ウォッチメン・ブルース

しかし、誰が見張りを見張るのか? ――使い古された警句

「昨夜の事案は凄かったな、魔界のかなりの大物が出張って来るとは思わなかったよ」
「なんとか異能者が追い返すことに成功したが目撃者の記憶処理措置で時間食ってしまい昨夜は役所で泊まり込みとは思わなかったよ」
 昨夜の大事件でわが役所は早朝近くまで対応に追われていた。まったく我が町の近所に魔界のゲートが安置されていると面倒なことばかりだ。
 これが普段はホワイトそのものなのに有事になるとブラック企業になる我が仕事場。その名も国家異能管理委員会という。

 俺はこの職場に親のコネで入社したぺーぺー社員だ。俺の異能の理解度は少年漫画程度しかないので初めの頃はついていくことで精いっぱいだった。それでも半年過ぎればこの職場風土に慣れてきた矢先にこれだから大変である。今までがは小事件程度だったのが突然の大事件の勃発である。俺たち管理委員会のメンバーが必死で被害を最小限に食い止めようとしながらも異能者はバンバン戦うから大変よ。それで、目撃者が100人ほど増えてしまった。まったく平和な日常を守るのも大変だぜ。
 そんなこんなで一仕事を終えた俺は少し仮眠をとってから帰宅する算段をつけていた。上司もその辺は心得ているもんで仮眠室は使い放題である。俺はひと眠りをするために更衣室でスーツを脱いで短パンTシャツのカジュアルな恰好に着替え、仮眠室の布団にくるまった。昨夜の疲れもあってすぐに俺は眠りについた。zzz……

「大変です! 駅で封印が解けたのか妖怪が暴れています! 異能者がすぐ現場に向かっていますが目撃者が1000人ぐらいいて大変な事態になりそうです!」

 まったくいいことは続かなかった。悪魔の次は妖怪である。陰陽師は一体何をやっているんだ。俺は仮眠明けの眠たい身体を無理やり動かして、事態の推移を見守るべく現場に向かうのであった。

【つづく】

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