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貝殻集めがステータス? 文化人類学から働くことを考える

友人に、元WIRED編集長の若林恵さんのpodcast「こんにちは未来」を教えてもらってから(これもある種のいただきもの)、その界隈をうろうろしている。したらば、また強烈に知的快感のあるpodcastが出てきた。

これまた、お金って何? 名誉って何? 働くこと、生きることの意味って何さ?と思っている人は全員聞いたらいい。きのうの『世界は贈与でできている』とシームレスにつながる。


貝殻集めがステータス

この回は、『うしろめたさの人類学』の松村圭一郎さんがホストとなり、若林恵さんが聞き役としていて(これだけでも最高だ)、ゲストで招いた文化人類学者の深田淳太郎さんが研究する「貝殻通貨」のお話を聞けるというもの。

貝殻のお金ですってよ。それで、税金とか払えるらしいですよ。
しかも、貝をたくさん集めていることが名誉に直結するから、死ぬまえに老人はめっちゃ貝を集めるらしい、とかね。

え、それってめっちゃ未開の土地なんじゃ? 
いやいやそうではないのよね〜、ていうか日本の文化でも同じことしてるんじゃね?という話が非常にスリリング。


拾えばいいってもんじゃない

パプアニューギニアのトーライ族が使うのは、「タブ」というお金。それは、爪の大きさほどの巻き貝の頭とお尻に穴をあけて、ヒモを通したもの。大人が両手を広げたくらいが1単位。
(この時点で、へー、ですよね。貝のお金っていうと、1コずつの貝をコインみたいに使うのかと思ってたんだけどそうではないらしい)

貝のお金だったら、海岸行ったら拾えるじゃん!老人は貝拾いをするわけ??と思いきや、実はそうでもなく。このタブに使われる貝は、地元では採れないもの。いまはわざわざ輸入してお金にしているよう。うまくできてますね。

じゃあさ、そのタブはどうやって集めるのよ?といえば、まあ番組聞いてもらうのがいちばん早いのだけど、「社交」なのだそうな。結婚式でお祝いをしたり、お葬式に出たり、そういう儀式的なところでタブを支払い、受け取ると。

その結果、タブが集まり、葬式のときにはその人が集めたタブがドーンドーンと花輪のようにして飾られて、それが参列者に配られる。そのタブが多ければ多いほど、「いいお葬式だったね、いい人だったね」ってなるらしい。


私たちも「貝殻貨幣」を使っている

そんな即物的な判断軸を聞くと、カネ?人生結局カネなのか?と思うけど、日本人だって似たようなことをしている。
結婚式に届くエライさんからの祝電とかさ、葬式に飾られる社名入りの花輪があると、ああ立派な人だったんだなあと感じるわけだし。参列者が何万人訪れました、なんてニュースをきけば、そのスコアでその人の偉業が示される気もするし。

トーライの人にとっての貝殻も、同じことだ。その人が積み上げてきた人との信頼関係とかをスコアにしたものだと思えば、なんら不思議なことはない。

いま、私たちにとって貝殻とか花輪にあたるものは、どんどん変わってきているのでしょうね。フォロワー数だったり、イイネの数だったり、あるいはゲームのレアグッズとかもそうかもしれないし…

いちど、自分たちとは違う文化を見てみることで、私たちが何を大事にして、何に価値をおいているのか見直せますね。文化人類学の旨味をちょびっとすすれました。

うめざわ
*うーん、この番組のとてもおもしろいのは、第2話の「公私が逆転している」というとこなんだけど書きそびれた。聞いてくだされ。
海外青年協力隊とかで現地に行くと、パプアニューギニア人はなかなか職場には来なくて、「あいつらぜんぜん働かねえ、家のことばっかりやってる」って思うらしいけど、彼らとしては家族や親戚の面倒をみることこそがパブリックであって、彼らなりにめっちゃ働いているという話が。

*日本の「タブ」はなんでしょうねえ。熨斗つけたもの、みんなタブかもね。このまえのウナギも、新装開店の店にある胡蝶蘭も、ピン札のご祝儀も。それを同一の通貨にして貯められるってのは合理的かもしらん。



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