Panama🇵🇦レポート

最後にパナマを訪れたのは2009年、今は亡き親父との2人旅だった。
約10年に渡るシルクドゥソレイユでのワールドツアーを離れ、今年から新しい道に進んだのを機に一度原点に立ち返ってみようと思ったのと、私が15年前にしていた仕事を若い協力隊員がしていると聞き、パナマがどう変わったのか（変わっていないのか）、彼の成長、経験や葛藤を聞いてみたいと思った。

パナマに着いてみての第一印象は、それほど変わってないなという感じがした。

空港へ着いて、懐かしい出口を抜け、昔の教え子がわざわざ空港まで迎えに来てくれた。10年も経っているのに彼の見た目は全く変わっていなかったが、代わりに中国系の可愛い奥さんを連れていた。

そのままパナマの伝統料理が食べられるレストランへ連れて行ってくれた。値段はメイン料理が20ドル前後（パナマではUSドルを採用）と決して安いとは言えない。１週間の滞在中他の様々なレストランでも食事をしたが、外食は日本とそれほど変わらない値段になっている。

私が働いていた2004年〜06年のころは、旬の時期になれば大きなパイナップルが１個50セント、マンゴーもその辺の木になっているので取って食べることも可能だったから、主食のように毎日果物を食べていた身からすると、ちょっと高いなと感じた。

だが、タクシーや公共交通機関は未だに安い。以前は走っていなかった地下鉄が25セントで乗れる。当時は赤い悪魔と呼ばれる超乱暴運転な暴走公共バスが25セントで乗れたが、綺麗で渋滞のない地下鉄が25セントは日本人からしたら破格だ。タクシー（私はUberを使用)も日本の4分の1ほどの値段で乗れる。

（これは以前走っていた赤い悪魔と呼ばれる暴走公共バスの参考写真。私はジェットコースターに乗っているようで意外と好きだった。爆音で音楽も鳴らしている。同期の隊員は一度バスの横転事故に巻き込まれた）

ホテルもあちこち泊まり歩いたが、発展途上国らしい整備の行き届いていない点はちらほら見られた。（エレベーターが動かなかったり、ジムのルームランナーのスピードが安定しなかったり、部屋の電気がところどころつかなかったり、プールもあるだけで入れなかったり、と挙げるとキリが無いw）そんなのを見ると懐かしくて笑ってしまうが、それでも清潔さについては以前より良くなっている気がする。昔はベッドの質も悪かったし、寝るとなんだかむず痒さを感じることもあった記憶があるが、今回はそんなことはなかった。

ただ、パナマ市内中心部にある湾岸沿いは相変わらず汚かった。ゴミも大量に廃棄されたまま。それでも日本企業が協力して海の汚水を綺麗にする活動の成果のおかげか、以前よりは悪臭が改善されたと現地の方から話を聞けた。パナマ市内の湾岸部は海水浴ができないほど汚れている。

（まだまだ悪臭のする汚れた湾岸沿いと近代的な高層ビル群）

首都の治安はというと悪くはないが、気をつけていても強盗などに巻き込まれるケースもあるようだ。知人の日本人の男性は首都のショッピングモール付近で奥さんやお子さんがいるときに拳銃強盗に遭ったと話してくれた。幸いお金さえ渡せば何もしなかったとのこと。

現地パナマ人でさえ危ない（という思い込みの方が強い）から行くことがない、カリブ海側の都市コロンにも行ってきた。協力隊員は立ち入りが禁止されてもいる地域。Tax Freeなので多くの商人が買い付けをしている。昔の教え子たちがその街に住んでいるので会いに行ってきた。

驚いたのは、政府が貧困者層に新たに集合住宅を建設し、移住させ、病院や学校なども建て替え、以前は緊張感のある雰囲気を醸し出していた地域から住人をそちらへ移しだし、危険だった地域には現在あまり人が住んでいなかった。

