トランペットを吹きたかった

小学5年生になると。
学校で鼓笛隊の練習がある。

運動会。さんま漁船の見送り。
お祭りの時にパレードを行う。

私はトランペットがかっこいい。
と思い。手を挙げた。

マウスピースを。
上手く吹く事ができて合格したが。

私に渡されたのは。
サビだらけのトランペットだった。

ピストンを押すと。
引っ込んだまま戻らない。

オイルを垂らして使え。
サビも落とせ。と先生に言われた。

私はこの先生に嫌われている。

トランペットの男子は。
私とR君だけだった。
R君もサビだらけのトランペットだった。

女子は綺麗なトランペットだった。


オイルを垂らしても直らなかった。

女子は女子の先輩に。
演奏を教えてもらっていた。

男子の先輩は1人いたけど。
教えてくれなかった。

私とR君は。
その時間をほとんど。
サビ落としに使っていた。


本番のパレードでは。
吹いているフリをしてやり過ごした。

すごく虚しく情けなかった。

ウララ ウララ ウラウラよ。
山本リンダの狙いうちを聴きながら。
ウダウダと歩いていた。

こんなの参加してないのと一緒だ。
こんな事ならリコーダーでよかった。


時折。プーと音を出してみるが。
その音はかき消され。

みんなの演奏の一部に。
なることはなかった。

私の音は世界に響かず。
誰の心にも届かないのだ。


私はどうすれば。
よかったのだろう?

トランペットを諦めて。
リコーダーの練習に参加すれば。
よかったのかもしれない。

いや。パレードの時に。
隊列から飛び出して。
ダンスを踊ればよかったのだ。

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