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離婚して後悔|安定した結婚生活を退屈と勘違いした女の話

亜紀さん(仮名:28歳)

「ただ後悔しかないわ」

私は安定を求めて日本人なら誰でも知っている有名大企業勤務の男性と結婚しました。年収と肩書に魅力を感じてね。結婚生活は良く言えば「安定」した生活。言い換えれば「退屈」だと思ってた。旦那が私を愛してくれていたのは知っていた。大切にしてくれたのは事実よ。でも退屈な結婚生活の中で愛してくれる人ではなく愛する人と過ごす人生の方が幸せなのかなって感じていたのよね。

そんな時に「彼」と出会ったのよ。彼との出会いはナンパ。本屋で立ち読みしてたら声をかけてきたの。彼はスラっとしていて背も高くて顔が良くてね。外見だけなら芸能人として十分通用するレベルよ。初対面でドキッとしてしまってお茶してそのままホテルに行ってしまったの。そして、彼に抱かれている時、こう思ったの。

私が求めているのは「これ」よ。平凡な旦那にはない「刺激」。そう私は燃え上がってしまったの。
彼は売れないミュージシャンだった。バイトをしながらデビューを夢見て音楽活動をしていたの。お金はあるけどつまらない旦那との結婚生活に私は飽き飽きしていたから「愛があればお金なんていらない」と思って彼との生活を選び、旦那とは離婚することにしたの。

離婚したいと伝えると旦那は「別れたくない」と言って涙を流した。その姿を見て「情けない男」と軽蔑すら感じたわ。私達夫婦には子供がいなかったからスパッと離婚できた。旦那は慰謝料は一切要求しなかったから私はラッキーくらいに思っていた。そして「私は彼と共に生きる」と新しい生活に夢と希望に胸を膨らませていた。

でも彼と一緒に暮らし始めて「幸せ」を感じた期間は1ヶ月も続かなかった。想像していた生活と全く違っていたからね。エアコンもないボロボロのアパート。布団にはカビが生えていて不衛生な部屋。彼のバイトの収入だけじゃ食費すら切り詰めないといけない。カップラーメンやコンビニのおにぎりを下品にむさぼり食う彼を見て「何か違う」と感じた。しかも彼はパチスロで1度に数万負けることも頻繁にあって生活を圧迫した。

別れた旦那とは年に1回は海外や国内を旅行して一眼レフのカメラで旅先を写真に収めたり、美術館で絵画を楽しんだり、記念日には贅沢なディナーを楽しんでいた。時には話題の映画や本の感想を語り合ったりとにかく前の旦那とは趣味が合っていたのよ。それに比べて今の彼がいかに薄っぺらいことか。

それにせっかくの休みになっても彼はゴロゴロしながら1日中ゲームをするだけ。そして自分の欲望で私を求めて欲求を満たすとさっさと寝る。そんな彼を見ているとこれからの生活が不安になってくる。彼は社会保険にも入っていないのに避妊なんて一切しない。「子供ができたらどうするの?」と私はビクビクしていた。

「愛があればお金はいらない」という期待はもろく崩れ去った。お金がないとあっという間に愛は冷めてしまうということを知ったわ。

別れた旦那は私がわがままを言っても「そうだな」「うんうん」といつも理解してくれたし、私が泣いた時には「大丈夫か?」と慰めてくれた。思い出すたびに別れた旦那は優しさに満ちあふれていた。その時、初めて気づいたのよ。別れた旦那との生活は決してつまらないものではなかった。穏やかで満ち足りていた日々だったのよ。毎晩、眠りにつく前に別れた旦那との日々を思い出す。そして何度も「あの頃に戻りたい」と後悔したわ。

離婚して2年が過ぎた頃。久しぶりに旦那に連絡してみようと思ったけど電話は拒否されていて、LINEもブロックされていた。それでもあきらめきれずに旦那の友達に連絡して知ったの。別れた旦那は再婚してもう子供がいるらしいわ。とても幸せそうに暮らしているそうよ。泣いたわ。もう復縁なんて無理なのよ。自業自得だけどね。時間をもしも巻き戻せたなら旦那とは絶対に離婚しなかった。別れて初めて旦那の優しさに気づいた私は本当にバカな女なのよ。本当にバカな女。後悔しかないわ。

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