小説『ヴァルキーザ』第7章(3)

国王エルタンファレスⅦ世は、初見の挨拶の辞を述べられた後、謁見の間で最敬礼するグラファーンたちに、優しく、ねぎらいのお言葉をかけられた。

「ここで十分にお休みになって、旅の疲れをお取りになって下さい」

ご厚意を賜わったことへのお礼と、王国の司祭アム=ガルンにキルカの技を解いてもらったことへのお礼を、グラファーンたちが丁寧に口上すると、国王は満足されたご様子だった。そして国王は、共に列席されている王族の方々を紹介して下さった。

「国王妃殿下フィリス様、皇太子殿下レオン様、皇太子妃殿下リエル様」

衛士のライクスが、王族の名前を読み上げる。

グラファーンたちは丁寧にお辞儀をした。
宮廷の儀礼に従い、王族の方々もグラファーンたちに答礼をする。

組合を代表してグラファーンが奏上する。

「エルタンファレス陛下、フィリス殿下、レオン殿下、リエル殿下に、ご拝顔の光栄に浴することの慶びを、一同を代表して、ここに謹んで申し上げます」

拝謁式はつつがなく進み、次に宮臣たちが紹介される。

「侍従長スタルファン、神官長アズワイア、評議会議長ワーガス、宰相フルーゼル、外務大臣トリスティ、財務大臣リウム、防衛大臣フェゼット、親衛隊長レッド」

グラファーンたちは、宮廷の大臣たちに次々と丁寧な礼をし、宮臣たちもグラファーンたちに答礼をした。

宮臣を代表して、宰相フルーゼルが述べる。

「組合の諸君のしばしの間の王国への滞在を、われわれ一堂は、そろって歓迎致します」

フルーゼル宰相の、この「しばしの間の王国への滞在」という言葉には、れっきとした意味があった。

拝謁の事前に、ユニオン・シップはライクスに連れられて、王城内の宿所で宮廷の関係者から相談を受け、いま王国を悩ませており、王国が取締りの対象としている、ある魔女にアム=ガルンと共同で対処してほしいと言われていたのである。

「キルカよりの仕打ち」から回復させてもらったグラファーンたち財宝探索者組合ユニオン・シップは、お礼にそれを引き受け、その準備のため、王国への滞在を許可されていた。

問題の魔女スタンレーは、都の遠い外に館を造り、そこで周辺の人々をさらって、自らの魔法の実験台にしているという。ライクスによれば、イリスタリア王国はもともと、女性のメディアス(魔法使い)、つまり魔女の存在を禁止しており、魔法を使った女性は、処罰の対象となるとのことだった。

王国は、グラファーンが、初級者だが「メディアス(魔法使い)」だったので、セレニス(奇跡・白魔法)を使えるアム=ガルンと共に、スタンレーの館の捜査にさし向け、彼女を二人の魔力でもって斥ければ、彼女の忌まわしい魔術を止めさせられると考えたのだ。






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