムデーズ)
「検事フリッツ・バウアー ナチスを追い詰めた男」
「延安の娘」
「ルンタ」
「アイヒマンを追え!ナチスがもっとも畏れた男」
「僕たちは希望という名の列車に乗った」

2019年5月
「愛がなんだ」
「空母いぶき」
「山懐に抱かれて」
「幸福なラザロ」
「オーヴァーロード」
「アメリカン・アニマルズ」
「さらざんまい」(アニメシリーズ)

2019年4月
「バイス」
「スパイダーマン:スパイダーバース」
「女王陛下のお気に入り」
「運び屋」
「グリーンブック」
「芳華-Youth-」

2019年3月
「バンブルビー」
「ブラック・クランズマン」
「7月22日」(配信)
「ウトヤ島、7月22日」
「THE GUILTY/ギルティ」
「キングダム」(配信ドラマ)
「アクアマン」
「ビール・ストリートの恋人たち」

2019年2月
「バーニング 劇場版」
「あまのがわ」
「蟻の兵隊」
「ヒューマン・フロー 大地漂流」
「ナポリの隣人」

2019年1月
「迫り来る嵐」
「パッドマン 5億人の女性を救った男」
「アリー スター誕生」
「バジュランギおじさんと、小さな迷子」

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