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『急に具合が悪くなる』

じぶんの命って、あと何十年か変わらずにあると思っているじゃない。でももし、「あなたは、急に具合が悪くなりますよ(≒急に体調を崩し、そのまま死にますよ)」と言われたらどうすればいいのか。

この本は、そういう状態を宣告された哲学者が、「具合が悪くなるまで」人類学者と交わした往復書簡をまとめた本。


この本が、それこそ急に身に迫ってきたのだ。身近にいるのだよ。自分の命が、あと3日なのか、あと30日なのか、あと1年なのか、3年なのか皆目見当がつかないという状態の人が。

そうするとどうなるかというと、予定がまったく立てられなくなるんだ。明日仕事に行っていいんだっけ。来月の約束入れてもいいんだっけ。半年後の結婚式、私参加できるのか、と。

こういう事態になってようやく、自分がいかに無自覚に、変わらない未来を前提にしていたかがわかるわけだ。もちろん、そういう揺さぶりが世界全体に起きているのがこのコロナ禍の1年だったわけだけれど。


この本のなかでも、「急に具合が悪くなる」状態だから、イベントの予定を立ててもいいんだっけとすこし葛藤するシーンが出てくる。急にキャンセルするかもしれない、それでもやろうとしていいんだっけ、と。

でもでも、本来はそれが自然なんですよね。いくら約束していたとしても、その日お腹が痛くなるかもしれないし、交通事故に遭うかもしれないし、大地震が起こるかもしれない。安定とか日常って、そういうデコボコな負の可能性をなるべく見ないようにしている状態なだけで、その可能性は潜在しているわけだ。

死ぬほどの病気を抱えていなかったとしても、いまこのご時世、ほんとうに明日何が起こるかわからない。急に外出が制限されたり、急に旅行行けと言われたり、急に食事に集えなくなったりする。不確定さを抱えて生きるということの参考のためにも読み直すといいかも。


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