殺人ドッキリ

やってしまった、ついにやってしまった。目の前にはまるで別人のように見えるあいつがいる。

手には今まで感じたことのないような感覚が残っている。まるで初めて盗んだレモンを手にしたようなあの感覚、いや小さなころ蟻を虫眼鏡で焼いた時のような感覚だろうか。いや違う、決定的に何かが違う。

深紅に変わった部屋の景観は、白かった壁を塗りたくり、残った白さえも森林の如く感じさせる。

俺にこれからどうしろというのだ。もともとはお前のせいだろ。そんなことを思っても仕方ない。元来人間には自分のミスを環境のせいにする機能が備わっているという。まさにこの状況か。

今夜、俺はあいつを殺してしまったのだ。

信じたくないが、信じなければならない。

しかし信じがたいことがおきた。先にボンヤリと見えていた、軽薄な光が途絶えた刹那。新たな感情が湧きたつ、その刹那。亡骸だったはずの体が動き出したのだ。それはまるでB級ゾンビ映画さながらの映像であった。

「ちゃっちゃらー ドッキリ大成功!!」そういって起き上がったあいつは今までのことがなかったかのようにふるまっている。俺は白昼夢でも見ているのだろうかと思い、あいつの顔をよくみてみる。まるでジャングルのような髪、その顔に似合わない、猫のようなアーモンド形の目、少しひび割れた、薄い口、どう考えてもあいつだ。これはいったい。。。

俺の思考はそこで途絶えた。やはり双子、思っていることは同じなのだろう。

あたりは平安の夜のような闇に包まれる。腐敗した匂いが残るこの部屋に誰の影も追うことができない。

彼らの行方は何処か。誰も知る由はない

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