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vol.28 神門 崇晶 「一度は逃げた、だから自分と向き合い続ける」

「大学生活をもっと充実させたい!」「やりたいことを見つけたい!」という想いを持ちながらも、なかなか行動に移せない北海道内の大学生に向けた連載企画「Knows」。


編集チームが独断と偏見で選んだ面白大学生の人生をお届けします。今回は第28回目。ゲストは小樽商科大学3年の神門 崇晶(かんど たかあき)さんです。

現在、大学生とは思えないほど様々な活動に取り組まれている神門さんですが、高校時代には将来何をやりたいのか分からなくなってしまったそう。そこからどうやって一歩を踏み出すことができたのでしょうか。

神門さんが最も大切にしているのは「自分と向き合うこと」。今、自分と上手く向き合えていない方、そしてやりたいことに迷って一歩を踏み出せていない方にぜひ読んでいただきたいです。

プロフィール

神門 崇晶(かんど たかあき)
小樽商科大学商学部3年生。学業の傍らカレーパンドラ小樽商大店の店長を務める。また、YouTubeチャンネル『おたる再興戦略室』やFMラジオ『神門たかあきのラジオしか勝たん!』のパーソナリティ、札幌の過去・現在を紐解き、未来に繋ぐ『札幌解体新書』のメンバーなど、様々な活動に精力的に取り組んでいる。

順風満帆な中学時代、自分と向き合えなかった高校時代

プロフィール用

-現在、神門さんは様々な活動に取り組んでいらっしゃいますが、まずは中学や高校時代のお話を聞かせてください。
「中学時代は模範的な生徒でした。小学生の時には野球をやっていたのですが中学では続けず、代わりにその熱量を生徒会活動や勉強に注いでいました。
生徒会では1年目に副会長、2年目に会長になりました。会長に就任した際に顧問の先生が替わり、生徒会の生徒が主体となって活動を進める方針へと転換しました。そのおかげで、自分たちが考えたアイデアをどんどん形にすることができ、卒業してから10年近く経つ現在でも、僕たちが始めた取り組みが続いているそうです。」

-それはすごいですね!勉強の方はどうだったのでしょうか?
「中学生になったときから『いい高校に行きたい』というのはずっと考えていました。ですが、これは『将来のことを考えて安定したレールに乗りたかった』からではなく『勉強が好きだった』からです。実際に、テストでは学年1位をとり、内申点もほぼ満点でした(※)。

3年生になって成績が伸び悩んだ時期がありましたが、1、2年生の貯金があるのをいいことに少しサボってしまったこともありました。実際に第1志望だった高校に合格することはできましたが、このサボってしまった経験が高校で落ちこぼれてしまったことへの序章になってしまったと思います。」

※北海道の高校受験は、5教科で行われる試験の得点である「当日点(300点満点)」と、学校の成績から算出される「内申点(315点満点)」によって合否が決まる制度が一般的です。

-なるほど。では、その高校時代はどのように過ごされていたのでしょうか?
「中学生まで好きだった勉強は、1回目の定期考査で早速諦めてしまいました(笑)。というのも、全体成績が320人中280位くらいだったんです。それまで自分の学力はトップクラスの方に位置していると思っていたのですが、その甘い考えは一瞬にして崩れ去りました。

今思えば諦めるには早すぎるんですが『この学校には勉強できる人たちしかいない』と好きだった勉強が途端に好きではなくなってしまい、好きの対象は高校から始めた空手に移りました。」

高校時代


▲高校時代の神門さん

-高校では空手に挑戦されたんですね。
「好きなことだったので、部活はもちろん真面目にやっていました。ですが、怪我や結果の出る出ないで思うようにいかないことも多く、気分の浮き沈みに苦しみました。
そのうち『部活に行きたいのに、なんで学校の授業を受けなきゃいけないんだ』という勉強に対する嫌悪感を抱くようになり、学校を休むことが増えていきました。
自分がどこの大学に行きたいのか、何をしたいのかも分からなくなってしまい、結局浪人することになりました。」

-中学時代とは対照的に、辛い時期を過ごされたんですね……。
「落ちこぼれにはなるべくしてなったと考えています。高校時代はとにかく自分と向き合うことができませんでした。
周囲と比較し、自分自身の「理想」と「現実」のギャップを受け止めることが出来ず、自分と向き合うことから逃げてしまったゆえに「自分が好きなことや得意なこと」も見つけられませんでした。
その結果として、優れた同級生たちへの羨望や嫉妬に繋がってしまいました。
現実を受け止めきれずに自分と向き合えなかったことは、僕の中で最大の失敗です。本当にもったいなかったです。

