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アフリカで次々生まれるAIスタートアップ、2025年、アフリカはマイクロソフトやOpenAIに勝てるか

2025年は世界中でAI(人工知能)関連ビジネスがさらに盛り上がりそうですが、アフリカでもそうなりそうです。アフリカのAI市場規模は2030年までに1,800億ドルに達するという調査から、GDPを3兆億ドル押し上げるという調査まであります。AIに関連するスタートアップはアフリカにも1,200ほど存在するといわれており、2025年はここに資金が集まるでしょう。

アフリカでAIといえば、当初は海外企業のAIモデル開発のためのアノテーションといったいわば下請けがメインだったのですが、自社のサービスやシステムにAIを搭載するスタートアップが増えています。さらに、2024年は、アフリカでもAIモデル開発が進められ、南アフリカ、ナイジェリア、ケニアのアフリカスタートアップBIG3国では、大規模言語モデル(LLM)の開発が始まりました。

マイクロソフトやOpen AIといったAIをリードするグローバル企業群が、アフリカへの投資や事業開始を発表した年でもありました。2024年は、アフリカのAIビジネスの変節点となったようです。以下、簡単に解説します。

なお、アフリカのAIスタートアップについては、2025年2月末にアフリカビジネスパートナーズのサイトで公開する予定の「アフリカスタートアップ白書」の最新版で、調達を得た企業を中心にリスト化してご提供します。アフリカのスタートアップの全体像やこれまでの流れ、国別の違いは、現時点の最新版である以下をご覧ください(無料でダウンロード可)。

2024年までのアフリカのAIビジネス

アフリカのAIに関するビジネス機会として、最初に注目されたのは、学習データ作成のためのアノテーションです。アフリカには英語を使えてITに慣れた若者がたくさんいるため、テキストや画像のタグ付け作業がオフショアで外注されました。

当初、若者の職不足も解決するとしてこのオフショアは絶賛されました。ケニア発のSamaが代表的な請負企業で、同社は公正で公共性の高い企業を認証するB-Corpも取得し、2021年にはシリーズBで7,000万ドルを調達しました。なお、この後Samaは、人権を無視しているとまったく正反対の批判を受けるようになるのですが、その話はまた別の機会に・・・。

2023年の下半期から2024年にかけては、システムやアプリにAIを組み込んだソリューションを提供する企業が格段に増え、これらAIスタートアップが資金調達できるようになってきました。いま一番資金を集めているのは業務支援系AIスタートアップです。カスタマーサービスやAIチャットボットを提供するエジプトのDXwandや南アフリカのCueをはじめ、消費者行動予測、経費清算や配送管理、採用、データ収集といった企業活動の支援領域でAIを搭載したシステムを提供するスタートアップが、50万から500万ドルのレンジで調達しています。

さらに、企業に対してAI導入支援を行うスタートアップも調達に成功しており、たとえば南アフリカのSpatialedge、エジプトのSynapse Analyticsなどが挙げられます。資金調達という観点では、BtoB向けのAIスタートアップが先行しているといえそうです。

AIの組み込みで次に多い領域が、農業と医療分野です。農業分野では、ドローン、衛星、センサーなどで取得した農作物や土壌、病害の画像や情報をもとに、AIを用いて農作業を支援する予測AIが中心です。アフリカでは農業の生産性向上が大きな課題となっており、データを用いた精密農業や農薬や肥料を使う慣行農業を普及させようとする動きが背景にあります。南アフリカのAeroboticsなどが有名です。

医療分野では世界中で画像解析や診断支援にAIが導入されていますが、南アフリカのEnvisionit Deep AIなど、アフリカの医療向けシステムやアプリにもAIが搭載され始めています。アフリカ特有なのは、地域のクリニックなど十分な訓練を積んでいない医療従事者に対して診断やデータ入力を助けるAI搭載アプリです。たとえばケニアでは、GoogleがケニアのJacaranda Healthと共同で、妊婦向け超音波検査の診断プロセスにAIを搭載しようとしています。

2025年以降のアフリカのAIビジネス

これらのAI搭載スタートアップへの投資は、2025年には本格化し、確実に増えるでしょう。

AI搭載スタートアップが調達できるようになったことに加え、2024年のもうひとつの大きな動きは、AIモデル開発を行うスタートアップが生まれてきたことです。これまでのデータアノテーションやAI搭載ソリューションは、結局は海外AI企業の下請けや利用者に留まるわけですが、そうではなく地域独自のAIモデルを開発しようという動きが生まれています。実はアフリカにも機械学習やAIの研究者や専門家、開発者は意外とたくさんいます。

アフリカは、インターネットが普及しスマホも受け入れられていますが、所詮海外企業のサービスやルールの上で消費しているだけで、アフリカにお金は落ちず、残るものがない。この反省から、来るAI時代に向けて「サービスを受ける側でなく作る側に」「グローバル企業に取り込まれるな」「次の産業革命に乗り遅れない」といった掛け声が聞かれます。

2024年、この文脈で最も注目を集めたのは、大規模言語モデル(LLM)の開発開始でした。アフリカでは英語やフランス語が公用語として広く使用されているものの、それとは別に自分の母語や別の公用語も話す人が多く、約2,000もの言語が存在しているとされています。しかし、これらの言語は十分な学習データが確保されておらず、AIの適用において空白地帯となっています。

たとえば南アフリカのLelapa AI、ナイジェリアのAwarri、ケニアのJacaranda Healthらが、ズールー語、コサ語、ハウサ語、ヨルバ語、スワヒリ語といったアフリカの主要言語の収集とモデル構築に取り組んでいます。アフリカ独自の生成AI開発にもつながる動きです。

2024年はまた、グローバルなAIリーダー企業がアフリカにやってきた年でもあります。マイクロソフト、NVIDIA、Google、Open AI、Metaらが次々と、アフリカ各国の政府や通信会社との協業により、アフリカのAIエンジニアの育成やAIスタートアップの支援、AIモデル開発に資金を投じると発表しました。

世界のAIモデルと学習データを取り仕切る、いわば「AIジャイアンツ」が、アフリカの市場可能性や人材育成に資金を投じたポジティブなニュースと捉えられる一方で、インターネットと同様に、アフリカ独自のサービスが育つ前にAIジャイアンツに市場を奪われる危機だという声もあります。AIジャイアンツの進出の背景には、彼らも手にできていないアフリカの言葉による学習データの獲得を狙う意図も見え隠れします。

2025年以降、実際に育成や支援、開発が始まります。アフリカは、AIジャイアンツに対抗して、独自のサービスを持てるでしょうか。アフリカ発の大規模言語モデルの開発は、その砦となりそうです。2025年の動きに注目です。

アフリカにおけるスタートアップ投資において、とくに事業上のシナジーやアフリカ市場での事業展開のための投資を検討している企業に対して、アフリカではどういったスタートアップが存在し、どのスタートアップに投資するのがよいか、それぞれの企業にカスタマイズした情報やソーシングサービスの提供を行っています。関心のある方は以下からお問い合わせください。





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