見出し画像

米大統領選-アフリカ各国大統領の反応

バイデン氏、ハリス氏の当選がほぼ確実となった昨日から今日8日にかけて、アフリカ各国の大統領・首相からもお祝いツイートが相次ぎました。

いまや、ツイッターは政権の広報を担う重要なメディアとなっており(トランプ氏もツイッターを多用してきました。頻度と内容をみるに、完全にツイ廃です)、国家元首が個人アカウントから祝辞や謝辞、お悔やみなどを伝えるのが普通になりましたが、アフリカにおいても同様です。

今回、アフリカの国のなかで、祝辞ツイートがいちばん早かったのは、たぶんジンバブエのムナンガグワ大統領。米国メディアが速報を伝えたのとほぼ同じタイミングでした。テレビの前で待ち構えていたのでしょうか。。

次に早かったのが、ナミビアのガインゴブ大統領。「自由のために戦ったアパルトヘイト時代、アパルトヘイトに反対した米上院議員としてバイデン氏を知った。両国の関係強化と、公正な世界の実現に向けた多民族共生のために、ともに働くのを楽しみにしている」

言外に、トランプ氏への批判が滲んでいます。

その1時間後に、南アのラマポーザ大統領。日本時間の8日午前3時40分です。ナミビア大統領に比べると通り一遍の内容ではありますね。ちなみにラマポーザ氏は、会食相手がコロナ陽性だったということで、現在自己隔離中。ご自宅からのツイートですね。

その10分後にエチオピアのアビー首相。

トランプ氏は選挙戦の最終局面で、エチオピアがナイル川上流にダムを作ったことで下流のエジプト・スーダンとの間で水の利用を巡って揉めている問題で、エジプト側に立ち「エジプトがダムを破壊しても仕方ない」とけしかけるような発言をして、エチオピアの怒りを買っていました。

この問題、以前トランプ政権が仲裁に入っていましたが、不調に終わっています。エチオピアはいま内政も大変な状況ですが、アビー首相の祝辞はそんなことはうかがわれない、ごく一般的な内容でした。

セネガルのサル大統領。セネガルは仏語圏で、サル大統領もふだんは仏語でツイートしていますが、これは英語でのツイートですね。

続くはナイジェリアのブハリ大統領。ナイジェリアはいま、警察特殊部隊SARSの不法な拘束や暴力行為などに対する抗議活動が起こっています。平和なデモ隊に軍が発砲するなどしたことから状況が緊迫し、政権への信頼度がいつもにも増して低下しています。

ブハリ大統領は対応に及び腰であるように見られており、抗議者への呼びかけも遅かったのですが、バイデン氏当選にはさっさとお祝いツイートを送り、

「バイデン氏の選挙から、政権交代を平和的に行えるという意味で、民主主義がベストな政治体制だと再認した」などと書いたものだから、「見習ってあなたが政権交代せよ」「平和なデモに発砲したのは誰?」というようなリプライが大量につくことになりました。

続いてスーダンのハムドーク首相。

スーダンも米選挙戦に振り回されました。1993年の同時多発テロ以来、スーダンはイスラム過激派の拠点であるとして米国からテロ支援国家に指定され、さまざまな制約を受けてきました。1998年にはケニアとタンザニアで米国大使館爆破テロが起こり、スーダンの工場がアジトとして怪しいとして爆破されています。

その大使館爆破テロの米国民被害者に対して賠償金3億ドルを払うことを条件として、テロ支援国家指定を外すとトランプ氏が突然言い出したのが選挙選さなかの10月19日です。そして米国内支持者が望むイスラエルとの国交正常化をスーダンにも実行させたのですが、スーダン側が見返りに期待していた経済制裁解除については、賠償金を受け取ったあとに「延長する」と発言。

政権交代で、この問題はどうなるのでしょうか。。

ガーナのアクフォ・アド大統領。ガーナは、国際社会や西欧社会から評判のよい優等生なのですが、祝辞コメントも優等生的でした。

コートジボワールのワタラ大統領。先月31日の選挙で3選されたばかりです。もともと3選禁止であるなか、後継者が急死したことで立候補したのですが、選挙前から対立候補がボイコットを呼びかけるなどする状況で、いまコートジボワールは選挙結果を巡って不安定となっています。祝辞の内容は一般的なものです。

