梅季 壱(Umeki Ichi)

書きたいことは何でも。 気ままに言葉を綴ります。 風か魚か猫になって自由に世界を漂う…

梅季 壱(Umeki Ichi)

書きたいことは何でも。 気ままに言葉を綴ります。 風か魚か猫になって自由に世界を漂う。 そして果ては鉱物になる。 そんなヴィジョンを抱く人間。

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  • いたみ

    明るいものは見たくない、そんな貴方のお供に。 今は一緒に堕ちて行きましょう。 薄暗い生温さに浸って。 安堵という名の眠りが訪れるまで。

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ことばを借りてわたしを紡ぎたい

noteを始めるにあたって、自己紹介の代わりにこれを記しておこうと思う。 私にとってこの世はなかなかに生き辛い。自覚したのはつい数年前だが、思い返せば物心ついた頃から、なにか錘のような物を背負って、あるいは大きな手か何かで押さえつけられているかのような感覚を抱え生きてきた。しかし自尊心も人一倍強かった私は、負けてなるものかと、無駄にするものかと踏ん張って、今日までを生きながらえている。 苦しみもがき探る中で、気づきや学びも多くあった。どうやらこの世は苦しみだけではないらし

    • 【創作物】白赤シロ

      鴎の流れにあらがふ飛行機 ルウジュ色したポタアジュ 手からこぼれた麺麭の屑 踊り止まらぬ乙女の靴 腕なし首なし大理石(なめいし)男 闇夜のランプ 仔犬の名前 白と赤のミルフィーユ。 土台は「シロ」で間に3層の赤を挟み、最上段はとびきり澄んだ白で仕上げました。 色を使った言葉遊び。

      • 【創作物】彼岸

        墨を乳(ち)で薄め撒いた空(くう)に 黒い蝶が ひらりふらり 天蓋花(てんがいばな)に滴る深紅 水底(みなそこ)に蹲る魚(うお) 人影は白き面(おもて)と衣を被りて あわいの世を ひらりふらり 数日前から突如目の前に顕れた彼岸花たち。ときに群れをなし、ときに垣根から一輪だけ伸び、すっくと立ってぱっかりと、何食わぬ顔で天を仰ぐ。 今年は桃色と黄色のグラデーションが美しいヤツを人生で初めて見ました。

        • 【創作物】いつかの夜

          高速で移動する 四角い箱に身を任せ 見上げた夜空はあまりに暗く 閉塞感にため息ひとつ 落とした目の先に 散らばるは町明かり 思いがけずまばゆくて 色とりどりの星の光が ばら撒かれたみたいだった 遠目で見るから美しい、そんな風に感じた。 あの日の夜は、あらゆる星の光を吸い取ってしまったのではないかと倒錯する程、空は黒く地上は煌めいていた。

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          【創作物】白夜の卵

           夏至も過ぎた夏の晩。辺りに音はなく、静まり返った水面に映る丸い月だけが、その輝きを鳴り響かさんばかりに煌めいていた。  「ほんとうに静かだ」  「ああ、満月だからね。月の晩のなかでも満月の日に出る音は、白夜にとって最上級の味なんだよ」  白夜とは、海里がつけた鳥の名前だ。月夜の晩、ときおり姿を見せる月下鳥で、周囲の音を食べるという珍しい鳥だ。  夏休みになったら湖畔にある叔父の別荘に行き、白夜の卵をとろうという誘いを受けた夏央は、植物の蔓でできた大きな旅行鞄に荷物を詰

          【創作物】白夜の卵

          【創作物】酔い、溺れ、それでも…

          彼らは溺れる。 ビールにワイン、魅力的な女と友との時に。 彼女は探す。 男たちと酒で埋めながら、ほんとうの幸福を。 彼らは迷子、みな迷子。 無秩序な世に解き放たれた不安定な人の子。 彼女は今日も溺れる。 ぽっかり空いた虚空を埋める、ひと時の恋に。 彼は今日も探す。 無秩序な世にもあるはずの秩序を。 彼らは抗う。見出そうとする。 めちゃくちゃな世の中で、デタラメに酔いながら。 チリチリと光る。 悲痛に歪んで砕けたカケラが。 チラチラと舞う。 焦燥に

          【創作物】酔い、溺れ、それでも…

          【散文】虚しいときにはおやつをこさえて

          デジタル機器が一般家庭にも普及を始めた90年代以降、その急速な発展が現在進行形で加速を続けるなかで、世の中のいろんなことのスピードも上がっている気がする。生活者である私たちには分からない程、さりげなくスルッと。 そして人はSNSやその他多くの情報媒体を通して、自分には無関係なはずの、遠い出来事に意識を持っていかれることがこれまた無自覚に増えた。でも私たちは所詮人間。どんなにデジタルの質がアップしてスピードが上がっても、人間である私たちが一日に抱えられるものが増えるわけでもな

          【散文】虚しいときにはおやつをこさえて

          【創作物】 道化

          第一幕 昼の国と夜の国 ふた国を行き来するはひとりの道化 被る仮面は通行証 あちらで笑ってこちらで泣いて ころころへんげする不思議な面 どんどん厚くなる不思議な面 ある日重さに耐え兼ねて 道化は仮面を外そうと 鏡の前で手をかける けれどあらあらその面は ぴたりと貼り付き離れない 力を入れれば入れるほど 七変化するその面に 道化は己を忘れゆく 仮面に飲み込まれ 道化はひとり国の外 昼の国に響く声 夜の国に煌めく光 どちらも遥か遠く 耳にも目にも届かない ふた国に弾かれた

