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棋神を使った過去について 結論は退屈


書き出し

この記事は以下のポストを受けて書かれています。
重要な出来事を風化させないことは歴史学者の義務でもあります。

前語り、将棋を始めた時期

棋神のお話を希望の方は飛ばして次あたりの項目をご覧ください。

さて、私は将棋を遅く始めました。将棋の強い人と違い、子供の頃は一切将棋に触れていません。
将棋に触れた日付がわかっていて、この第二回電王戦の動画を作った時期からです。

これが2013年ごろです。
この動画作成時点ではソフトの予想手の「Uma+」を「馬成」と書いてしまうぐらい将棋には不慣れでした。
本当にルールを学んでいる最中ですね。

ここからなんと3年が経った2016年、そこそこ指せるようになった様子が伺える動画を投稿しています。

動画情報欄に「将棋ウォーズ1級≒将棋倶楽部24の11級(472点)ぐらい」と記載がある通り、この時の私はウォーズ1級まで行ったようです。

棋神を使った時期と感想

さて2013年に将棋を指し始め、そこから4年が経った時期の動画。
この動画ではウォーズ初段になっていますが、
このウォーズ1級→初段の昇段には棋神を使いました。
これは鮮明に覚えています。

さて、これがフィクションなら「他人に強さを自慢したかった」とか、
「負けが込んでいて嫌気がさしていた」とか「将棋大会に出るために初段になる必要があった」とか共感できずとも理解ができる理由があるものです。
しかし現実はもっと退屈な理由です。

私が記憶している限り、棋神を使いはじめたのは「初段になるため」です。
ただここの目的が興味深くて、初段になる理由を私は持っていませんでした。
上記動画情報欄でも初段云々は書いてあるだけで、初段である必要は特に感じていませんでした。
なので「棋神で昇段できるので、好奇心から試した」がもっとも当時の実情を正確に表した表現でしょうか。これがもっと切実なものなら将棋大会でソフト指しをしたりするのでしょうが、私の場合そうした切実さはありませんでした。それゆえ、初段への昇段へも旧Twitterでもこれに触れたツイートがヒットしないぐらいです。

では棋神で昇段する途中の対局ですが、想像以上に作業でした。
自力で指せる部分は自力で指して(だいたい右四間飛車)、中盤に入って難解になると棋神に完全に頼る形になりました。
実のところ、完全に頼るのは予定外の部分がありました。
棋神はあくまで将棋の「補助機能」であり、中盤に2-3回使えば盤面が明解になるかと思っていたのですが、これが逆なのです。
棋神は使えば使うほど盤面が難解になります。

これは全くの予想外で困りました。難解な盤面は当然ながら自力で指すのは大変です。棋神がパッと大駒を切った後、そこから自力で指し継ぐのはまあ難しいお話です。
なので惰性で終盤も棋神に任せることになり、これで棋神の使用回数が増え「棋神による初段昇段」というなんとも不名誉な結果となったのでした。

この時は将棋は我流、すなわち将棋への倫理観-たとえばソフト指しは棋神のように運営に認められていても、好ましくない-を身に着けていなかった、
ブレーキがなかった」というのが起こった結果への説明になるでしょうか。ブレーキがなかったのは金銭感覚についてもそうで、当時は仕事が忙しく-つまり遊ぶ時間がなく-、しかしお金はあるというアンバランスな状態がきっかけではあるのでしょう。
ただし、上記の「惰性で棋神を使った」「好奇心から試した」の文章からわかる通り、「勝たなければいけない」と思った記憶はありません。
感覚はものの整理に似て「ここまで棋神に指させたなら、もう終わりまで棋神に指させた方がいいのでは」という謎の考えがあった記憶はあります。

興味深いのが、初段までの対戦相手の記憶がまったくないことです。
棋神を使ったのだから当たり前ですが、特に相手を意識-たとえば得意戦法-しなくとも勝てます。また、棋神を使えば流石に負けないですし1級-初段間はたしか5-7局ぐらいで昇段した記憶があります。
そして、この間の対局を全く覚えていません。まあ実際私が指したわけでもないので記憶に残らないというのは素直なお話でしょう。

その後、なぜ「ソフト指し」にならなかったか

さて、5-7局と書きましたが、これを全部棋神でやるのはけっこうな量です。たしか棋神多めのパック(6000円ぐらい)を一度買った記憶があります。

で、なぜこれで味を占めて私がソフト指しにならなかったのかと言えば、むしろこの棋神使用でソフト利用が非常に退屈だとわかったというのが理由でしょう。

私は基本序盤に偏重した棋風で、作戦勝ちするのを楽しみとしています。
たとえばこの動画でも「居飛車と見せかけて振り飛車」というやや無理のあるオリジナル定跡を採用しています。

で、棋神をその対局で1度でも使ってしまうとそのまま棋神を継続使用しないといけないぐらい、盤面が荒れます。
なので「棋神を使うと楽しくない」というのが上記昇段で得た私の重要な経験となったのでした。

