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月探索をAR体験にするとこんなに面白くなった! - AR絵本『JAXAといっしょに月探査』開発者インタビュー

絵本から宇宙船が飛び出してきて、月の世界を覗いて、月面基地が作れる。それもSFの話ではなくて、現実にJAXAで進んでいる月探査プロジェクトを自分で体験できる。未来のような絵本で遊んでみたいと思いませんか。


AR絵本『ARで 遊べる!学べる!JAXAといっしょに月探査』がすごい。

 「かぐや」は、月でどんな調査をしてるの?

 どんな発見があったの?

 月面の無人探査機はどうやって着陸するの?

 月に水って本当にあるの?どうして水を探すの?

ページをめくる度に、実際に開発中であったり、すでに活躍している探査機や宇宙船が本から抜け出て、目の前で動き出し、疑問の答えを見せてくれます。

一つ一つのミッションをゲームで遊ぶように探査機や宇宙船を操作してクリアしていくと、実は全てはJAXAの月面基地開発という将来の壮大な計画につながっているのです。

シンプルで小さい子でも親しみやすいデザインでありながら、最新の月面開発について大人もワクワクするくらい正確に楽しく学ぶことができる絵本がどうやって生まれたのか、開発に携わったお二人にお話を聞くことができました。


――AR絵本『ARで 遊べる!学べる!JAXAといっしょに月探査』が素晴らしかったので、ぜひUnityの公式noteでご紹介させてください。田中さん、めーぷるさん自己紹介をお願いします。

田中:今回企画を担当しましたBBmedia テクノロジープランニング部門 企画演出・田中仁史です。

谷崎:ARの実装部分を全部担当しましたBBmedia テクノロジープランニング部門 VR/AR/インスタレーションプログラマー ・谷崎文香 (めーぷる)です。よろしくお願いします。


――谷崎さんは、Unity開発者で「めーぷる」さんとして、先日もUnityのオンラインイベントで登壇してくださいましたね。ありがとうございます! 早速ですがこの月探査AR絵本という企画は、どんなきっかけで生まれたのでしょうか?

田中:実は最初は動画の企画だったんです。私も正直、JAXAさんと動画を作るお仕事をする前は、宇宙についての知識はSFから得たもののみでほとんどありませんでした。本格的に宇宙を知ること=勉強というイメージがありました。


――宇宙に関わる技術は難しそうというイメージありますね。

田中:しかし、JAXAさんの担当者さんにお話を伺うと、月面探査の計画は、面白いストーリーになっていて、しかも、全てが理にかなっていて目から鱗でした。

そこで、このストーリーを知ってもらえば、誰でも宇宙に興味を持ってもらえると企画し演出した動画が「1分でわかる月面基地計画」です。

JAXA探査センターウェブにも絵本発売のお知らせと一緒に掲載されています。


――最初は1分の動画企画だったんですね

田中:動画に続き、この動画のために作ってもらったマシンや世界観のデザインもストーリーもすでにあるのに、動画だけにしておくのはもったいないと思って、これらの素材を活かして他のコンテンツにしたいと考えました。

はじめは絵本にしようと思いましたが、せっかくなら、実際にマシンを動かしながら楽しんで学べるAR絵本を作ってみたくなり谷崎(めーぷる)さんに相談したのがきっかけです。


――ARでマシンが目の前で動いてるのを見ると、「月面基地計画って、SFのお話じゃなくて現実にこんなに進んでいたんだ!」ととてもワクワクしました!実際にARの実装はいかがでしたか?

谷崎: 大変でした。ARならではのバグなどがあって、パソコン側でうまくいっても実機で試すとうまくいかないことがあったりして最後まで細かいバグの修正をしていました。

AR Foundationを使用していてもiPhoneとAndroidで同じ実装が通らない部分もあったのでそういった部分にも結構悩まされました。

また、いままでイベント向けの3分くらいで終わるARやVRの自社コンテンツしか制作したことがなく、ストアに出すコンテンツを作ったのが今回初めてだったので、軽量化などストア向けの調整にも苦労しました。ただ、大変だったけどすごく学ぶことが多くてとても楽しかったです。


――なんと!ストアに出すのが初めで、しかもiPhoneとAndroid両方リリースかつ本の発売日にも合わせるってすごくたいへんそうな…!

谷崎: 大変でした...笑


――すごいです…!本の発売日に合わせて調整したのですか?

谷崎:もともとは4月に行われる予定だったJAXAイベントで配布することを目指していましたが、コロナの影響で中止になりました。スケジュールが延期になった結果7月リリースとなったのですが、4月だと絶対に間に合っていなかったので不幸中の幸いでした…笑 

スケジュール延期のおかげで本の発売に合わせてしっかり調整できたといった感じです。


――絵本も元はイベント配布の予定だったのですね…!おうちにいながら、実物大のマシンが動くところを見られて、この状況にちょうどマッチする作品だなと感じてました。

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――お二人が企画をしていて、または開発していて、ここのページのコンテンツが一番楽しかったというのはありますか?

