免疫(38)-アレルゲンに対する免疫応答1-

細菌・ウイルスときましたので、スギ花粉などを含めたアレルゲンに対する免疫応答について調べてみたいと思う。

引用文献:侯波ほか アレルギー性鼻炎における舌下免疫療法の奏功機序 耳鼻免疫アレルギー 2015;33(4):209-213

この文献では、杉花粉による花粉症に対して、舌下免疫療法が行われていることから、その奏功機序について論じている。

他のアレルゲンも同様の機序をとるとおもわれるため、この文献を参考にしてみる。

アレルゲンと免疫

図1 抗原特異的免疫療法の機序とアレルギー疾患における制御性T細胞

この図の解説として、

抗原は局所の樹状細胞に取り込まれ、制御性T細胞が誘導される。

これらの細胞にはアレルギー反応を直接あるいは間接的に抑制する機序があるとされている。

1.肥満細胞、好塩基細胞、好酸球の抑制

2.エフェクターT細胞(例 Th2細胞)の抑制

3.炎症性樹状細胞の抑制と寛容原性樹状細胞の誘導

4.抗原特異的IgEの抑制とB細胞からのIgG4の誘導

があるとしている。

粘膜樹状細胞は、アレルギー性疾患の免疫療法において免疫寛容の誘導に重要な役割を演ずる。

樹状細胞は抗原を取り込む特殊な抗原提示細胞であり、主要組織抗原複合体を介してT細胞反応を引き起こす。

休止期のランゲルハンス細胞は未熟な樹状細胞であり、ラケットの形をしたBirbeck顆粒を含み、Birbeck顆粒関連C型レクチンのlangerin(CD207)、ケモカイン受容体CCR6、CD1aなどの表面マーカーを発現する。

ランゲルハンス細胞は表面にIgE受容体を発現する。

ランゲルハンス細胞は、上皮のバリアーを15~30分で通過することができ、CD207を介してあるいはアレルゲン特異的IgEを介して、30~60分以内にアレルゲンを取り込み、局所リンパ節に移動する。

これらの局所リンパ節はIgG遮断抗体を産生し、抑制機能を持ったT細胞を誘導する。

ランゲルハンス細胞は成熟すると、細胞表面のCD83とCCR7を増加させる一方、免疫グロブリン受容体とCCR6を減少させる。

樹状細胞のリンパ管への流入はCCR7の発現に依存する。

CCR7の発現は樹状細胞を活性化する刺激により誘導される。

ランゲルハンス細胞以外のmDCサブセットは成熟過程において免疫寛容を獲得する。

IL-10を産生する制御性T細胞は非増殖性であり、未熟な樹状細胞により活性化される。

mDCsは成熟の過程においてMHCクラスⅡ分子とB7分子を高発現し、IL-10の産生により制御性T細胞を誘導すると思われる。

この過程が、舌下免疫療法の奏効機序に関わっていると思われる。

つまり、免疫寛容の獲得、いいかえれば自己への攻撃の解除である。


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