これで私がもう少し勝ちにこだわる人間ならソフト指しになってしまう可能性もあったでしょうが、上記のような無理のある作戦を採用するような人間です。
ゲーム全般において勝ち負けを重視するいわゆる「ガチ勢」ではなく、ゲーム体験の楽しさを重視する「カジュアル勢」だというのが私の自己認識です。これだと対戦の楽しさが減る棋神は得どころか損です。
このような訳で私はソフト指しを行う優先度が高いどころかマイナスであり、それゆえソフト指しするより変な戦法を採用し続けているのでした。

最近の大会でもソフト解析にかけたらソフトが壊れそうな進行で貴重な1勝を得るなど、過去の棋神使用以降、ソフト検討・研究からも縁遠い存在になってしまいました。

なぜこの記事を書いたのか

将棋を初めて11年、棋神乱用期(初段昇段期)から数えればだいたい7年、
この間、私はウォーズ、クエスト、将棋倶楽部24、81dojo、Lishogiなどの複数のプラットフォームを使用していますが、どのプラットフォームでもBANされていません。
というか、BANされるようなきれいな将棋を指していません。

冒頭で書いたように、初心者向け将棋大会の主催者が将棋大会でソフト指しを行いアカウントを利用停止、しかも81dojoとLishogiの2つのプラットフォームで利用停止を受けたことが2024年5月現在、ネット将棋界隈で問題になっています。

これから「ソフト指しの心理が」とか「ソフト指しはなぜ悪か」というお話も語られだすかもしれません。
しかし利用停止処分を受けるぐらいどっぷり不正を犯した人と、全く不正をしていない人を比較してしまうと物事の理解に「空白」ができると考えました。つまり、その間の人と行為が。

棋神は褒められた行為ではありません。将棋ウォーズ運営から許可を受けている仕組みとはいえ、ユーザーからは嫌われている仕組みです。
だからこそ、利用停止処分こそ受けないが忌み嫌われている行為を語る必要を感じました。
実際、私と利用停止処分を受けた人々、すなわち大会で不正をした人々と、将棋ウォーズに「許された範囲」で”不正”を犯した私がどう違うのか、私自身興味深いのです。

利用停止処分を受けた人はこの記事のように自身の行為を書けないでしょう。まず謝罪から語りは始まり、どこで不正をしたのか追及を受け、今後どのように不正行為を防止するのか説明する必要があるでしょう。

他方、私の不正は釈明不要なものです。
嫌われているとはいえ将棋ウォーズというプラットフォームでは認められている行為です。
ですから私は-私の評判を損なう点を除けば-ただただ事実を述べることができます。「問題」の理解と解決に必要なのは正確な情報であって、釈明ではありません。
他方、すでに書いたように利用停止処分を受けた人々が釈明もなしに自身の不正行為について話しだしたなら、私でさえ驚きます。
それは「許されていない行為」なのです。

「先ず隗より始めよ」という格言があります。
由来はぜひ調べていただくとして、

大事業をするには、まず身近なことから始めよ。また、物事は言い出した者から始めよということ。

という意味なのだそうです。
あるいは聖書には

なぜ、兄弟の目にあるちりを見ながら、自分の目にある梁を認めないのか。
自分の目には梁があるのに、どうして兄弟にむかって、あなたの目からちりを取らせてください、と言えようか。
偽善者よ、まず自分の目から梁を取りのけるがよい。そうすれば、はっきり見えるようになって、兄弟の目からちりを取りのけることができるだろう。

口語訳聖書、マタイによる福音書7:1から

という言葉もあります。

私はソフト指しが罰せられることはもちろん、ソフト指しをする人が二度とソフト指しをしないことを期待します。そして、再発防止策には情報と理解が必要です(共感は必須ではありません)。
「あれは怪物だ、我々と別世界の人間だ」という”理解”は再発防止策から最も遠い”理解”です。
この場合の対策は「ソフト指しに二度と将棋を指させないこと」ですが、現実にそれは困難です。
一番めんどくさいのが別のアカウントを作ったり名前を変えて不正を行う場合です。
それならもしもですが、ある利用停止処分を受けた人がどういう「支援」や「理解」が必要なのか、少しは想像できる資料が必要です。

誤解のないように書いておきますが、利用停止処分を受けた人に「優しくしてほしい」とか、ましてや「制裁を軽くせよ」とは私は思っていませんし書いてもいません。
利用停止処分を受けた人が制裁を受けるのは当然であり、むしろそうでなければいけません。
そういう「状況」を知っているからこそ、私のつまらない告白が必要なのです。不正をした人が饒舌に語るのは-饒舌でなくとも-困難です。
だから私が不正の何割かを想像できる文章を書く必要があります。

希望

私が希望するのは「実際にソフト指しを減らすこと」です。
この目的は2つの方法で達成可能です。
ひとつは、ソフト指しをした人間を永久に追放すること。
-この方法の問題は別アカウント作成を防止できないこと-
もうひとつが、ソフト指しを「更生」させることです。
-この方法の問題点はそれが可能かわからないことです-

前者の取り組みは今後十分になされることでしょう。
現状、ようやく利用停止処分者が注目されているぐらいです。
しかしソフト指しを減らし、ソフト指しの被害に遭う人を減らすには1つ目の方法と同じように2つ目の方法も重要ではあります。
-ただし、それが可能であればですが-

可能不可能の問題はやってみなければわかりません。
しかし私の評判を多少犠牲にするぐらいで可能性が生まれるなら面白いことだと思いませんか?