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ハッピーバースディ、ゴダール!

映画部の宮嶋です。

ジャン=リュック・ゴダール監督。フランス・ヌーヴェルヴァーグを代表する大巨匠、本日12月3日がお誕生日なのです!おめでとうございます。

なんと御年90歳…!2年前、88歳の時にも新作を発表されていて、その力強さとクリエイティビティには驚くばかり。

映画史を学んだことのある人や、名作映画をしっかりご覧になっているかた、そしてフランス映画ファンのかたなら、もちろん一度はゴダール監督作品は通ってきたはず。なのですが、なにせ私はミーハー映画道をふらりふらりと歩いてきたクチでして(U-NEXTにはちゃんと体系的に映画を学んできたメンバーもちゃんといますよ!)、実はゴダール、ちゃんと観たことがなく…というよりも、背伸びしたがりの10代の頃にチャレンジしてうっかり眠りの沼に落ちてしまったという過去があり、それ以来疎遠になってしまっておりました。

が!このたび、彼の代表作を配信できることになり、ちょこちょことゴダール作品、観始めております。

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勝手にしやがれ』(1959年)

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気狂いピエロ』(1965)

知りませんでした…ゴダール作品、こんなにぶっ飛んでるなんて…いや、いい意味で!!

まず、主人公たちが悪すぎる!(笑)しかも、次にやらかすのかまったく予測不能だし、やっていることの悪さや重さに対して映像そのものから受ける印象がカラッと軽やかでそのギャップに翻弄されるし、でもこのキャラクターたち、悪党ばかりなのに本当にキュート。映像としても1カット1カットが本当に洗練されていて、テンポも良い。画面デザインが最高に美しく、ストーリーを追うというよりも、ただただずっと観ていたいくらい。

この2作品のほかにもブリジット・バルドーの引力がすごい『軽蔑』や、当時のパリのユース・カルチャーが興味深すぎる『男性・女性』、それにキャリア中・後期の政治色の強い作品も配信しているのですが、個人的には、初めてご覧になるならダントツで『気狂いピエロ』がおススメです。

軽快なテンポも、南仏のあざやかな色彩感覚も、そしてヒロインのアンナ・カリーナのコケティッシュぶりも、びっくり仰天のラストシーンも、そして、実は「シナリオが存在しない(アドリブで構成)」という制作過程も…すべてがキレッキレです。さすが、フランス・ヌーヴェルヴァーグ映画の代表作…!

ところで、「ヌーヴェルヴァーグ」ってよく聞くけど何?という話なんですが、つまりは"ニュー・ウェーブ"、新しい波っていうことだそうです。

それまでの映画の常識を捨てて、若い映像作家たちが自由に映画作りをしはじめた、それが1960年代のフランス・ヌーヴェルヴァーグ。テンプレ化されたストーリーやお決まりの演出ではなく、若い才能が作家性を炸裂させた作品たち。実は『俺たちに明日はない』などに代表される「アメリカン・ニューシネマ」という潮流も、この影響を受けたムーブメントなのだそうです。

なるほどなるほど。どうりで自由で形式ばらないわけです。そして、撮っている人(ゴダールご本人)も思い切り楽しんでいたんだろうなぁ、と思わせるところがあるんですね。そこが、観ていて一番心躍るところなのかもしれません。

そんな"ヌーヴェルヴァーグ"作品としてのゴダールの魅力に加えて、強くお伝えしたい見どころが、ヒロインたちのファッション!

こちらは『勝手にしやがれ』のヒロイン、ジーン・セバーグ。

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パリに住んでいるアメリカ娘、というキャラクターなのですが、ボーダーシャツやストライプのワンピースなどフレンチカジュアルを着こなしていました。作品がモノクロなので、色を想像するのも楽しい!

そしてこちらは『気狂いピエロ』から、アンナ・カリーナ。

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人を殺して逃避行中とは思えない愛らしいスタイリングばかり!リアリティなど差し置いてファッションチェックに夢中になってしまいます。ピンクのワンピースでザブザブと川を渡り、たまたま出会ったアメリカ軍人から盗みを働くシーンではミリタリーファッション。一度捨てた男と波止場で再開するときはマリンな帽子。

そうえいば、劇中で、長引く逃亡生活に嫌気がさしたヒロインが「もうウンザリ!いつも同じ服だし!」というセリフがあって、「おぉぉ?今なんと?!笑」ってなりましたが、これもアンナ・カリーナのアドリブだったということですね。あえての逆説的なウィットとユーモアがナイス!

衣装のみならず、美術にもゴダールの持つフランスのエスプリがたっぷりです。

「フランス映画って、ちょっと理屈っぽいのが苦手で…」というかたにこそ、このぶっ飛んだ(繰り返しますがいい意味で!)、そしておしゃれでキュートで、果てしなく自由なゴダール・ワールドを味わってみて頂きたいなーなんて、ゴダール初心者のくせに、思ってしまっている次第です。


▼U-NEXTで観られるジャン=リュック・ゴダール作品はこちらhttps://video.unext.jp/browse/feature/FET0009763



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