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わたしが本当にやりたかったワークショップのはなし

↑↑の写真は、我が家が最後に「健康」だったときの、わたしの26歳の誕生日パーティーの様子。

わたしの家の近くには昔不二家レストランがあって、お誕生日はそこで祝うのが決まりだった。だから、もうすぐ30歳(今年28歳になる)でも、不二家レストランの店内放送で名前を呼ばれて、ゼンマイ仕掛けのペコちゃんケーキのろうそくを吹き消して、家族写真を撮るのが誕生日、であってほしかった。

この年の2月にわたしは適応障害になり、精神科へ通院が始まりました。
でも、フリーランスの演劇制作に「失業手当」なんてものはないので、病院の先生には「とにかく働けるようにしてください」とだけ言って、最初の数週間だけほぼ寝たきりになった以外はとにかく働いた。
お金が無くなったら、病院にすら通えないのである。実際、お金がなくなってカウンセリングには行かれなくなった。
(現在は仕事の先輩にご紹介いただいた某先生のところにお世話になっていて、カウンセリングも一緒にしていただいており、精神科通院の医療費負担額も申請が通って1割負担になりました。)

だから、カミグセが2018年に上演した久々の新作『ねえ、聞いてよ、ウォンバット!』は労働以外で演劇の脚本・演出ができる喜びで満ち溢れていて、やっぱり身を以て演劇にどっぷりと浸かると、体は実際疲れるけど心の健康はすこぶる良くなるということを実感した。それで、

「この面白さを、もっとたくさんの人に知ってほしい・・・けど、まずは一番お世話になっている両親に、娘がここまで愛した演劇というものを伝え、楽しんでほしい

と考えて、演劇初心者向け、あわよくば俳優や舞台芸術に関わる子を持つ親向けのワークショップを開催したいと思った。

そうして、『ねえ、聞いてよ、ウォンバット!』千穐楽の2日後、父が脳出血で倒れた

父はたまたま、わたしが当時住んでいた家から車で5分ほどの所で家庭教師をしていて、そのご家庭のお母様に「娘が近くに住んでいる」と父が話していたことにより、iPhoneのメディカルIDで母よりも先にわたしに連絡がきた。
※余談ですが、iPhoneユーザーでメディカルIDの登録をしてない方はやったほうがいいと思います。特に薬や食べ物のアレルギー情報の登録や、ご家族とパートナー(彼氏や彼女)が知り合いでない方、自分の状況がこの人に伝わればあとはなんとかなる(仕事の連絡など)、みたいな人の連絡先を登録できます。

おかげで、先方のお母様の入電から約10分後には現地に到着し、ストレッチャーで救急車に乗る父とタイミング良く合流して、そのまま病院へ搬送された。
救急車の中で、体が麻痺してほとんど動けない父は、

「この前の芝居よかったよ」

とだけわたしに言った。
後から聞いたら、「もし死んでしまうなら、最後にこれだけは言っておかないと後悔する」と思ったらしい。
幸い、2ヶ月間のリハビリを経て、多少の麻痺は残ったものの退院して家へ戻ることができた。その後も自宅でのリハビリを続け、現在は自分一人でも基本的に不自由なく生活できるようになっている。

けれどもだ。
やっぱり一般の人と同じ速度で物事をするのは難しいし、言葉も時々うまく出ないし、感情のコントロールが難しいときもある。
だから、やっぱりどうしたって、父はワークショップには来られない。
わたしの両親が、わたしの台本を読んで芝居をするのは見られない。
一緒に体操がしたかったし、台本読解がしたかったし(父はもともと国語を教えていたので、新作をやるたびわたしの台本を読んで解釈を考えていた)、稽古がしたかった。

でも、もうできない。
「夢」を「形」にできると思っていた矢先に、それは「叶わぬ夢」となってしまった。
もちろん、父の病状でも参加できるプログラム編成にすることもできるが、それは本当に本当のスペシャルプログラムでないと難しい。何より体力がぜんぜん持たないだろう。

「なぜもっと早くに実行に移さなかったんだろう」
「それは仕事が忙しかったから」
「仕事仕事言ってる間にどんどん時間は過ぎるんだよ」

まさしくそうだ。時間はどんどん過ぎる。
やっぱりやらないといけない、もう父だの母だの言っている場合じゃない。
わたしが面白いと思った、辛い時に助けてもらった「演劇」というものを、たくさんの人に「作品以外のところで」知ってもらいたい。
体で、言葉で、遊んで楽しんでもらいたい。
人間がもっているたくさんの不思議に気づいてもらいたい。

2019年9月は、なぜか、なんの仕事の予定も無かった。

ということで、こちらのワークショップを開催する運びとなりました。

18日(水)のお申し込みがまだ寂しく、ぜひご参加いただければと思います。
16日(月・祝)はだいぶいい感じですが、こちらもまだまだ入れます。
わたしの両親が(なんなら祖父母でも来いやくらいの勢い)参加できることを前提にプログラムを考えています。怖いことは何もないです。むしろわたしが緊張してビビっているかもしれませんので、みなさんは安心してきてください。

当日、みなさんとたくさんの「面白み」に出会えるのを楽しみにお待ちしております。

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