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アフリカはコロナ感染爆発?死亡者は少ない?真実はどっち?:アフリカにおけるコロナ状況(その7の補足)

アフリカのコロナ感染状況に関する記事がいくつかでています。

デイリー新潮。アフリカでは感染爆発は起こっていない、死者数も相対的に少ない、と書かれています。

NHK。WHOの発表を引用して、アフリカのいくつかの国でインドやブラジルのような感染の急拡大が起きている、と書かれています。


え、どっち?という感じですが、

・感染は拡大しているが、爆発はしていない。

・感染は拡大しているが、致死率は低く、コロナで多くは死んでいない。

・爆発するほどの増え方はしていないものの、感染拡大のペースは収まっておらず、加速している国もある。

・感染が収まっていないので、検査体制や医療体制は逼迫してきている。

というのが、正しい現状理解かと思います。

どちらもひとつの事実から語っていて、どちらも間違っているわけではないですが、印象が全然違いますね。

こちらで書いたとおり、

アフリカの感染者はインドやブラジルと似たような増え方をしていますが、米国や英国のような指数関数的な増え方(=感染爆発)はいまに至るまで起こっていません。

以下の対数グラフでいうと、垂直に立ち上がっている状況が、感染爆発です。南ア、エジプト、ナイジェリア、ケニアの増え方は、それとは違いますね。

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感染者DT(感染者の数が2倍になるのにかかる日数)は、南アが12日、エジプトが15日、ナイジェリアが22日、ケニアが15日です。一時のイタリアや英国は、1週間を切っていました。


厳格なロックダウンから、レベル5→レベル4→レベル3と、行動規制を少しずつ緩めている南アは、新規感染者数が増えています。

南ア新規感染者_20200609

ロックダウン(レベル5)解除前の4月末は、1日あたりの新規感染者数は300人程度だったのに、いまは2,000~3,000人の規模になっています。


致死率は、アフリカ全体で3%。ちなみに日本は5%で、英国やイタリアは14%、米国が6%ですので、低いといえるでしょう。

国別にみるとこんな感じです。この濃い赤の地域と、日本が同じくらいの致死率です。

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デイリー新潮の記事にあったように、国別で状況は違います。新規感染者数でもこんな感じです。

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ぐんと下降しているピンクの線はチュニジアです。新規感染者数は、先週1週間で11人でした。東京都の6月14日1日の新規感染者数である47人と比べてもずっと少ないですね。チュニジアと東京都の人口はおおむね同じくらいです(もちろん、人口密度が高いエリアの人口規模は違う)。


新規感染者の増え方や行っている行動規制、アフリカ55カ国すべての感染者、死亡者、検査数、人口呼吸器やICT床数については、こちらにあります。毎週更新していますので、定期的にみて最新の情報を仕入れてください。


これまで厳格なプロトコルで検査や医療を提供してきた国が多いこともあり、人手や施設、なにより資金が逼迫してきているのも事実です。

これまでアフリカの国々は、感染者は症状に関わらずすべての人を施設入所にて治療してきましたが、軽症者については自宅治療とする方針をケニアが打ち出しました。今後これに続く国がでてくると思います。

南アフリカは、地域コミュニティーで積極的に検査を行い、今日まで累計92万件、百万人あたり1.6万件という規模で検査を行ってきました(ちなみに日本の百万人あたり検査数は2463件)。ただし、すでにテストをさばくことができなくなっており、検査対象を入院患者と医療関係者だけにするべきだという意見がでています。

ところで、先述のデイリー新潮の記事では、「(アフリカの)多くの国では、大都市やスラムを除き、人口密集度が高くないので、感染が広がりにくい」と書かれていますが、いまアフリカで感染者がいて広がっているのはその人口密度が高い大都市です。都市の中で感染が広がっているにも関わらず、ニューヨークやロンドンのようになっていないのはなぜかという話なので、ちょっと論点ずれてますね。国にもよりますが、地方への感染が大きく広がっていないのは、都市と地方間の移動を禁止している国が多いこともあるかと思います。

NHKの記事では、「アフリカで感染者が増えていけば、そこから世界に感染が広がり、世界経済をまた止めなければならないという悪循環に陥りかねない」とありますが、同じ記事内にある「アフリカは遅れて拡大した」と矛盾しますね。世界との行き来がそれほど頻繁で、世界に影響を及ぼすようならば、コロナはもっと早く入ってきたのではないでしょうか。そもそも、他が落ち着いたのにアフリカから感染が世界に広がるかもしれないという事態になれば、すぐに世界はアフリカからの渡航者の入国を遠慮なく禁止するでしょう。

NHKの記事にある、WHO南アフリカ事務所所長の発言、「突然増えて突然減少するのではなく、長期間、くすぶるように続く。今後も長く居座り続け、対応も続けなければならない」というのが、妥当な認識だと思います。

爆発的な感染拡大による検査や医療の崩壊は起こらなくても、この非常事態が日常となり長期戦となると、機器、施設、人手は枯渇します。じわじわと医療が弱体化していくという表現で表せるかもしれません。WHOや医療関係者が警告を発しているのはだからだといえます。

今回のコロナウイルスは、こちらの記事でも数値をあげたように、欧州や米国の感染者数や致死率が突出しています(百万人あたり感染者数、致死率を参照)。

先のことはわかりませんが、アフリカの感染状況がいまの水準で推移するならば、「ここまでの対策をするほどのことだったのか」という思いも浮かびます。HIV/エイズやマラリアといった他の感染症のように、経済活動や日常生活を続けたまま、もてるリソースで長期的に対応していった方が、もしかすると良かったのではないか。

というのは、感染拡大のためにとったロックダウンをはじめとするさまざまな政策による経済、生活、そして人々の認識(感染恐怖や感染者、隣人、外国人への過剰な恐れなど)への影響が大きいと予測されるからです。欧州や米国での被害の大きさからくる恐怖感に、煽られ過ぎてしまったのではないか。感染対策をとったことで受ける影響・被害は、アフリカの方がよっぽど大きいのに。一方で、いや、これだけ大事になったからこそ、他の感染症と比しても一気に対策がとれたのだ、とも思うのですが。


なお、最新情報はこちらです。その8まで書きました。


10月19日追記)さらに、その9を書きました。


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アフリカビジネスパートナーズ 代表パートナー ( https://abp.co.jp ) / ケニア在住 / twitter: @umemotoyukari, @ABP_Africa /Facebook AfricaBusinessPartners