ここまでが7日夜のツイートです。アフリカで夜が明けた8日には、ケニア大統領ケニヤッタ氏が祝辞コメントを発表しました。ケニヤッタ氏は、以前フェイク問題が起こったあとにツイッターを止めており、現地のメディアがコメントを発表しています。

コメントの全文は上記の私のツイッターで紹介しています。こういうのは、通り一遍のことを言えばいいものではないかと思うのですが、結構長く、踏み込んで発言しているように思えます。バイデン氏当選によりBiggerでBetterな関係が構築できるというのは、いまと未来を比べているのか、トランプ氏とバイデン氏を比較しているのか。。。

トランプ氏に目の敵にされていた、WHOの事務局長でありエチオピアの前閣僚であるテドロス氏も祝辞を送っています。「コロナパンデミックのような危機においては世界が連帯することが重要」。みんなけっこう嫌味ですね。

続くウガンダのムセベニ大統領は、アフリカ各国の元首が思っていたけど何も今のタイミングで言わなくても、と控えていた話を直球で投げ込みます。

「これまでの米国大統領達は、アフリカへの特恵関税AGOAを継続することで、米国に住む黒人やクリスチャンとアフリカが持つ関係を肯定的に活用してきた。バイデン氏もAGOAを継続することを望む」

AGOA(アフリカ成長機会法、アゴアと読みます)というのは、米国がアフリカからの輸入品に対して免税とする関税制度です。なにもアフリカへの温情からだけでなく、原油や安い縫製品など、米国が輸入したいものを米国企業が安く提供するための免税でもあります。

ただ、アフリカの国ほぼすべてを対象としているため、トランプ政権は否定的で、自国に利益がある国のみを対象に二国間でのFTAに持ち込みたいという方針でした。アフリカ側は逆に、現在進行中のアフリカ版EUと呼ばれる「アフリカ大陸自由貿易圏協定」に見られるように、アフリカをひとつにまとめて交渉力を増したいと思っていますから、トランプ氏の動きに反対していました。

AGOAは、オバマ政権が退陣直前の1月に期限の延長を行ったことで、2025年までは続きます。バイデン氏が退陣する最後のタイミングで延長するかどうかが決定されることになりますね。クリントン政権が開始して以来続いているこのAGOAに対しては、民主党は賛成、共和党は反対と言われています。

もうひとつ、ムセベニ大統領が「米国の大統領『達』」と言ったのが、ちょっとポイントです。というのは、ムセベニ氏はもうすぐ丸35年と、超長期に渡り政権についているため、迎える米大統領はレーガン氏から始まりバイデン氏で7人目なのです。

他の国より遅めに祝辞ツイートをしたのがルワンダです。大統領本人でなく、大統領府の公式アカウントからのツイートでした。

ルワンダのカガメ大統領は自分のアカウントでそれなりに頻繁にツイートをしていて、先週の日曜日にはWHOのテドロス氏の初孫誕生にお祝いツイートをしていたのに、おかしいですね。

この数年、ルワンダと米国の間には距離ができていたので、そのためかもしれませんし、カガメさんも初孫ができてから休日は忙しいのかもしれません(冗談)。ツイートからは、かなりお孫さんに夢中な様子がうかがわれます。

以上、アフリカ主要国の国家元首の反応でした。米国はアフリカ各国にとって、経済的・通商的に最も重要な国というわけではないですが重要な国であるには変わりなく、政治的・軍事的にはとても重要な国です。米国と中国の対立はアフリカにも影響を与えます。まあ、なんといっても世界で一番強い国ですから、それが伺われるような、各国の素早い反応でした。


アフリカ進出に関するご相談に応じています。クイックにスポットで相談されたい場合に、オンラインで1時間からご質問できます。

新規事業を始める際や新しく現地と取引を開始する際に、企画内容や相手との交渉のための土地勘を得たり、事業の可能性を検討したりするためにお使いください。千本ノックのように、どんな質問にもお答えしています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?