自身を変えた「出会い」

-浪人されたとのことですが、何か印象深い出来事はありましたか?
「予備校には通わず、でも勉強するだけなのも嫌だったので、浪人してすぐコンビニでバイトを始めました。その時にお客さんとして来たアメリカ人のパトリックとの出会いが僕を大きく変えました。
よく来店していることから近所に住んでいるのではないか、来店した際に交わした会話から良い人なのではないかと予想し、いきなり『英語を教えてほしい』と僕のメールアドレスも併せて書いた手紙を渡したんです(笑)。」

-とても大胆な行動……!
「その後2週間ほど経ってパトリックから連絡があり、週1、2回ほど英語を教えてもらえることになりました。英語を教えてもらうことはもちろん、彼は僕のことを何でも褒めて勇気づけてくれたんです。
高校時代は自分と向き合わず、周囲と比較して自分に誇れることはないと嘆いていましたが、彼がくれた言葉で『自分は自分として肯定していいんだ』と思えるようになりました。
残念ながらパトリックは韓国に行くことになり半年ほどの交流となりましたが、『何か行動を起こすと道が開ける』という経験が僕にとって貴重なものになりました。」

パトリック


▲パトリックとのツーショット

-素敵な出会いですね!
「結局センター試験の結果が揮わず、志望を北大から樽商に変更することになりました。そして樽商入学時には『小樽という特殊な地域で、自分にしかできないことをやってやろう』と決意を新たに、大学生活を始めました。」

目標の実現、自分と向き合ったコロナ禍

-ここからは大学でのお話を聞いていきたいと思います。決意を胸に、1年生はどのような活動をされたのでしょうか?
「朧げながら『起業したいな』という想いを抱き、大学に入学しました。また、パトリックとの出会いを通じていろんな価値観を学びたいと思い、国際交流サークルに入りました。
そのサークルを立ち上げた商大の職員さんとサークルの新入生歓迎会で出会い、話をする中で仲良くなりました。その数週間後、職員さんから『カレー屋をやりたいって話している友人がいるんだけど』と紹介され、実際に会ってやりとりを重ねました。
そして、その方にオーナーとなっていただいて、小樽にカレー屋をオープンさせようという話になりました。6月ぐらいの出来事です。」

-入学してわずか2か月でここまで物事が進んだんですね……!いきなり自身の目標を達成した行動力に脱帽です。
「大学側との交渉が長引いてしまったのですが、11月に『カレーパンドラ 小樽商大店』を開店させることができました。もちろん大学には学食もありますが、それとは異なる一経営体としてカレーパンドラをオープンさせたので、光熱費などの諸経費を払わなければなりません。そのためにも、お客さんに来ていただかないとお店は続けていけません。
そこで、どんな工夫をしたらお店を知ってもらって、カレーを食べに来てもらえるのか、試行錯誤する日々が続きました。例えば、メニューのレイアウトを工夫してみたり、最初からカレー1皿を食べるのに抵抗がある人や、少ない量でもお腹いっぱいになってくれる人のことを考えてハーフカレーを提供したり。色々なアイデアの中で最も反響があったのは、激辛カレーのタイムアタック企画でした。お店で出す最も辛いカレー『地獄坂90°』をどれだけ早く食べられるのかを競い、好成績を残した人をSNSで取り上げたり、店内に写真を飾ったりしたのですが、これが商大生に大好評だったんです!」

パンドラ

▲お店の前で撮影、写真中央が神門さん

―様々な工夫をされたんですね!
「よりよいサービスを提供し、満足してもらえるにはどうしたらいいのか』ということを念頭に置き、試行錯誤を繰り返して自分のアイデアを形にすることが、とても楽しかったんです。
僕はこの『自分のアイデアを形にする楽しさ』に既視感を覚えていて、今振り返ってみると、これは中学時代の生徒会の経験が活きていたのではないかとふと思ったんです。
また、オーナーをはじめ、大人や周囲の人に面倒を見ていただけたことで、高校時代には見つけられなかった自分の居場所を、ようやく見つけられたと思えるようにもなりました。」

―これまでの様々な経験で蒔いた種が、大学生になって花を咲かせているんですね!
「いや、まだ蕾だと思っています……(笑)。
 店長を務めることは楽しいことだけではありませんでした。もちろん大学生である以上勉強はしなければいけないので、ランチタイム営業のために授業の間や放課後、さらには早朝にカレーを仕込んでいるときは本当に大変でした。
ですが、オーナーは別の仕事もしているのでその大変さを理解してもらうことが現実的に厳しい、そんなことから徐々にオーナーとの間にズレが生じていってしまったんですね。2月に大学の授業が終わったため初年度の営業が終了し、その際にオーナーが話し合いの場を作ってくれました。そこで僕たちのやりたいことは同じだと確認し、『改めて一緒に頑張っていこう』と次年度の営業に向けて再出発を誓いました。
その矢先、日本でも猛威を振るい始めたコロナの影響によって、大学はオンラインになってしまい、お店も休業せざるをえなくなってしまいました。」

