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音訳、というもの

私はコロナの自粛が始まるまで、市のボランティアとして音訳録音をしていました。

「音訳」わかりますか?
「音訳」とは視覚障害者さんや文字を読んで理解することが難しい人のために、書物を音声録音することです。

ちゃんとルールが決まっていて、標準語アクセントを守るのはもちろん、段落や改行の間の長さ、数字や電話番号の読み方まで決まっています。

何より出版物としてすでに著作権のあるものなので、誤植があっても一言一句書かれている通りに読まなければいけません。
グラフや表、写真なども説明文を考えたりして読みます。

朗読とは違い、文字の代わりになるものなので感情表現などはNGです。
文字に感情がある訳ではなく、それを読んだ人の中で自然と感情が湧き上がるのが大切ということでした。だけど普通の文章と会話文が聞き分けられるように読まなければいけないのが難しかったな。

教科書とかも音訳されているのですが、使っていた知人は淡々と読むのでつまらないと言っていましたw

音訳者になるには講習を受けなければなりません。

まずは面接で自分や家族の出身地、住んできたところの確認と、意欲があるのか聞かれます。土地の話をされるのは標準語を少ない苦労で会得できるかの見極めだったようです。

その後学校のように三学期制で学期終わりには評価と継続意欲の確認がある講習を一年間受け、晴れて音訳者となります。

音訳にも色々あって。

出版されている本を読む人。市や県などの広報誌を読む人。新聞、雑誌、視覚障害者さん向けのイベント情報を読む人。読み聞かせボランティア。対面朗読などなど。

中でも出版された本を読める人は優秀な人。本はネット上の音訳書図書館に所蔵され、書物として日本中の方に聞いていただくもの。

音訳はなるべく多くの本を音声化するためにネット図書館で情報共有がされていて、誰かが着手したらわかるようになっているので基本的に音訳書は一冊につき一つ。ですから良い音訳書を作らなければなりません。

私は本を読ませていただいていました。とても誇らしく、有意義な時間だったと思っています。

しかし、私はコロナ対策を理由に離れてしまいました。

とても大切で必要なことだとはわかっていますが、本当はパンデミック前にお休みを申し入れていました。

私のいたところは市の音訳をするところでしたが、完全にボランティアで疲れてしまいリフレッシュしたかったんです。

音訳は

本をいただいてから一度ざっと読み
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わからない漢字や読み方、アクセントなどを調べ
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図や写真があれば説明文を作文し
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録音して
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言い間違いやアクセント違い、読みの抜けや重複がないか、間の長さが適正か、ちゃんと一音一音くっきり聞こえるかなどを注意して聞きなおし、おかしければ再録音して直し
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また全体を聞いて大丈夫そうなら校正者に出し
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校正が返ってきたらまた直して、聞き直して提出

というのがスムーズにいった時の流れです。

もちろん本のジャンルや作家さんなどは選べません。小説、漫画、料理本、歴史書、パンフレット。私は担当したことはありませんが利用する方に人気なのは官能小説だそうです。想像しやすいからかな。

本一冊いただいているだけでも日常のほとんどが音訳に費やされていました。
常にアクセントが気になるのでテレビのアナウンサーさんに突っ込んだり、方言がかわいらしい友人に会ってもアクセントが移っちゃったらどうしようとか思ってました。

それに加えて、人手がないからと広報のお手伝いをしたのですが、原稿到着から提出までを二日で終えなければならず、缶詰になってやっていました。

これは正直、無償は無理😖

必要なのも人手が足りないのもわかっています。有償にすると利用する方にお金をもらわなければいけなくなってしまうからボランティアなのもわかります。でも負担が大きすぎる。

もっと音訳が知られるようになって人が増えて分業できたり、公的に補助が出たりしたらいいのにな。と思いつつ、籍は残してありますが復帰は未定。

活舌も発声もさぼってたので悪くなっているけれど、ここまでがんばってきたので、絶対声の仕事してやる!と思ってます。

どうかもっと音訳の環境が良くなっていきますように。

(」>Д<)」────!!
だれかー!えらいひとー!おねがいまーす!

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