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信用取引で大損|ライブドアショックで破滅した男性の末路

翔太さん(41歳:仮名)

「もう、後悔しても仕方ないんだけどね」

僕は学生時代はそこそこ勉強はできました。高校は県内一の難関校、そして国立大学に進学、そして大手企業に入社。ここまでは順調な人生だったと思う。しかし、就職してから人生が一変した。

単純作業の雑用を繰り返すだけの日々。自分は「上の下」くらいと思っていたのが、気づけは「中の下」くらいまで落ちてたんです。プライドが邪魔をして友人達とも疎遠になりました。

だから、何としてでも僕は成功者になりたかった。金持ちになりたかった。働かなくても生活できる資産を築きたかった。そして、何よりも

友人達からうらやましがられる存在になりたかった
しかし、この想いが僕を破滅に引きずり込むことになるとはね。僕は人生の一発逆転を狙っていたものがあったんです。

「株式投資」

僕は2003年3月に大学を卒業と同時にネット証券の口座を開設して株取引を始めたんです。僕は大学時代にバイトでコツコツと貯めた100万円を入金して株式投資をスタートしたけど、実を言うと開始直後からすごく儲かったんだ。なぜか?

2000年に起こった「ITバブルの崩壊」が徐々に落ち着きだして、僕が投資を始めた2003年4月くらいが底だったんだ。だからこの時期に株を始めた人は基本的には何を買っても儲かるような時期だった。
2003年4月に8,000円くらいだった日経平均株価は、2004年末にはほぼ一本調子で11,000円くらいまで上昇した。僕の投資人生のスタートは本当に順風満帆だった。僕はその時、こう思った。

僕は天才だ。株の才能がある
実際は相場がすごく良かっただけなのに僕はそう勘違いをしてしまったんだ。そして、僕は株にのめりこみ『信用取引』という言葉を知った。信用取引というのは簡単に説明すると担保としてお金を入金すると証券会社からお金を借りて、最大でその金額の3倍までの取引を行えるというもの。つまり、借金をしているのと同じなんだ。

僕は信用取引の口座を開設し、150万を保証金として3倍弱の400万円分の株を買いあさった。すると、驚くことに2005年の年末には1,000万円近くまで増えていた。

年収が300万円程度の男が株を保有するだけで何百万円もの利益を得る。冷静でいられるわけがないよね。周囲には「株をしないやつはバカ」「次はこの銘柄が来る」なんて、えらそうなことを言ってた。完全に自分は一流の投資家になった気分だったよ。

あと1年もすると資産が1億くらい行くかもしれない。そしたら、友人達にも大きな顔ができる。

「僕も成功者の仲間入りができる」

心の底からそう信じて疑わなかった。しかし、これは全て幻想だったんだ。

そして、僕は次の銘柄を物色し、ソフトバンク(9984:現ソフトバンクグループ)を信用全力で買った。最初は恐怖心があったものの、じりじりと上がり続けて、僕の資産が1,300万円まで上昇すると恐怖心など吹き飛んだ。

やはり僕はセンスがある
ソフトバンクの利益を確定した僕は株での成功が続き、完全に冷静さを失った時期だった。そして、次なる獲物を探した。

ライブドア(4753)

いろいろと世間で話題になっていた堀江貴文氏が率いる会社だった。そして、2006年1月10日。僕は軽い気持ちで人生を大きく変える買い注文を出した。

670円で50,000株。総額で約3,400万円分のライブドア株を信用取引で購入した。

購入後からすぐにライブドア株は上昇をして、1月15日の時点で699円。150万円近くの含み益が出た。僕はこの時には暇さえあれば証券会社の口座を開いて含み益を見るのが楽しみになっていた。

やはり自分は天才。勝ち組。今が人生の分岐点。
(仕事をやめよう。株で食っていけるし)

しかし、これらはその翌日に全て、はかなく消えてしまうんだけどね。何度、後悔しても戻れないんだな。

翌日の1月16日は僕は上司に何度も怒られたこともあり、嫌気が差していた。

(ちくしょう・・・僕は天才投資家だぞ)

むしゃくしゃしながら、自宅に帰ってテレビをつけた。

「東京地検がライブドアを家宅捜索」

(え?か、家宅捜索?)

