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日本の旅行業は?オンライン市場においてガラパゴス??

1.リーマンショック以降の世界における
日本の旅行会社の位置づけ

私、なべをが2009年から日本人の海外旅行・国内旅行、インバウンドの誘客戦略やマーケティング、チャネル開拓等のお仕事をお手伝いさせていただいてきました。その中で2009年から考えるとものすごい勢いで変化をしてきたのが、いうまでもなくオンライン旅行社の台頭です。いや今ではテック企業と言った方がそのニュアンスがリアルに伝わるかと思います。

リーマンショックのちょうど後の2009年くらいには、まだ世界中で日本人観光客=金持ち、数も多い、きれい好き、来てほしい、といったとらえられ方をしていました。当時は日本人海外旅行者を獲得するために、各国の政府観光局が日本に支社を持ち積極的に旅行会社にツアーの造成を頼んだり、雑誌の記事広告なんかをアグレッシブに出していました。

ちょうどこのころもまだ日本の赤い旅行会社は世界で3番目くらいの売上規模を誇っていて、世界第1位は欧州のTUI社、2位はThomascookだったと記憶しています。

ところが、2012年くらいを過ぎたあたりからEコマースの拡大にあいまって、オンライン旅行会社が凄まじい飛躍を遂げました

図-1は右軸(横軸)に2017年の取扱額、左軸(縦軸)に2012-2017年の取扱額の年平均伸び率をプロットした散布図となります。簡潔に言うと、横軸=どの程度の規模の会社なのか(2017年時点)、縦軸=2012-2017年の間にどれだけ成長したのか?を見たものです。

一つ一つ解説する必要もないほど、Expedia、Booking.com、Ctripが世界の旅行会社の3大巨頭に躍り出たことが分かるかと思います。一方で、日本の旅行会社はグローバルで見ると、3大巨頭から相当距離が離れていることが分かるかと思います。

図-1:東日本大震災以降の旅行関連企業のポジショニング(2012-2017)

スライド1

2.日本国内での旅行会社の争い

さて、世界では3大巨頭が急拡大してきていましたが、日本市場の中での争いはどうだったのでしょうか?最近ではBookig.com等のCMを見る機会も多くなってきたかと思いますが、図-2にあるようにオフラインを含んだ「旅行業」ではJTBが20%程度のシェアを保持してきたようです。

図-2:日本における旅行業のマーケットシェア

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一方で、日本のオンラインの旅行会社の市場のみにフォーカスを当ててみたものが図-3です。オンラインの旅行業の売上が拡大してきており、中でも
楽天とじゃらんの2強という構図であることが分かるかと思います。

先ほどグローバルで触れた3大巨頭のうち、Expediaも一定程度シェアを獲得してきていますが、グローバル市場のプレゼンスに比べると少し物足りないとい感じでしょうか・・・・。

図-3:日本におけるオンラインの旅行業の売上の推移

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3.日本でグローバルOTAがシェア獲得に
苦戦してきた理由

ここで疑問なのが、なんで日本市場で世界の名だたるテック旅行企業がシェアを獲得してこれなかったのでしょうか?楽天ポイントやリクルートが採用しているポンタポイント等のポイント経済圏が高い参入障壁として立ちはだかった!、カタカナの知らない会社は信用できん!といった様々な理由が考えられるかと思います。

ここでは、すこーーーーーし、UXリサーチをかじったことのある者として、なーるほどな!という視点から海外の旅行テック企業がシェア獲得に苦戦してきた理由を挙げたいと思います。

図-4はグローバルOTA(Online Travel Agentの略)のサイトで、図-5は日本のOTAのサイトをスクリーンショットしたものです。どうでしょうか?どちらが使いやすいとおもいますか?そうなんです、ここにどうやら日本のオンライン旅行業にもガラパゴス事情があるようなんです。日本のOTAは情報過多に見えませんか?しかし、こっちの方が普段使い慣れているから、地図をクリックしちゃいませんか?グローバルOTAはA/Bテスト等を駆使してシンプルにわかりやすいデザインで、クリックさせて次のページに遷移してもらうことが第一のような印象を受けます。一方で、日本のOTAはおそらく、「あ、クーポンあるんだ」「そういえば××温泉は地図だとどのへんだっけ」といったように情報にたどり着くまでにユーザーがあれやこれやしたりする印象を受けるのではないでしょうか?日本人のニーズに合わせるためにはどうやらいろんな情報があって、いろんな条件で検索ができないとだめなようなんです。。。このローカルな特殊性の強さがグローバルOTAが日本市場を席捲できなかった理由の一つであると考えられます。

図-4:グローバルOTAのウェブサイト

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図-5:日本のOTAのウェブサイト

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UIから透けて見えることとして、図-6のように日本のOTAは日本人市場でローカライズしたものを起点にインバウンド、グローバル市場に出ていこうとしたのに対して、グローバルOTAは最大公約数的なグローバル市場から日本行き旅行であるインバウンド、そして日本人市場へとローカライズしようとしていたことで、日本人市場のシェア獲得にてこずっていたのではないかと推察します

図-6:日本のOTAとグローバルOTAの市場に対するアプローチの違い

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4.最後に

コロナが明け、旅行市場が戻った際には日本のオンライン旅行会社の優位が続くのでしょうか?上記ではあくまでもデスクトップ画面のUIを述べてきましたが、スマートフォンでの検索が一般的になってきた昨今、情報雑多なウェブサイトでは手のひらの中では検索や予約に適しておらず、より直感的にわかりやすいデザインが好まれてくることも考えられます。コロナによってオンラインでの様々な商品・サービスの購買に消費者が慣れてきている中で、「旅行」購買がどのような購買をされるのか?どのような購買が好まれるのか?消費者が進化を遂げている中で、旅行会社も進化が問われているのでは?と感じる昨今です。 なべを

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