谷崎:全体的に作っていてとても楽しかったのですが、選ぶならば月極域探査ローバーの「水のありか」「月面基地」です!単純に、その2ページは内容的に他のページより多くプログラムを書いたことと、学べることが多かったというのが理由です。ゲームの内容もこの二つは結構お気に入りです。

特に「水のありか」は探査ローバーをラジコンのように動かすのがとても楽しくて気に入っています。

田中: 私のおすすめのコンテンツも、月極域探査ローバーです。シンプルにラジコンをARで出来たら面白いと思いました。ARとも親和性高いと思います。

ARのラジコンマシンなら何かにぶつけて壊すこともないですしね。
実際の探査ローバーもリモコンで動かして水を探すっていう、まさにリアルな体験なんですね。

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――実際の探査ローバーもリモコンなんですね!!

田中:そうなんです。氷を見つけて掘り起こす動作もデフォルメしてるだけで本当のことなんです。


――自分で動かしてみても、ローバーって月の表面の小さな障害物も避けて進まなければいけないのか、螺旋状のドリルもシンプルで故障がしにくかったり、短時間で目的の深さまで掘れるように作られているんだろうなという、今まで知らなかった発見がありました。


――シンプルにデフォルメされているのに、こんなにリアルなマシンや動きを再現するのに、コンセプトやデザインの段階からJAXAさんと相談しながら作られたんでしょうか。

田中:コンセプトやマシンのデザインや動きは、動画「1分で分かる月面基地計画」で監修をいただきながら確認しておりました。

デザインはデフォルメされていますが、実際のマシンのパーツの意味を教えていただきながらデザインに起こしております。

意外とこの絵本のマシンの細部を見てもらって、その細部の役割みたいなことを考えてもらうのも面白いかなと思います。

谷崎:動きに関してはまず資料をみながら実際のマシンの動きや動かし方に沿ってゲームやアニメーションの内容を考えました。そのあと実際に実装してみて都度監修していただき、修正したりしながら作り上げていきました。

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――JAXAさんと一緒に宇宙開発の技術を正確に伝えることに丁寧に専念して作られているから、こんなに誰にでもわかりやすく伝わる作品になったんですね。貴重なお話をありがとうございます。これを読んでいるnoteの読者の方に最後にお伝えしたいことはありますか。

田中:AR×絵本という組み合わせにしてよかったと思います。SNSの方で、本を置いてプレイ動画や写真を投稿していただいたものを見るのですが、なんと表現したら良いのかわからないのですが…、手触り感というのか、あたたかみが伝わってきます。

デジタルとリアルの良いところをちょうど組み合わせられて、それこそARであるメリットが出せたのではと思います。

お子さんも大人にもたくさんの人にこの絵本を体験してもらって、今の宇宙開発の魅力が伝わると良いと思います。

谷崎:とても内容が凝ったAR絵本になったとおもいます。ゲームの内容だけでなく、マシンが絵本から出てくるようなアニメーション演出にしたりなど、絵本とARの繋がりを意識してつくりました。

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谷崎:全体的に3Dの見た目も絵本のデザインの可愛さに負けないように可愛くできたと思います。3Dの見た目や動きにも注目しながら遊んでいただけるとより楽しめますし、エンジニアの私がとても喜びます。

表紙や裏表紙、スタッフロールなどの本編じゃない部分にもカメラをかざしてみてください。この本を通して老若男女、いろんな方に宇宙開発の魅力やARという技術の魅力が伝われば嬉しいなと思います。

――ありがとうございます!



宇宙開発の面白さと魅力を、親しみやすくわかりやすく伝えるために、丁寧に作られたAR絵本『ARで 遊べる!学べる!JAXAといっしょに月探査』、オンラインで購入できますのでぜひお手にとって遊んでみてください。


プロフィール

谷崎 文香(めーぷる)
BBmedia株式会社
テクノロジープランニング部門 VR/AR/インスタレーションプログラマー

めーぷるしろっぷをちょんちょんしているXRエンジニア。ビービーメディア所属。アイドルになりたいと思っていた時期もありましたが普通に就職をして気づけば4年目に突入していました。日々「完全に理解した」と「なんもわからん」を繰り返しています。

代表作品
2017年:SXSW 出展「IKEBANA VR 」
2019年:ARで学べる遊べる「JAXAといっしょに月探査」
田中 仁史
BBmedia株式会社
テクノロジープランニング部門 企画演出
チャップマン大学 映画学科卒。2004年 BBmedia入社。映像演出だけじゃなく、デジタルコンテンツへのディレクションも楽しんでいます。

代表作品
2017年:SXSW 出展「IKEBANA VR 」
2019年:ARで学べる遊べる「JAXAといっしょに月探査」


(執筆:荒木ゆい / ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン)



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