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「がんばれ」という声援って。【日記】

雪予報も出た週末土曜日、私たち家族は早朝からいそいそと千葉へ向けて出発した。

こんな寒い日になにしに千葉へ?というと、ジュニアトレイルランのレースに参加するためだ。

トレイルランとは未舗装の道を走るレースで、もともとは夫の趣味。ジュニアトレランのレースも開催してることを知って、長女が4歳のころから家族で参加するようになった。

私「雪降らないかなー。雪降って中止になればいいのに。」
夫「トレランの場合、相当な悪天候でない限り、中止はまずないな。」
私「天気が不安定だと荷物が倍になる。めんどくさい。」

妻の文句やグチにイラッとしてるに違いないが、そんな素振りを見せず夫はサラッと私のことばをかわしていく。

なんで私がこんなに乗り気ではないのかというと、単に寒いからだけではない、私も走ることになっていたからだ。

長女は小学生低学年の部に参加、次女も3歳8ヶ月で夫との親子ランでトレイルランデビュー、私もノリで保護者の部に登録されていた。

それぞれ各部門で2.5km。走れないことはないと思うけど、次週(今となっては今週)、仕事のスケジュールが綱渡りで、そのうえめっちゃ楽しみにしているイベントもあって、とにかく寒いうえに雨に濡れながらわざわざ走って風邪を引きたくない一心だった。

次女と夫ペアも長女も無事に完走し、いよいよ保護者の部。

抑え気味にスタートしたら、あっという間に先頭集団が見えなくなる。だだっ広い広場から山へ入るともう単独走。ちょっと先に歩いてるママさんを見つけるもまったく追いつけない。足元が悪くて思いっきり走れない。序盤ですでにキツくなる。足というより呼吸がキツい。途中気持ち悪くなって吐きそうになって涙目。そんな時に限ってコース途中で待ち構えていた公式カメラマンに写真を撮られる。

「がんばってくださーい。」とコース誘導のスタッフが声をかけてくれる。寒い中、遅い私のために待っててくれて申し訳なくなる。

上り坂は歩いたり、平坦な道は走ったりと折り合いをつけながら前に足を進めていると、少し先にサーモンピンクのウェアとアルファベット柄のレインコートとそれを抱っこする男性が見える。夫と娘たちだ。

「ママがんばれー」と声援が届く。がんばってる姿を見せなきゃとちょっとは走ってみた。

それから再び終わりの見えない単独ビリ2をひた走る(歩く)。するとまた例の3人組が「ママ〜がんばって〜」と現れる。こちらはもう反応する気力すらない状態。「声援があると力になる」というけれど、あれは全員には当てはまらない。声援があっても走れないもんは走れない。

次に3人組がコースに現れたときは、もうほっといて、プレッシャーかけないでよと思った。「がんばっていてキツいのにこれ以上どうがんばれっていうの?」っていう心持ちになる。

さっきまで、定型文のように「がんばれ〜」って子どもたちのレースを応援していた自分を殴りたい。

雨の中何やってんだ私って何度も思いながら走り続け、終わりも見えてきたころ、コース途中に立ってくれてた誘導スタッフの声援が私を救ってくれた。

「あと少し〜 レースを楽しんで!」

スーッと私の中に染み入ってきたことば。あれ?ってほど急に体が軽くなった。

私は1位を目指して走ってたわけじゃない。だからがんばるとかがんばらないとかが基準じゃなかった。

山を楽しみ、天候すら素直に受け止めて、ありのままを楽しめばよかっただけだったんだ。

箱根駅伝の選手からすれば、2.5kmなんてダッシュのうちに終わるでしょう。でも今の私にとって2.5kmは思いのほか長かった。事実24分もかかったし。

長女はそれを一度も歩かず20分で駆け抜けた。次女はスタート時号泣して夫に抱っこされ、どうなることかと思ったけど、山に入った途端走り始めたらしく(泣いたのはただ単に恥ずかしかっただけらしい)、最後は笑顔でゴールテープを切った(31分)。

ブーブー言いながらも、実際に走ったことで体力の衰えや心持ちに気づいたことがあったし、家族で共有できたし、長女のがんばり(小2女子の部でまさかの2位)を心の底から讃えることができた。

走ってなかったら、きっとこれからも私は誰でも彼でも「がんばれ〜」って声援を送り続けたに違いない。

終わってみれば気持ちは晴れ晴れした1日だった。帰り道、傘がひっくり返るくらい風が強い。「よくこんな寒い中、走ったよねぇ私たち。」って笑いながら娘と顔を見合わせた。

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