          【創作物】 白昼夢

          欠けた太陽 星屑の波 虫の涙と君の夢 ゆらゆらと歌うように はらはらと泳ぐように 雲に隠れた翅の色 翳した海に兎が跳ねて いつか鯨の腹の中 久々のことばあそび

          【創作物】 白昼夢

          【創作物】氷花

          君に 氷の花束をあげよう これは ひと冬の御伽噺 醒めない夢のなか オーロラの下でふたり ワルツを踊ろう くるくる くるくる くるくると この花束が溶けてなくなるまで くるくる くるくる くるくると 君と僕の境目が溶けてなくなるまで 君に 氷の花束をあげよう これは ひと冬の御伽噺 いつか醒める夢のなか 星の祝福の下でふたり ワルツを踊ろう くるくる くるくる くるくると この花束が溶けてなくなるまで くるくる くるくる くるくると 目蓋を撫

          【散文】「情報」との付き合い方

             ーーーーーーーーーーーーーーー 「情報」とは、極端に言えば酒や薬のようなものである。質の良いものを得ることで一時の快を、或いは万事解決へと導く光となる。しかし摂る量や扱い方を間違えたり、中に粗悪なものが紛れ込んでいたりでもしたら、途端に人間を飲み込んで支配し、やがては破滅へと追い込むのである。    ーーーーーーーーーーーーーーー 情報を集めるのが好きだ。 と言うより、自分にとって新しいことや珍しいものを見たり聞いたりすることに、喜びを覚える。 異なる価値観や

          【散文】「情報」との付き合い方

          【散文】"染まりやすい"についての話 〜hspで月魚座持ちの実体験を交えて〜

          我が強い自覚はあるけれど、人一倍影響も受けやすい。 人と話をする場合。相手の上手く言えないもどかしさやそのニュアンスを勝手に感じ取って、話しやすいような流れをつくる。相手のテンションや雰囲気に引っ張られるから、初対面でもあまり気まずくはならない。 何か作品を鑑賞した場合。数時間〜数日の間、良くも悪くも余韻を引きずり現実に集中するのが難しい。物語に触れるときは必ずと言っていいほど"自分がこの世界にいるとしたら"を考えている。 いつも、意識したときには既にそうなっていて、ふ

          【散文】"染まりやすい"についての話 〜hspで月魚座持ちの実体験を交えて〜

          【創作物】冬の熊

          祖父の古い腰かけ 染みついた葉巻の香 燃える薪はあかあかと 踊る影は楽し気に 立ちのぼるバニラの熱が 乾いた心をくすぐる 今宵はどこに行くんだろう 月の舟に乗って 僕は夢を旅する 冬のクマのように 微睡みに身をゆだねて ユールリ ルリ ルーララー ユールリ ルリ ルリルララ 積まれた本の柱 挟まれた月下の花びら 転がる鉱石はあざやかに 静かにすべてを映して 手にした雲母(きら)のカケラに まだ見ぬ宇宙を予感する 今宵はどこへ行こうか 雲

          【創作物】冬の熊

          【散文】信者にはなれなかったけどタペストリーには惹かれた話

          そこはいつもむせ返りそうなほど暖かく、珈琲の芳ばしい香りに満ちていた。 大人たちが吹き抜け天井のある講堂に集まって、私たちは廊下を進んだ奥にある、小さな教室に向かう。 6畳ほどの空間には木製の長椅子が6つと小さな木製の教卓、それに電子ピアノがあった。 正面の壁の中央は縦長の半円形に窪んでいて、そこには大小2つの細い木の枝で作った十字架が釘で打ちつけられ、下には開いた聖書が置かれている。 日曜の午前。 プロテスタントの教会で行われるそれは、 "日曜学校" と呼ばれ

          【散文】信者にはなれなかったけどタペストリーには惹かれた話

          【散文】アインシュタインに救われた話

          「え、そんなの常識じゃない?」  ドキッ 「常識的に考えてそうだろ」  モヤッ 「常識のない奴だなぁ」  イラッ  「常識」  "常識"って何  誰が決めたの  いつ知る機会があったの  本当に正しいの いつからかは忘れたけれど、気づいた時にはこの言葉に過剰に反発を覚える自分がいた。 ちなみに冒頭のやり取りは全て私に向けられた言葉ではない。 耳について残ってしまった身近な人々の発言だ。 もしそれが私に向いていたら、きっと話の論点がズレることも構わず

          【散文】アインシュタインに救われた話

          【散文】想起

          香りの記憶はすぐに思い出せるものではないけれど、かと言ってそう簡単に忘れられるものでもない。私の意思に関係なく、それはある日ふらっとやってきては、私の心を惑わす。 例えば人混みの中ふと鼻を掠めた香りに、一瞬で心臓が跳ね上がる。 途端にあふれ出した鮮やかな日々は、学生時代の片恋の記憶。 確かあれは、整髪料の香り。当時は少し苦手だと思っていたはずなのに、今は不思議と懐かしさやほんの少しの切なさを連れてくる。あの人が幸せならそれでいい、なんて強がっていたことも、話すことさえ叶