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ガイドトレーニング

先日のこと。
宮城県の牡鹿半島からなかのカヤックのなかのさんが、八戸までトレーラーを引き取りにに来る(来年度から果たして荒稼ぎ、となるのか!?)、との連絡を受け、じゃあトレーニングでもしましょうか!ということになり2日間のトレーニングを行った。

だいたいなかのさんと行くカヤッキングは、トレーニング日和とはいいがたい。でもたまに痛い目にも合う。中野さんじゃなくて私が(笑)。
高気圧を連れてくる紅一点、上から読んでも下から読んでも「なかのかな」でおなじみのなかのカヤックなかの社長。

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1日目。種差海岸を漕ぐ。1日目については、天気的には停滞前線がのっているが、温暖前線の方だったので特に荒れる、ということもなかったがそれなりの不安定さは感じた。生活圏とも近い海であり、エスケープポイントも頭に入っているので問題ないだろう。なかのさんリーダー頼みますわ!私はこのへん地元ですから!という自己中ぶりを発揮し、中野さんに任せました!どこまでもいきますよ!的な感じになり、観光カヤッキングになった。知っているところって良くないですね(笑)。
ただの楽しくて気持ちいいカヤッキング。
帰路は少し南東の風に煽られ、白波も経ち始めていた。しかし、追い風ってのは好きじゃない。

地元の海なのにあまり漕ぐ機会がないが、意外と面白い海だ。

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北三陸ほどのフィールドの迫力はないにしろ、なにしろ陸の標高が低い海は、景色がいいし安心感がある。何よりも海が開けている。
ゴール地点まで戻ってきては最後の〆にロールを確認し、1日目は終了。動画で見ると一連の動きがわかるが、静止画はちょっと心配になる。
大丈夫?生きてる?大丈夫。この後ヌルっと起き上がります。

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2人だけだとなんだかピリッとしないな。と思っていたところに。
翌日2日目は八戸のアウトドアショップ兼ガイドでもあるRIVERRRUNS・戸川さんも参戦。

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2日目のお題は、「ラフウォーターでのロールとレスキュー」。
こうやって課題が決まると身が入る。前日の反省と言えば。テーマもなければ計画もない、というところ(笑)。せっかくトレーニングするのであれば、しっかりテーマを持った方がいい。毎度のことながら身に染みます。(笑)
少し荒れているエリアへ移動し、静水域ではない場所でのロールの確認。できた、出来ないはあるにしろ、各々の動きのアドバイスをもらいながら小一時間ほど回った。

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水温は14度前後。しかしこの時期ではかなり珍しく高い気温、20度前後。
濡れても起き上がれば温かい。
その後は、また少し移動をし、岩場付近でのロール。そして失敗した場合にレスキューの実践。なかなか、緊張感が出てくる。どの方向から風、波が来ているのか。人と船とパドルが別々になった場合に、今の状況でどのような判断をするのか。そして、どんなレスキューが適しているのか。レスキューの三原則、シンプル、スピード、セーフティの3Sを軸に考えなければならない。
しかし、今回はトレーニングでもあるためにどんな手段が考えられるのか、ということも実践させてもらった。

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さあ、ということで私の番だ。
シチュエーションは、ロール失敗して、沈脱。

あれ、なかのさんちょっと岩場に寄りすぎじゃない?

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ぶっこみすぎじゃない??
うそでしょ?
もうちょっと岩場から離れた方良くないすか?
きゃー!!

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あとから聞いた話だが、このぐらい余裕でしょ、と思って・・・とのこと、北山崎のときといい、きっと私はガイドとしての資質を試されているのだろう。(笑) いつもありがとうございます、社長!

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いつもいつも、なかの社長からは「漢たるもの大胆であれ」的な姿勢を学ばせてもらっています。私がぶっこみすぎじゃない?って思うところは、きっと社長にとってこのぐらい余裕でしょ?っていう感覚なのだ(笑)

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話は真面目に戻り、私は岩場でひっくり返ったなかのさんを、まずはカヤックはトゥーラインでけん引し、人はガイド艇のスターンにつかまってもらう、そしてまずはこの岩場から逃げる、という方法。
はっきりと分かったことと言えば、自分の船に人が捕まる、捕まってもらう、というのはよほどの信頼関係がなければ実施できない、と感じたのがひとつ。けん引時、あまりにも自分のカヤックが不安定であった。これでは、自分がひっくり返ってしまう可能性もある。これは、シンプルではない。

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もう少しガイド艇にボリュームがあればまた違ったのかもしれないが、まずはレスキューする者のカヤックに救助者を捕まらせるのは危険度は上がる、ということは頭に入れておきたい。
そして、トゥーイングからの水抜き作業に移るときに一度、トゥーラインを外す必要があること。荒れた海域でこの動作は手間になるしロープの収納まで考えると少なからずロスがある。

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実際に私もロープを外さずにレスキュー動作に入ってしまい、あれ?カヤックの向きが変えられない?となってしまった。
このレスキューをやるにしても、自分の中で手順は整えてイメージしておくべきだったと反省。この時期のレスキューは、1秒でも早く水の中から引き上げねばならない。そして、その選択肢は多い方がいい。
これからの時期、グローブをして滑らないものか、はたまたしっかりカヤックを掴めるほど指は機能するか。冬の海は、怖い。

そんなこんなでラフウォーターでのロール、レスキューと無事2時間漕ぎ終える。充実感あれども、この時期の濡れ物トレーニングは身体がクタクタになる。

なんで、ガイドにとってトレーニングが必要なんだろうと考えたことがある。簡単に話せば、私たちが活動する海で、無理とか無理じゃないとかじゃなくて、ガイドとしてその喜びと怖さは知っておく必要がある、と思っている。
今回のような状況にゲストを連れていくことはまずない。しかし、どこかでその判断を間違えるかもしれない。ただ、そうなったときにセーフティネットとなって事故を防げるかどうかは、日々しっかりトレーニングを積んでいたかどうか、と教わった。
そのようなことを想う場面は、今までも少なからずあった。
人の手のみで海と真剣に向き合うなんてなかなか粋な世界だ。
日々研鑽、日々精進。
簡単な言葉ではあるけれども、そんな簡単なもんでもなく。
そういう生き方をする人たちに惚れて、この業界に足を踏み込んだんだよなあとしみじみ。なんでもそうかもしれないが、アウトドアガイドっていう仕事は、仕事、っていうよりかは生き方なんじゃないのかなあとぼんやり思う。

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冬の渡り鳥でもあるシノリガモ。つがいで人気のないところにこっそりと訪れていた。水温も徐々に下がり、気が付けば冬の入り口。蕪島にウミネコが戻ってくる日もそう遠くない。

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