読みたいことを、書けばいい。

読みたいことを、書けばいい。
田中泰延・ダイヤモンド社
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漫画や小説が続きましたんで、ここらでちょっと実用書を混ぜてみますかね。タイトル通り、「書く」についての本です。くくりで言いますとビジネス書…実用書でいいんですかね。ダイヤモンド社ですもんね。
副題に「人生が変わる シンプルな文章術」とあります。
いちおうライター指南になるのかしら…

本書を拝読するまで失礼ながら存じ上げなかったのですが、著者さんは元電通でコピーライター・CMプランナーとして活躍された後、フリーのライターとして独立なさった方だそうで。ライターとしての独立なのか、会社辞めたらライターへの道が拓けたかの順番まではわからないですが、在職時から映画評やブログ、紹介記事など書かれてたようですね。エンタメ系にお強いご様子ですが、この本を出された時点で文章系のセミナーを既にやられているようですね。ご覧の通り、わたしは予備知識無しでこの御本単体で感想を書きますね。

文章指南の御本の感想文なんて書きづらくてしゃーないんですけれど(じゃあなぜ選んだ…とかはいいっこなし)、この御本は文章の技法やトレーニング法の部類というよりは、それよりももっと手前の「アウトプットする目的」や「心構え」…そこまで強くはないかな…心持ちぐらいかな…そういった点への言及が多いかと思います。
読んでおいて「思います」もないだろう、てなもんなんですが、この本、メインのお話以外にコラムも載ってまして、このコラムの情報量がなにげに多いんですよ。なので、「あれ、メインの文章てどれだろ…」て少し惑うんです。コラム欄はインフォメーションも多いんで、最初白いページのメイン内容を読んだ後にコラムをまとめて読むとかお好きなコラムを読むとかするのが内容が頭に入りやすいかもしれないですね。でもコラム読んだらメインに対して「えーと、なんだっけ…」ともなっちゃうかもしれない。

狙ってそのようにしているご様子ですが、こちらの本、サイズや厚さや出版社名の印象からすると驚くほど文字が大きくて文章がやさしく、つまり圧倒的に「読みやすい」です。ただ、文体…話運び?には少しクセがあるので、リズムや感覚が合わない人は「ああーー無理ぃーーー」てなる可能性があります。こればかりは人なので仕方ない。わたしも実は一冊通してずっと背中のどこかが小さくもぞもぞしてる感じを抱いたまま読みました。嫌いじゃないし面白いコメントもいっぱいあるんだけど、あの、タレントさんとかでもありますでしょ、こう、なんか苦手なんだ…て。あの感じです。本書でたまたまこの話になっただけで、どんなに高尚な文にだってそれを感じることはよくあるわけなので、本て相性だと思います。読んだよちゃんと読んだ。
その上でこの記事みたいに一定以上長い文章を書いてるんだから、読み込みもしてると思う。いわばファンレターだからねこの感想文ね。面白いから書くからね。

変な言い訳みたくなりましたが、主題というか一冊通して著者さんはタイトル通りの
「自分の読みたいことを文章にすればいい」
とお話してくれています。ただ、それらを「自覚的にやったほうが良い」「自分で自分の読みたいものや表現の種類は理解した上で書くのが良い」といった説明がされている、そんな本です。
「なんのために書いたか」「なにを書くのか」「だれに書くのか」「どう書くのか」「なぜ書くのか」が目次にある大項目なのですが、いわゆる文章術の基本のキを、世間で言われていることより著者さんの考えで書かれてるというところで非常に好感が持てます。
また、さすが広告まわりの第一線で働かれていた方といいますか、この本のうんと手前にあるのが
「素人が書いた文章が他人にバカスカ読まれることはないですよ」
という素晴らしく現実のお話でして、
「それでも書くのであれば、せめて自分が抜群に楽しめるものを書こう」
て姿勢なんですね。これ、すごく真摯な指南だと思います。
そして「言葉に騙されず本質をしっかり考えよう」て言ってくれてるんですね。めっちゃいい本ですね。
いわゆるお金を稼ぐだとか、承認欲求を満たすための手段で「書く」のを選ぶのも割に合わないと明記してますし、ご自身が「別に文章書くの好きってわけじゃない・むしろめんどくさい」て書ききってますし、有名人が書くほうが断然人に読まれますよって書いてますし。「あなたはそれでも書く人かどうか」を再三確認してくれてます。

書くって一定以上の人が出来ることですし、華やかな世界に見えるんでしょうかね。職業として目指す人が多いようですね。かくいう私も思い切り連日書いてる人ですけれど、いまのところ金稼ごうとか読んでもらおうってよりは「ヒマすぎてやることがほしいから書いてる」ですからね。いやほんと、どんなに面白くても、本も漫画も「ただ読むだけ」て飽きますよ。なので誰かに「ねえこれ面白いよ」て教えたいんですけれど、友達が好み同じかなんてわからないですし。であれば「王様の耳はロバの耳ー」的にネットの海に流しておいたらまだ多少どこかの誰かに引っかかるかと思って放流しています。自分が好き勝手書いたもの読まれないのは漫画で生活してた頃に思い知ってますんで、それで生計立てようと思ったらほんと地獄ですよ…(たまたま一定期間生計立てられたりもしましたけれど)。

ただ、「自分が思ってるよりはもうちょっとだけ、自分発のものが他人に読まれたりもする」てところがここらへんのアウトプットの面白いところで、みんなそういった何かを夢見て出力したりするんだろうかな。誰かとお話してるみたいな面白さもありますもんね。人はみんな自分の話を聞いてもらいたいもんなんでしょうね。

この本の最後近くに
「書くことは孤独と向き合うための「手なぐさみ」なのかもしれない」
とあって、ああ、結局これかなあ、とも思います。自分で書いたものは自分をひとときだけ孤独から救ってくれる、そのために書く。とてもいい締めですね。
なので、この本は「なんか書きたいと思ってるけどそんなことしたことないから何していいかわからないのよね」って人にいいかもしれません。自分と仲良くなりたい、もっと話してみたい、と思う人はぜひぜひ。

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