宅飲み探偵のかごんま交遊録

宅飲み探偵のかごんま交遊録
冨森駿・集英社文庫
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「かごんま」て聞かない言葉だなあ…どんな意味だろ…て思っていたら
「鹿児島」
のことだったんですね!ということで、タイトルにある通り舞台は鹿児島の作品です。現代ものであんまり読まないな鹿児島もの…ちなみに読みはじめてから気が付きました!(深く考えていなかった)

表紙は少女漫画家の西炯子さんが描かれています。ちょっと若い人向けのレーベルなのかな?中身も大学生の日常に、ちょっと謎解きと友情プラス、といったものなので、本格ミステリーをお望みの方だとだいぶ軽めですね。
こちら本屋で適当なタイトル買い(手に取る基準は「お料理もの」)をしたものなんですが、男の子2人が描かれてたので
「男子でお料理もので謎解きなのね」
とあまり深く考えず買いました。電子書籍での買い物も多いんですが、たまに本屋で文庫本をばらばらっと買うのもとても楽しい…

主人公は大学生の男の子の「小金井」くん。憧れの先輩に告白したらかぐや姫よろしくお付き合いに条件を出されて、指定の場所に行ったらマッチョな男子がいた…という話し出しで、すわ美人局かとおもいきや…といった内容です。楽しみ部分は気になったら読んでいただくとして、基本情報としては先の記載の
「男子ものでお料理もので謎解きなのね」
からそう増えやしないんですが、鹿児島の日常情報も挟まれてるし、それがキーになったあれこれもあるしで、ちょっと面白いスパイスのかかった作品でした。桜島の噴火のニュースてちょいちょい見るけれど、噴火が日常な人の生活って全然見当もつかない関東民なので…目をこすっちゃいけないとか、灰だけの回収があるとか、なんかざっくりとした知識だけはある…

作品の中身以外で面白かった情報としては、書かれてる方が中学校の教諭をなさっているそうで。おおー…仕事しながら本一冊書くなんて偉い…!
ついでに第一回エブリスタ×ナツイチ小説大賞受賞作品とのことで、内容的にもライトですし、とても夏休みに楽しく読める作品ですね。大丈夫…人は死なないし命の危険も無いどころか血も出ない…安心ミステリーだよ…

中身につきまして、一話完結式のスタイルだけど全体はつながっている…といえばそうなんですが、ちょっとおもしろい構成で
一幕-幕間、二幕-幕間、三幕-幕間、終幕、って流れで一冊になってます。
一話読むごとにちょっとおさらいと補足があるので親切設計ですね。
あと、お料理ものだー、と思って買った作品でしたが、肝心の料理をしているところはそんなに細かい描写が無いです。そういう意味では
「料理楽しいぞ!おいしいぞ!」
ってタイプの作品とはちょっと趣が違いますね。
巻末にパエリアのレシピは載ってますが、材料も本格系で、しかもパエリアのみだし…いやいいけどパエリア…パエリアか…もうちょっとこう…「おっ、やってみるか」て思えるぐらいの料理でも良かったんじゃないだろか…とついついナナメに見てしまいました。

この書き方はちょっと意地悪なんですけれど、この作品の「料理」の要素が少し惜しいなー、というのが個人的な正直な感想です。主人公の小金井くんの視点なのでやむなしという見方も出来るんですけれど、夏輝くんが料理に対してどう思っているか、自分の料理への感想みたいなものをもう少し知りたかったと思ってしまいました。大丈夫?料理楽しい?それとも実は料理しなくても人がいたらそれで済んじゃう?みたいな気持ち…
こう思っちゃうのは、おそらく私がいままで読んできた料理ものの作品では、だいたい料理作る人がめちゃくちゃ食いしん坊で料理が楽しくて解説もついて、ってしてたからだと思うんですよね。
あとは…なんだろう、キャラクターの喋り口調がすごくこう…そわっとする…なんでだろう…口調が硬い…?

この料理の要素にしてもキャラクターづけにしても、ひょっとしたら作者さんの場数の問題かもなあ、と思ったりもします。これは書く側もですけれど、読む側にしてみてもこの作家さんの作品を読む筋肉が鍛えられてない感じ。もう少し双方のリズムが合うようになれば、カタさもとれて物語に没頭出来るようになるかもしれませんね。

鹿児島で生まれて育ったというよりは、ちょっと住んでたことがあるのよねとか、親戚が住んでるよぐらいの人が読まれたら、ちょっと空気を思い出せる作品かもしれないですね。
あとはお酒覚えたての大学生なども。気軽になんか小説読みたいなって人もぜひぜひ。

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