#アドベントリレー小説 24日目

「アドベントリレー小説」とは、25人の筆者がリレー形式で
1つの小説を紡いでいく企画です。
ここまでの物語と企画の詳細は↓から
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「……さて。本当にこれでよかったのかい、ちひろは」

 ひろしが研究所を出てからしばらくして、タイチが確認する。

「うん。これでいいの。だってひろしくんは全部気付いたと思うから。真紅のドレスの正体もね」

 ちひろが消滅していないのであれば、過去のループで彼女はどこにいたのか。なぜ、緋色のヒーローではないカナコが炎心<ヒート オブ ハート>を発現できたのか。二つの疑問は、ある一つの解で収束していた。

 物体への意識固定化。

 『疫病』へと立ち向かう際、ちひろは自身の肉体を焼き尽くした訳ではない。自身の肉体を捨てて真紅のドレスへと、意識の器を移動させていたのだ。

「ひろしくんより後に被曝した私じゃ、恐怖の大王<テリブル- ロック クロック>の破壊に干渉することはできない。でも、原初の蒼時硝<ブルー サンド グラス> ─── 火蒼玉<ザファイア>で被曝すれば、ひろしくんと同じタイミングで被曝したことになる」

「そうすれば、ひろしと一緒に恐怖の大王<テリブル- ロック クロック>に立ち向かえる人材を用意できるって訳だ。その瞬間のために、一般人のカナコが炎心<ヒート オブ ハート>を発現できるよう、ドレスの中から影響を与え続けてきた」

「うん。そして、ひろしくんはさっき分かったはず。恐炎中<インサイドレッド>の本当の力についても……このループでやるべきことも」

 そう、恐炎中<インサイドレッド>は、本質的には世界をループする能力ではない。
 蒼時硝<ブルー サンド グラス>が燃え尽きる際に生じる陽炎の歪み<フレイムレート>。これによって、「意識通りに動くことができた」と、世界の観測を捻じ曲げて誤認させる、次元干渉能力である。

 観測者に見せる陽炎の歪み<フレイムレート>が大きいほど、観測に対して多大な影響をもたらす。それが恐怖の大王<テリブル- ロック クロック>を燃やし尽くして生まれるサイズならば……望むままに世界を書き換えることだってできるはずだ。

「となれば、あとは祈るしかないね。ひろしが世界のすべてを書き換えて、ハッピーエンドに辿り着くことを……」


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渋谷、20時、ハチ公前。
空の果てに恐怖をもたらす流星が瞬く中。

渋谷が青で塗りつぶされていた、あの日と同じように。

カナコの意識は、そこにいた。

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