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「人間人形時代」 稲垣足穂

永井さん(美術作家 永井宏・故人)が好きな作家の一人に稲垣足穂がいた。

会話の端々にタルホはタルホはと言っていた。

中でも僕の好きな作品は「一千一秒物語」だったけど、僕がこの本を手にした理由は、なんてことはない。真ん中に開いた穴だ。

この穴から何が見える?

この本に書かれた内容は、非常に哲学的で、ついていくのはとても困難だった。永井さんはタルホのこの部分をアートとして捉えていた気がする。

相手をけむに巻くような意味の不明な文章や詩は、永井さんの得意技であった。タルホもまた自分の読者に哲学的な理解を求めていなかったと思う。

しかしこの難解な文章を音読してみた時、その世界がパッと開けた気がした。文章はリズムと響、哲学的な意味を追うことは、永井さんにとって、それほど大事なことではなかったのかもしれない。言葉は音楽と同義なんだ。もし、今度会って、聞くことができたなら、そんなことを言われそうな気がする。

本当のことはわからない、僕にもわかるのだろうかその意味が?いつか。

その時、初めてこの穴から世界が見えるのだ。


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