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ひみつの日記

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2018年1月の記事一覧

書評『バラカ』

書評『バラカ』

・初出2016「文藝」
・分厚いけど一気読みできる
・ポリティカルなSF

日本文学を「復興」する 圧倒的である。ハードカバーで650頁というのは決して短くはない。それなのに気づくと読み終えていた。「一気読みでした!」と笑顔でおすすめできるような、気楽な本ではない。暗鬱で不愉快で読者に違和感と落ち着きのなさを与える挑発的な小説だ。

 震災で原発が爆発し、首都が大阪に移った日本。警戒区域で「バラカ

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2018/01/26~28 熊日文学賞を受賞、そのときめろん先生は……

2018/01/26~28 熊日文学賞を受賞、そのときめろん先生は……

・熊日文学賞受賞、そのときめろん先生は……
・TBSラジオ文化系トークラジオLifeのイベントがあった

2018/01/26
夕方に熊本日日新聞の記者さんから電話。
前にエッセイなどでお世話になっているので、なにか仕事かと思い電話をとる。

「あのですね。いま選考会が終わりまして」
「えっ? 選考会?」
「『キッズファイヤー・ドットコム』が熊日文学賞に選ばれました」
「……え?? ていうかいつ候

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書評『友は野末に』

書評『友は野末に』

・初出2015「宝島」
・色川武大も阿佐田哲也も同じ人だけどどっちも知らない人は知らない

 何年ぶりだろうか。こないだ神奈川のとある古い雀荘で麻雀を打った。最近つるんでいる男が博打でメシを食っている人間なので、すこしばかり勉強させてもらおうと技術指導してもらいつつ同じ卓を囲んだ。煙草で汚れた壁、ボロボロの雀卓。穴の空いた椅子。怪しげな客たち……十代の頃にしばらく働いていた場末のポーカー屋を思い出

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書評『デブを捨てに』

書評『デブを捨てに』

・初出2015年「宝島」
・装丁の絵がサイコー
・いつもの平山さんです

 人はなぜホラー映画を見るのだろう。
 恐怖という感情はどちらかというと喜ばしいものではない。にもかかわらず、わざわざ怖いものを見る。遊園地しかり、コントロールされた恐怖というのは一種の娯楽だ。
 平山夢明を読むとき、ぼくはこの後者の恐怖を求めている。
 しかし……今回の作品は恐怖を通り越して完全に笑いの境地に達した。
 タ

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2018/01/22~25 さむすぎる今週

2018/01/22~25 さむすぎる今週

2018/01/22
雪ですべての予定がなくなる。
寒すぎる。マジで寒すぎる……。

家こんなかんじになってた。

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書評『僕は愛を証明しようと思う』

書評『僕は愛を証明しようと思う』

・初出2015「宝島」
・デートDVやないかという女子からのツッコミがよくある

 スタティカル・アービトラージ戦略、タイムコンソトレイントメソッド、フェーズシフトルーティーン……この単語は金融用語でも格ゲーの技名でもない、「恋愛工学」のテクニックである。
 恋愛工学となにか?
 それは男の欲望を実現するための秘密のテクノロジー……要するにナンパ理論だ。本書はそのテクニックを使って、一人の男が人生

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書評『勉強の哲学』

書評『勉強の哲学』

・初出2017「新潮」
・案外なかった勉強についての哲学本
・自己啓発っぽい要素もあって固すぎないバランスの良さ
・大ヒットしてメイキングオブ『勉強の哲学』も出版

 先日、とある有名な女優さんと食事したときのこと。
 同席していた彼女の友人が、「ぼくはいろいろなことがやりたいんです。でもひとつに決めるべきなんでしょうか」という相談を彼女にしはじめた。彼は元芸人で役者で脚本家で、そうした中途半端な

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書評『生まれた時からアルデンテ』

書評『生まれた時からアルデンテ』

・初出2014「TVブロス」

 生まれた時からアルデンテ、である。タイトルから漂うハイセンスオーラに、私の卑屈カウンターが警告を発する。はい、ここからはオサレな人以外は入らないでくださーい。おい、そこのおまえ! ひいい! お許しを! 百円で買った変なロゴ入り靴下を消毒だーヒャッハー! ギギギ!(焼死)。
 オサレボーイしか生き残れない脳内オサレ世紀末で、俺が死んだ。

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2018/01/19~21 お金ルポはじまる

2018/01/19~21 お金ルポはじまる

2018/01/19

お金ルポの取材初日。
まずは昼に貨幣博物館を1時間ほど見て回る。

いまの日本銀行があるあたりは金座と呼ばれていたらしい。あ、銀座ってそういうことにはじめて気づく。
なるほどなるほど、いろいろと気づきがある。

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書評『人はアンドロイドになるために』

書評『人はアンドロイドになるために』

・初出2017年「ちくま」
・石黒先生と飯田さんの共著、非常にSF色が強い
・アシモフの『われはロボット』のオマージュを匂わせる構成

 使い古され手垢にまみれた言葉が、まるで初めて聞く珍しい言葉のように思える瞬間がある。例えばそれは、優れた文学者や詩人たちが既存の単語と単語を組み合わせ、錬金術のように作り出したフレーズに触れたとき、あるいは、言葉を覚えたての子供と、意味の通じない奇妙な会話を交わ

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書評『ファイナルガール』

書評『ファイナルガール』

悪のファイナルアンサーファイナルガール――それはアメリカの批評家Carol J.Cloverが『男性、女性、そしてチェーンソー:モダンホラー映画におけるジェンダー(Men, Women, and Chainsaws: Gender in the Modern Horror Film)』で作り出した用語であり、主にスリラーやホラー映画で、最後にひとり生き残る女性のことをさす。彼は、ジェンダー論的な視

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書評『玩物双紙』

書評『玩物双紙』

・初出2013年「宝島」書評

 時代小説と歴史小説の違いをご存知だろうか。
 時代小説は、主に江戸時代を舞台に書かれた小説のことで、歴史小説は史実にもとづいて創作された小説のことである。僕はあえてこの二つのジャンルを読まないようにして生きてきた。理由は、ハマるとキリがなさそうだからである。岡本綺堂、池波正太郎、山本周五郎、司馬遼太郎、柴田錬三郎、名だたる有名作家がひしめくこのジャンルは、一歩足を

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熊本と東京で意識のかんじがちがうのはなぜなんだろう

熊本と東京で意識のかんじがちがうのはなぜなんだろう

■2018/01/12

図書館へ本を返しに行く。
それ以外とくになにもない日。

と、書いて「ああ……こういうのがまずいんだな」と考え直す。

「今日はほんとになにもなかった。無意味だった。消化試合だった」

そう思う日が多くなるのは、心が閉じてきている証拠じゃないだろうか。
とはいえ、毎日解像度をあげてあらゆる情報を細かく見るというのも疲れるわけで、このくらいの日があってもいいんじゃないだろう

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