当方も埋まっているのです
お花見の季節ですね(._.)
東京はすっかり見頃である。今日は大風が吹いておりますが、桜が散ってしまわないよう祈るばかりでありますぞ。
日本人は概して桜が好きなようで、当方の知人にも桜と聞いて
「憎い…っ!」という奴はいない。
昼間なんて輝くような明るさ、夜は夜でなんだかこの世のモノとは思えないような、浮世離れをした雰囲気を醸し出しまする。
ハテ、桜はどうしてああ綺麗なのかご存知か。それはもちろん、
桜の樹の下には屍体が埋まっている!
(梶井基次郎)だからです。有名ですな。しかし考えてもみていただきたい。
ホントに死体が埋まっているとしたらこれはオオゴトであります。
雰囲気もへったくれもない、いったい誰の死体なのか?これが必ず問題になるはずです。梶井基次郎氏の感性はどうもブンガク的ゲンソーの方に雄飛して、その死体の素性には言及いたしませんが。
当方は知っています。
桜の木の下に埋まっているのは、漫画家アシスタントたちの死体である(._.)
…と、いうことを。ホントです。ユメ疑うな。
これは信じていいことなんだよ。
と、モトジローも言ってます(嘘です)。
・
何故と言って、アシにとって桜の花ほど描くのがヤッカイな木もちょっとないのです。
これは木を描くのが無類に好きな当方が言うのですから、まあまず聞いて頂きたい。
だいたいにおいて、木を描くのは黒(ベタ)を基調にするとカッチョイイものです。別に種類は問わない、なんとなく背景に描いてあればいいという木なら全部真っ黒でもそれなりにカッコイイ。これはよく見ると思います。
これを、葉っぱの感じまでちゃんと描いてとなると、もうちょっと手間になりますが、ここでも黒を強めに入れると画面が締まります。
ただ、桜って奴は黒くない。黒か白かで言えば白いのです。
漫画で桜をわざわざ出すにあたっては、どうしても桜だとわからないといけません。卒業式の演出だったり、哀しい別れの暗喩だったりするもんですからね。
で、黒を使えない桜の描き方に駆け出しアシ達は毎年苦戦するのである(._.)これはホントである。
まあ、アップはよろしい。
これを梅か何かと見分けのつかん絵を描くようではプロアシとは言えませぬ。
ではもうちょっとカメラを引くとどうなるか、
多少、苦しくなってまいりました(^_^;)
やっぱり花が見えませんので、幹の黒っぽい感じ、また形の面白さなどで桜の雰囲気を何とか出そうとしております。
で、もっと引くとこれが厳しい。
花はみえない、黒も使えない、でも存在感があるようにしっかり描きこまねばならない。まったく難解なパズルである。
当方が毎年毎年頭をひねって、4,5年かけてたどり着いたのはこういう感じでした。
まず幹を描く。花の白が目立つように、筆ペンで黒く描きます。
(あ、ピンボケ(^_^;))
んで、ペンで細かく幹に調子をつける。
で、花があるべき場所を抜いてトーンをはる。(今回は薄墨で代用しましたが、トーンのほうが肩がイタイのであり、ここも泣き所なのだった)
その上、散った花びらを表現するのにホワイトを散らすわけです。
花の房はわざわざ面相筆の先っちょを切って、平らにして、ポンポンする。
このような涙ぐましい作業を1時間ほど続ける(これは筆の速い当方の場合で、遅い人は3,4時間かけて且つ失敗するのである)と、
やっとこのようなモノになるのです。
そして恐ろしいことに、週刊漫画20ページならそのうち6,7枚はこんなシーンがある。見開きもある。
さらにさらに恐ろしいことに、
桜が大事だから今回はチーフ(当方)全部描いてください
などと後輩に言われたりするのである(師匠が言うならまだわかるが…(^_^;))。
これはまたただ当方一人のヒゲキではないのです。今年も、ありとあらゆるマンガの現場で(特に学園モノ)このようなヒゲキが惹起していることは想像に難く有りません(._.)
当方には、ちる桜のひとひらひとひらが
アシ達の汗、いや涙、いやさ血の一滴に見えるのです。
(しかし景気よく散ることよw)
・
この時期、あまり雑誌を買わない当方もつい週刊誌などふと買います。
目当てはもちろん背景の桜だ(笑)
そして見事に桜が入っている背景をみると、基本お酒を控えている当方も「これはいつもより高いお酒を買って鑑賞せねばなるまい!」と思ってしまいます。
バーチャル誌上花見である。
ただこの桜が、当方にとっては恩寵上野公園の桜より、飛鳥山公園の桜より、深く深く心に突き刺さるのでありました<(_ _)>
(いまだに桜の上手い背景を見るとコーフンします)
・
…季節がら、ついおセンチなことを申しましたこと、お粗末様でございました<(_ _)>
今週、マンガを読む方はぜひ
桜にご注目
ください。見頃です(^^)
たくさんのサポートを戴いており、イラストももう一通り送ったような気がするので…どんなお礼がいいですかねえ?考え中(._.)