人間は生活環境が良くなると心も落ち着くのか、以前のようないつ犯罪が起きてもおかしくないようなムードは無くなっていた。

それに以前牛耳っていたマフィアが解散し、今ではアラブ系の富裕層も大量に移住し始めビジネスをしていて、教え子の一人はアラブ系の広く厳重な敷地内にある学校で体育を教えている。

そのためか、アラブ系がかなり街に投資もしていて、大きくて綺麗な公園があり子供達が安全に遊べる場もある。この地域はこれから発展しそうな兆しがある。

それでも未だに犯罪率が高いのは事実だ。地元民である教え子の家でさえも夜中寝ているときに強盗に入られてTVなどの電化製品を盗まれたらしい。命までは取られなくて良かった。

もう一人、私の記憶によく残っていて心配していたChonという青年がいる。彼もそのコロン出身で超がつく異端児だった。彼がパナマ市内にある体育館での合宿中にコロン出身だからという理由で警察官に補導され、態度が悪いからと留置場に入れられたが、私が保釈金を払って出してあげたこともあったし（当時は私もボランティアという立場だったので貧乏生活だったのに！）、コロンの街で起きたギャング同士の銃撃戦の流れ弾にあたり、流れ弾だったせいか貫通せず、ふくらはぎに留まってしまった。保険にも入っていなかったので病院にも行けず、１週間ほど弾が入ったまま歩いていた。そんな状態で歩けるChonもすごいんだがw

食べ物を盗んだり、人に迷惑をかけたり、ホームレスもしていたような彼が今では更生し、TVタレントとして活躍。インスタグラムのファロワー数も多く、広告などでも収入を得ている。そして実際に会って話してみると、以前のような突っ張っていた面影はなく、良識ある考えを持っていた。

あんな状態から自らの力で抜け出し、成長した彼に心から嬉しくなった。

協力隊員としてパナマで体操競技の指導活動をしている20代前半の隊員とも話すことができた。当時は自分も同じような歳だったなぁと。彼の悩みやパナマ国内の問題などは、私が活動していた15年前と変わっていなかった。やはり人や国が変わるのはそう容易なことではないのだなとつくづく実感させられた。それでも関わることで、迷い葛藤することで自分自身が成長できたこともあったし、彼もその葛藤の中でたくましくなっていた。

たった１週間ではあったが、久しぶりに途上国を肌で感じ、心地よさも感じた反面、当時の若い時ほどの高揚感は戻ってこなかったことは自分の中で少し残念な気持ちもした。

15年も前のことなのに、当時関わった多くの人たちが未だに思い出を共有し、楽しかった思い出話をしてくれるのは嬉しかった。教え子の中の何人もがそのまま体操に興味を持ち続け、勉強し、コーチになったり、国際審判の資格を取って国際大会や世界選手権、オリンピックの審判をしたり、当時まだ低学年だった女の子はアメリカへ体操留学し、前回のリオオリンピックにパナマ人として初めて体操競技での出場を果たしたりもしている。当時私がやり遂げたかったことを彼らは自分たちの力でやり遂げた。正直に言うと私も当時は結果を残したくて必死だった。それがたくさん空回りをしたのも悔やまれる。

それでもみんな別れ際に言ってくれるのは、「私たちのこと忘れないでね。いつでも遊びに来て」と。文字にすると、社交辞令だろうと疑いたくもなるのだが、彼らを目の前にして実際に言われると、それが本心なんだと伝わる。教え子の中には本当に自分の父親のように思ってくれている子もいたり、自分の生まれた子のセカンドネームにUmiと名付けてくれた教え子もいたりと、自分のやってきたことが間違いでなかったと思わせてくれる。

毎回来る度に本当に明るく迎え入れてくれるパナマの友人、教え子たちは私が持っていない、人への深い愛情や優しさが備わっていて羨ましい。生きることは簡単なことではないし、様々な環境条件がそれぞれにある。それでもたくましく生きていかなければならないのは先進国も途上国も変わりはない。

次回はJamaica🇯🇲レポート。