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保護者から聞かれる質問でこれだけはやめてほしいと思うもの

教員をしていると一定数の保護者から聞かれる質問がある。

保護者に悪気はないかもしれないし、単なるコミュニケーションのひとつかもしれないし、深い意図はないかもしれない。

それでもぜひやめてほしいと思うものがある。



「先生はお子さんがいらっしゃいますか?」



わたしは言われたことがない。
でも言われたことがある同僚を何人も知っている。



この言葉がどれほど失礼かわかるだろうか。



過去の話をひとつ書く。

三者面談を終えた先輩がため息をつきながら「さっき〇〇(生徒)の母ちゃんから、先生、結婚されていますよね、お子さんは?って聞かれたよ。たまに聞かれるんだよね。俺がそれなりの年だからかもしれないけど」と言った。

その先輩は40代の既婚者で、長年続けてきた不妊治療の結果が出ず、つい最近やめたところだった。

もちろん保護者は先輩の状況など知るよしもない。

でも、だからこそ、様々な状況の教員がいるということを、ほんのすこしでいいから想像してみてほしかった。



ほかにも様々な状況の教員がいる。

独身の教員もいるし、結婚後に子どもを望まない教員もいる。
先輩のように不妊治療をやめた教員もいるし、現在進行形で不妊治療を続けている教員もいる。
妊娠後に流産や死産を経験した教員もいる。

ちなみに流産を経験した教員のなかには、妊娠中に部活動で体を動かし、流産に繋がったと見られているケースもある。

でもそんな個人の状況を保護者に教える義務はない。

教員にもプライバシーはあるのだ。


また、先輩の話を聞いたとき、わたしは独身だったので、自分自身の背中もヒュッと冷たくなるような気がした。

教員は結婚しなければいけないのか?
教員は子育てをしなければいけないのか?

子育てをしたことがない者は教員として半人前だと思われているのだろうか?


わたしはいずれ結婚や子育てをしたいと思っていたが、人生が思い通りになる保証はない。

特に妊娠や出産は奇跡である。子どもがすくすくと育つことも奇跡。大袈裟ではなくすべて奇跡の重なりだ。

親となった保護者であればわかっていそうなものなのに、なぜ、結婚・妊娠・出産・育児を教員に求めてしまうのか。



たしかに教員は子どもと接する仕事である。

でも子どもと接する仕事だから子どもを育てなければいけないという決まりはない。

そもそも教員のスキルと育児のスキルは別ものだ。



現にわたし自身、子どもの有無で仕事に対する意識に大きな変化は感じていない。

保護者にとって生徒が大切な存在であることはとっくに理解していたし、自分が保護者の立場になったあとも理解の度合いに変化はなく、「こんなに大切だったなんて知らなかった!」などと思ったことはない。

生徒は我が子とまったく違う。
我が子のように捉えるつもりも毛頭ない。


なぜなら教員はあくまでも仕事なので、生徒に感情移入してはならないのだ。

それは以前こちらにも書いた。

感情移入は自己満足に過ぎないかもしれないし、生徒のためになるとは限らない。

だから「生徒を我が子のように思っている!」などと言う教員がもしいたら、言葉の信憑性も、仕事に対する意識も、疑問を持ったほうがいいかもしれない。

それからたまに「この仕事は子育てを経験したほうがいい!」と言う教員もいるのだが、わたしは毎回「それは違うと思います」とはっきり言うようにしている。




冒頭にも書いたが、保護者としては、悪気もなく、単なるコミュニケーションのひとつであり、深い意図はないかもしれない。
でも、その言葉によって傷つく教員が少なからずいることを、頭の片隅に入れておいてほしい。

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