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浮世絵の素材ー和紙③特注復元紙について(第二期目)

高知県立紙産業技術センターと和紙職人の田村亮二さんの協力のもと、2018年より紙の復元に取り組んでいます。第一期目の復元紙は2018年秋に完成し、第二期目は2019年秋に出来ました。最新作の歌川国芳「讃岐院眷属をして為朝をすくふ図」において、初めて第二期目の紙を使用したので、ここに紹介します。

(第一期目の紙についてはこちらをご覧下さい。https://note.com/ukiyoe_shimoi/n/ncf51049688dc )

第一期目からの改良点は下記2点です。

1紙を光に透かしたときに見える簀目の本数

これまで調べた限りは、江戸時代のオリジナルは3cmあたり約23本の簀目があります。第一期目は25〜26本でした。こういった簀目の違いは、基本的には紙を漉く際の道具の違いによって生じます。第二期目は、試験的に23本と20本の2種を使用して貰いました。

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オリジナルの紙サンプル①(広い間隔で縦に走っているのが糸目で、細かく横に走っているのが簀目です。江戸時代、紙を漉く際に使う簀は、基本的に萱を麻糸で編んで作られています。現代は竹を絹糸またはナイロン糸で編んだものが主流です。こういった道具は特に明治時代を境に大きく変革したそうです。)

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オリジナルの紙サンプル②

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オリジナルの紙サンプル③ (糸目や簀目の出方の強さは、紙によって差がありますが、その間隔幅は糸目は約3cm、簀目が3cmあたり約23本と、今まで調べた範囲では共通しています。)

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第一期復元紙(糸目間隔幅約3cm、簀目は3cmあたり25〜26本。なお簀目の本数が増える程、簀目の出方は弱くなります。)

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第二期復元紙a(糸目間隔幅約2.7cm、簀目23本)

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第二期復元紙b(糸目間隔幅約2.7cm 簀目20本。これは糸が細かったため、糸目の出方が弱くなりました。)

(※和紙には裏表があり、表の方が密度は高く平滑です。そのため糸目・簀目は裏からの方が見えやすく、上記の写真は全て裏から撮影したものになります。)

第二期目の製作からは、和紙職人の田村さんは、道具作りからして下さいました。・簀目の本数・糸目の間隔・糸目の強さの3点の条件の合致は、次回に持ち越されましたが、今後更なる改良が期待でき、また恐らくここまでしてくれる方は他にいないと思います。とてもありがたいです。

2米粉の配合量

第一期目は米粉の配合量は原料重量に対して20%でしたが、第二期目は50%です。50%とという値は、事前に分析してもらった、オリジナル版画6点の値をもとにしています。第一期目を作る段階で50%でいく予定でしたが、米粉を添加するという技法は、現代では一般的ではなく、初回の第一期目では思ったようにいかなかった、というのがあります。

前述のオリジナル版画6点の米粉の配合量に関して、6点中5点は20〜50%、残りの1点は50~100%でした。「錦絵の彫と摺」石井研堂1929年には、「古来安物には、糊入という紙を用いた。」とあり、「和紙文化研究第25号」和紙文化研究会2017年 によると、「糊入」とは「米粉入」のことと考えられます。また同書には、江戸で刊行された絵入り本にはたっぷりの米粉が入っていたと報告があり、米粉の配合量は紙の値段、引いては紙質や絵のランクと関連性があるように思われ、今後更に研究と解明をしていけたらと思っています。





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