10.決着の行方

10.決着の行方

またもやゴーレムがぼくをロックオンして突っ込んで来る。
フルパワーと言うだけあって今までで一番の勢いだ。
サラリーマンとは言え技術者の自負を刺激されたのだろうか、ちょっと有り得ないと思う。
しかし、ただ直線的に突っ込んで来られても、PDVの性能なら避けるのは容易い。
ぼくの運動神経と言うより、動きを増幅する機能のおかげか、ほぼ頭で考えただけで身体が勝手に動く感覚だ。
しかし、何度目か避けた時、ゴーレムがすれ違う瞬間に長い腕を伸ばして掴み掛かって来た。
あっ、と思った時には、ぼくの腕を掴まれてしまった!

「ハハハ!ぃよし!そこだ!ゴーレム!一気に締め落とせ!」
「承知しました!私の技術者魂を見せてやります!」

ゴーレムはそのまま自分の身体を回転させて、長い両腕をぼくに巻き付けると、ギリギリと締め付け始めた。
さすがのPDVもギシギシと音を立てる。

「しまった!どどどどうしよう?!コイツらムチャクチャだ!」
「はい、このままでも致命的な故障には繋がりそうにはありませんが、出力を少し上げて脱出しましょうか」
「え、そうなの?」
「PDVオートマチックから急な坂道及び雪道走行時のパワーモードに移行します」
「あー、さすが自動車」

ガチャリ、と何かギヤが噛み合うような音がして、ゴーレムに締め付けられる圧力がフッと消えたように感じた。
そのまま、身体を捻ると、もの凄いバネが弾けるような音がして、ゴーレムの両腕が根本から弾け飛んで行くのが見えた。

「ああ!ゴーレム?!」

オッサンの情けない声が聞こえた。
あー、壊しちゃった、とぼくが思わず教授の方を見ると、教授は口の端を吊り上げて笑っていた。
その美しい相貌は、外灯でほのかに明るい薄闇の中で、際立って残忍そうにさえ見えた。

「せっかくのデモンストレーションだ、こちらの手の内も少しご覧いただこう。
PDV!モード『必殺技』だ!」
「やったぁ!ついに実運用ですね!」
「え、何ソレ?!コレ自家用車じゃないの?!」

普通の自動車には有り得ない装備、『必殺技』。
その言葉が聞こえた時、またPDVの全身が発光し出した。

「はい、モード『必殺技』起動。
カテゴリー『スキル』、『ロケットキック』発動します」
「キックなの?!」

今やぼくの全身は眩いばかりに発光し、夜中の駐車場に小さな太陽を生み出したようだった。
そして、ぼくの意思に反して、ぼくの身体が格闘家のような構えを取る。
少し腰を落とし、左足を踏ん張り、右脚を大きめに後ろに伸ばした後、ロケット噴射のような炎を引きながら、目に見えないほどのスピードで振り上げられた!


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