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ピッチに立たない強み ~マネージャーが「勝利」のためにできることは何か?~

「マネージャー=雑用」この歪な常識が日本の学生スポーツ界には疑われることなく罷り通っている。しかしこの”違和感”に問題意識を覚え、行動を起こしたマネージャーがいる。静岡大学サッカー部マネージャーの増田美奈さんである。よって第9回となる今回は旧来のマネージャーの枠組みを超え、チームの勝利の為に活動する増田さんの活動とその想いに迫っていく。

プロフィール
増田実奈
ますだ・みな。偶然見た高校サッカーの試合に感動し高校サッカーに憧れを持った。しかし、入学した高校ではマネージャーを募集していなかったため写真部に入部し、カメラマンとして高校サッカーの試合に足を運び続ける。活動を続けていると、チームからモチベーションビデオの作成などを依頼されるようになり、そこで選手たちと関わっている内にチームの中で選手たちと関わりたいという想いが生まれた。よって静岡大学に入学するとサッカー部に入部し、現在はマネージャー業務だけでなく会計や広報、OB会の活動も精力的に行っている。

念願のサッカー部で待ち受けていた現実

 念願の大学サッカー部には「チームに貢献したい」という大きな期待と希望を持って入部した。しかし、実際に入部してみると仕事内容は雑用のようなものばかりで、思い描いていた姿ではなかった。とはいえ、何の知識もなかったため、まずはそのレールに従うべきだと考え、淡々と業務をこなすことにした。しかし、自分の感情を抑えこみ仕事をこなしていても、マネージャーの在り方に関する違和感は増すばかりで、「自分がやっていることは正しいのか?」という問いを自問自答する日々が続いた。長い間やりたいことができず悩む日々が続いていたが、Twitterを始めたことがきっかけで、意志が固まり進むべき道が開けた。それは、Twitterを通して他校にも同じように「マネージャー=雑用」に違和感を感じ、自分の存在意義について悩む人がたくさんいることを知ったからである。よって3年生に入るタイミングで、現状を変えるための行動を始めた。

ピッチに立たないからこそできることがある

 そこでサポーターとしてではなく、チームの一員としてチームの勝利に貢献する道を探し始めた。ピッチに立たないマネージャーだからこそチームの外にいる色々な人をチームと繋ぎ、チーム内の活動に客観的な視野を持てる。という2つの存在意義を見出し活動を行った。具体的には暑さ対策に対して科学的な実証実験を行ったり、財源確保や支援の繋がりを作るためにOB会を立ち上げたりした。マネージャーの仕事に加え、新たな挑戦を始めることは非常に大変なことのように思えるが、静大サッカー部への愛情を原動力に「大好きな仲間と笑顔で終わりたい」という目標を掲げ活動を精力的に行なった。

 

残り4ヶ月。「4年生の意地を見せたい」

 国立大学である静岡大学のサッカー部は推薦枠がなく、部員が少ないためチームとして存続が難しい状況にある。しかし、増田さんは「自分が卒業した後も長く続くチームであり続けてほしい」という想いから部員集めや資金集め、そして後輩への受け継ぎに注力している。
最後に、「残り4ヶ月という短い期間ではあるが、4年生の意地を見せることで後輩に多くのものを残したい」と話し、それを語る姿からは今後の活動に対する強い覚悟が感じられた。

筆者コメント

中学の時にサッカーに魅了されてから、高校ではサッカー部に入部できず、やっとの思いで入部した大学サッカー部では2年間やりたいことができない、という長い苦悩を経て今の精力的な活動に至っていることがわかった。マネージャーや学生スタッフの立ち位置は私のチームでも非常に難しい課題として存在しており、全国の部活動チームにもおそらく増田さんと同じような悩みを抱える学生スタッフが多くいるだろう。よって、この「スポットライト」が一人でも多くの学生スタッフの悩みを晴らし、勇気を与えられる存在にしていきたいと強く感じた。
 
(取材・文=吉田賢人、橋本泰知)

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