Yahoo!ファイナンスの掲示板を確認するとライブドアに書き込みが殺到していた。ただでさえ世間から注目を集めているライブドアだ。保有している人も多いから掲示板もざわついて当然だ。そこにはこんな書き込みが多かった。

「明日はストップ安だな」

(ストップ安!?ちょっと待ってくれ。ストップ安なら僕は大損だぞ・・・)

値幅があるから最高で1日マイナス100円。僕は50,000株持っているから・・・

1日マイナス500万円!?あり得ない!これはやばい!

胸が締め付けられたように苦しい。しかし、こうなってしまっては仕方がない。

僕は明日『損切り』をすることに決めた。まあ、投資人生にこういうこともあるさと最初は楽観的に考えていた。しかし、寝る前に脳裏にふと浮かんだ。

ストップ安が数日続いたらどうなる?毎日500万円のマイナスだ。
とにかく、僕は全てのライブドア株を明日売却することにした。

翌朝、僕は会社に出勤前にライブドア株を成り行きの売り注文を出した。就業前の8:20に寄り付き前の板を確認して驚愕した。

(な・・・なんだこれ?)

「ストップ安」

売り注文がどんどん増え続けていく。手が嫌な汗でベタベタとしてくる。心臓のドクンドクンと激しい音が聞こえる。しだいに腹が痛くなってきた。

(頼む・・・頼むから、ストップ安でも良いから売れてくれ)

僕は発狂しそうになりながら、仕事が始まった。全くはかどらない。株価が気になって仕事が手につかない。

上司から3回くらい怒鳴られても、株のことで頭がいっぱいだ。さすがに僕の様子がおかしいことに上司が気づき、話しかけてきた。

「・・・大丈夫か?様子が変だぞ。悩みがあるなら相談しろよ」

僕は「ありがとうございます。大丈夫です」と上司に返答した。

マイナス500万円
この日、失った金額だ。僕は仕事が終わってから証券会社の口座を確認して驚愕した。年収300万円の僕の年収以上の金額をたった1日で失った。しかし、これはまだ確定ではない。

明日も、あさってもストップ安ならどうなる?1,000万円、1,500万円のマイナス!?

(やばい、やばすぎる)

僕は現実から逃げてしまいたかった。もう精神が持たない。その日は21時に就寝しようとしたけど、眠れない。

株なんて・・・株なんてしなければ良かった。もう信用全力なんて無理はしないから頼むから・・・お願いします。売らせてください・・・
僕は布団の中で1人で泣いた。

翌朝もニュースはライブドアのニュースばかりだ。もう嫌気が差してくる。

そして、僕は就業前の8:20に寄り付き前の板を確認した。そこには『予想通り』の状況が映し出されていた。確認するまでもない。その日も『ストップ安』だった。

マイナス1,000万円
2日で1,000万円も僕は損した。この金額を取り戻すのに一体どれくらいの時間がかかる?僕はもう他人事のようにライブドアのストップ安を傍観していた。そうしないと精神が持たなかったのだろう。

ライブドアはなんと5日間もストップ安を続けて、ようやく寄り付いたのは130円前後。700円前後からなんと1/5にまで暴落した。

僕はマイナス2,900万円の損失を出し、なんと1,500万円以上の借金を抱えることになった。
証券会社から『追証』を入れて下さいと連絡があったけど、当然そんなお金は用意できない。情けないけど、実家の両親に相談することにした。父からは怒鳴られ、説教をされたけど、両親は老後のために貯金していたお金を貸してくれた。

(こんな、バカな息子で本当にごめん)

両親はこんな僕でも見捨てることはなかった。社会人になっても両親に迷惑をかけてしまった情けなさから僕は両親を前にして土下座をして泣いた。ライブドアショックから15年が経つ今でも毎月両親に返済を続けているよ。

さすがに株にはこりました。もう2度と株はしないと決めたよ。最初の信用取引の失敗で僕のように大損害になる場合もある。信用取引をされる方には無理のない範囲で活用して欲しいと心の底から思うよ。

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