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東京アンブレラ基金協働団体紹介

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東京アンブレラ基金に協働していただける各団体へのインタビュー&レポート
運営しているクリエイター

#東京には傘がない

「どこにも居られなくなってしまった人々が最終的に行き着くのが公共空間なんです」ホームレス問題を都市のあり方として捉え、誰しも都市にホームがある社会へ

「どこにも居られなくなってしまった人々が最終的に行き着くのが公共空間なんです」ホームレス問題を都市のあり方として捉え、誰しも都市にホームがある社会へ

ARCH (Advocacy and Research Centre for Homelessness)は都市や地域の中に存在するホームレス問題について、調査研究やアドボカシーをおこなっている団体だ。また、ホームレス状態におかれた方の「実際の人数」を市民の力で調査するソーシャルアクション「東京ストリートカウント」も主催されている。

今回の「東京アンブレラ基金」では、協同団体として唯一直接支援団体

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妊娠により居場所を失う。一方で、居場所がないから妊娠する方も……。「にんしん」をきっかけに自由で幸せに生きることができる社会をめざして

妊娠により居場所を失う。一方で、居場所がないから妊娠する方も……。「にんしん」をきっかけに自由で幸せに生きることができる社会をめざして

妊娠が「困りごと」になる
たとえば、20代のAさん。彼女は、性風俗店で働いている。
客の子どもを妊娠。誰にも言わず、性風俗の寮で産んだ。

たとえば、生活保護を受給しているBさん。
経済的な余裕がないなか、妊娠したことに不安を感じている。
生活保護のケースワーカーに、叱られてしまうのではないかと怖くて妊娠のことを伝えられない。

特定非営利活動法人ピッコラーレ・代表理事の中島かおりさんらは、こうい

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原発事故避難者が安定した住まいを取り戻すために。問題を終わらせず、声を上げ続けて

原発事故避難者が安定した住まいを取り戻すために。問題を終わらせず、声を上げ続けて

震災の日。「避難」の始まり
松本徳子さんは出身の福島県で、ごく普通の家庭に育ったという。
祖母が親戚が闘病する姿を間近にしていた影響もあり、医療関係に興味を持ったことから看護の専門学校に進学。看護師として地元の病院に勤め始めた。
やがて結婚され、お子さんが産まれたこともあり、地元の百貨店に転職。その後もずっと福島県内で生活を築いていらっしゃった。

そうして2011年3月11日を、松本さんは福島市

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「すべての子どもに気軽に泊まれる親戚のお家を作りたい」 地域の中で孤立する親子を「一歩手前」で受けとめるために

「すべての子どもに気軽に泊まれる親戚のお家を作りたい」 地域の中で孤立する親子を「一歩手前」で受けとめるために

リビングではゲームで対戦する子どもたちの歓声が上がる。隣のキッチンでは、手分けして今日の夕食の炒め物を作っている。

「小学生から高校生まで集まって、週3回、こんなふうに遊んだり一緒にご飯を作って食べています」

そう説明してくださるのは「NPO法人豊島子どもWAKUWAKUネットワーク」事務局長の天野敬子さんだ。

プレーパーク(冒険遊び場)の運営や子ども食堂、学習支援など、豊島区内でさまざまな

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「明日の朝、家まで迎えに行くから」と言われ……。
AV出演強要や自画撮り被害、日本にもある「人身取引」

「明日の朝、家まで迎えに行くから」と言われ……。 AV出演強要や自画撮り被害、日本にもある「人身取引」

「人身取引」=「現代の奴隷制」「モデルになりませんか?」「芸能事務所に興味ありませんか?」渋谷や新宿の街頭で、若い女性にスカウトたちが声をかけるところを見たことがあるかもしれない。

「そうやってスカウトされたある女性が、登録したプロダクションが勧めるオーディションを受けたところ、撮影が決まったという連絡がきたそうです。撮影の前夜になってから脚本がLINEで送られてきて、読むと『3人の男優とからみ

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LGBTQの住まいの貧困に取り組んで。社会に対する不安を、自分ごととして共感を広げるために

LGBTQの住まいの貧困に取り組んで。社会に対する不安を、自分ごととして共感を広げるために

「『ああ、わたしバイ・セクシャルだったんだ』って気付いたのは、大学時代、フェミニズム系の勉強サークルに入ったことがきっかけでした」

そう笑顔で話すのは、LGBTQ当事者で精神疾患や発達障害などのメンタルに悩みを抱える方のための自助グループ「カラフル@はーと」でスタッフを務める松灘かずみさんだ。

彼女は現在カラフルの他、ホームレス状態に陥ったLGBTQ当事者の問題を解決するためのプロジェクト「L

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今日、帰る家がない10代の少女たち。
虐待や生活困窮のなかで「助けて」と言えない声を拾いたい

今日、帰る家がない10代の少女たち。 虐待や生活困窮のなかで「助けて」と言えない声を拾いたい

渋谷の街をさまよっていた頃「どこにも居場所がない」――10代の頃、ずっとそう感じていたと話すのは、一般社団法人Colaboの代表・仁藤夢乃さん。

当時は家族の仲がわるく、学校の教員ともうまくいかず、ほぼ毎日のように渋谷の街をさまよっていた。どこにも居場所や希望が見つけられず、まわりは同じような境遇の友達ばかり。ビルの屋上に段ボールを敷いて「うちら、ホームレスじゃね?」と言いながら寝たこともあった

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難民が日本の中で公正に受け入れられる社会へ。悔しさから始まる、不寛容を乗り越え希望へ変えていく力。

難民が日本の中で公正に受け入れられる社会へ。悔しさから始まる、不寛容を乗り越え希望へ変えていく力。

「こんな社会じゃ嫌……!これを変えずにしていいのか……!社会を少しでも良くしたい、悔しくて怒ってやっている部分はありますね」

認定NPO法人”難民支援協会”の代表理事である石川えりさんは語気を強めてそう話す。
優しい笑顔が魅力的な彼女が時折見せる力強い目線や表情は、難民支援の過酷さを物語っていた。

ルワンダの虐殺を知って石川さんが難民問題に興味を持ったのは高校三年生の時だったという。

「自分

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その人らしさを取り戻していくために必要なのは、安心して一息つける場所。「あの人が悪い」という偏見を乗り越えて。

その人らしさを取り戻していくために必要なのは、安心して一息つける場所。「あの人が悪い」という偏見を乗り越えて。

夜の池袋、雑踏の隅でうずくまっている男性がいる。その男性に向かって一直線に近づき、
「こんばんは、最近どうですか?」
と声をかけたのは、NPO法人TENOHASI(てのはし)事務局長の清野賢司さんだ。

清野さんが話しかけた男性に、今夜眠るための家はない。清野さんは男性の近況について話を聞き、体調を気遣い、おにぎりを渡す。会話の中で、少なくとも今日はここから動きたくないことを聞くと
「また来ます」

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