―これから、という時に休業に追い込まれてしまったんですね……。お店が営業できない中、大学2年生はどのように過ごされたのでしょうか?
「授業のオンライン化によって、僕は自由に使える時間がとても増えたと思っているのですが、その時間を使って好きなことを探ってみたり、1年生の時とはうって変わって真面目に大学の勉強に取り組んでみたりなど、自分と向き合いまくった1年になりました。特に本を読むことにハマり、読書を通じて知識だけでなく、著者と対話している感覚を得られる楽しさに気づくことができました。
『どうやって伝えたら相手に納得してもらえるのか』を考えるきっかけにもなり、大学のレポートやその他の活動にも活きています。実際にGPAは、1年生の時と比較してかなり上がりました。」

―自分と向き合って、コロナ禍でも充実した1年を過ごされたんですね。ちなみにその他の活動というのは、具体的にどのようなことでしょうか?
「カレーパンドラのオーナーと一緒に『おたる再興戦略室』というYouTubeチャンネルを始めました。これは小樽の現状を分析・把握して、未来の小樽を形作る再興戦略を描く、というチャンネルです.これまでには、観光や財政、教育などを扱ってきました。また、新札幌のFMラジオの番組も持たせていただき、個人の活動が増えた1年でしたね。
 今年も相変わらずコロナの影響が続いていますが、昨年やってたことは引き続き取り組みつつ、新たなことにも挑戦しています。カレーパンドラは現在も休業中で、市内某所への店舗移転を予定しています。
個人の活動では先ほど紹介した2つに加え、7月から『札幌解体新書』という講義型イベントに参加しています。こちらはYouTubeをきっかけにお声をかけていただいたので、人との繋がりの大切さを改めて実感しています。」

解体新書

▲札幌解体新書のメンバー、上段左から2番目が神門さん

今後の展望、悩める大学生に向けて

―それでは、神門さんの今後についてのお話を伺いたいです。
「進路はまだ決まっていないですが、民間企業に就職して経営の経験を重ねる方向性がベターかなと考えています。とても漠然としていますが、最終的には小樽市長になって、民間企業で学んだ経営の力で小樽を立て直したいなと考えています。
 生き方としては、自分や周りの人に嘘をつかないことを貫いていきたいです。フィクションが溢れた世の中だからこそ、自分や現実と向き合って対話をし続けることが大切なのではないかと考えています。」

―最後に、一歩を踏み出せず悩んでいる大学生に向けてアドバイスをお願いします。
「何度も繰り返していますが、まずは自分自身や社会といった現実から目を背けず、しっかり向き合うことが大切だと考えています。その上で、思い切って一歩を踏み出すのも良し、まだその時ではないなと感じたら待つのも良いことです。ですが、期待だけを抱いて現実と向き合わないまま一歩を踏み出すことだけは絶対にしない方が良いです。
 また、他人と比較することもおすすめできません。『自分は何もできないのに周囲の人は……』と落ちこんでしまっては何も行動できなくなりますし、何より自分を傷つけます。精神的自傷行為です。自分との対話を繰り返し、自分のことを知って、どんな小さなことでもやれることを積み重ねていくことが大切です。近道なんてありません。地道に続けることが最も重要なのです。未来を作るのはいまの自分です。だから、僕はいまを必死に生きています。」

ラジオ

▲ラジオ番組のメンバー、写真右が神門さん


以上でインタビューは終了です。
お話をお聞きしながら、私自身が経験した自分と向き合えなかった出来事を思い出しました。そのことから逃げ続けて今に至るのですが、時々思い出しては後悔しています。自分や現実と向き合うことで、認めたくないことや知りたくなかったことを受け入れないといけない苦しさを味わいます。ですが、そこで経験した苦しさをプラスに変えることで、神門さんのように新たな一歩を踏み出すことが出来るのではないだろうか、と考えさせられました。今度こそ自分から逃げず、Knowsでの活動をやり遂げたいと私自身も決意を新たにすることができました。

神門さんの人生を書いたこの文章から、私と同じように何かのきっかけを得てもらえたら嬉しいです。最後まで読んでいただきありがとうございました!

神門 崇晶(かんど たかあき)

取材・文:中嶋ひかる

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