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【翻訳】クリーチャーズ・長島氏インタビュー:ムゲンゾーンの秘密

久しぶりの翻訳は、今回も海外公式から。
海外公式ではお馴染み(?)の、クリーチャーズ長島さんへのインタビューです。
対象となっているのは、8月の海外新弾"Darkess Ablaze"、日本でいう「ムゲンゾーン」「伝説の鼓動」に相当するパックです。

日本国内ではちょうど新弾が出たばかりですが、
インタビュー内容はまったく古びておらず、むしろ新しい発見が多くあります。
前回の長島さんインタビューを読まれた方も、そうでない方も、ぜひお読みください。

以下記事全文の翻訳になります。
いつもながら、誤訳の責任はすべて僕うきにんに属します。

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https://www.pokemon.com/us/pokemon-news/an-interview-with-atsushi-nagashima-about-pokemon-tcg-sword-shield-darkness-ablaze/
An Interview with Atsushi Nagashima About Pokémon TCG: Sword & Shield—Darkness Ablaze
August 20, 2020

驚異的なパワーを持つポケモンV・VMAXのカードが、ポケモンカードにインパクトを与え続けています。その最新セット、"Darkness Ablaze"でもまた、多くの新カードとともに、いっそう強力なカードが登場します。
この新セットのカードを産み出した秘密を探るため、私たちは、株式会社クリーチャーズの、ポケモンカード・ゲームディレクター、長島敦さんにお話を伺いました。

長島さんは、2001年からポケモンカードの仕事に携わっています。今回長島さんは、新カードに登場するポケモンや人物キャラクターがどのように選ばれるかなど、普段知ることのできない裏事情を教えてくれました。そしてまた、ポケモンカードのゲーム的なメカニズムについても、秘密を明かしてくれたのです。ポケモンカードを長く遊んでいるプレイヤーであれば、カードのギミックがどのようにデザインされているのか、カード開発の思考プロセスがどのようなものかを、知ることができるはずです。

インタビュアー:
カードを製作する際、そのカードがシナジーを持てるように、意図的にデザインされていますか、それとも、カードの強力な組み合わせは、プレイヤーによる実際のプレイを通じて自然と発見されていくものですか?

長島さん:
私たちはいつも、全てのカードに、何かしらの意図を込めて製作しています。あらゆるカードが、それぞれ独自のシナジーを念頭に置かれて作られているのです。そのシナジーは、単純なものもあれば、複雑なものもあります。それがどのようなものかは、そのカードの役割によります。
プレイヤーたちは大半のコンボを見つけているだろうと思います。ただ、私たちはカード製作に際して幅広いアプローチを取っていますので、もしかしたら、未発見の組み合わせもいくつかはあるかもしれません。開発者にとっては、プレイヤーたちが極めて複雑なシナジーを発見してくれた瞬間が、この上ない喜びです。
また、非常に上手いプレイヤーは、私たちの想像を超えたカードの使い方をすることがあります。開発者として、そのようにプレイヤーに先を行かれてしまうこともまた、非常にワクワクするものです。

インタビュアー:
ポケモンVMAXになるカードは、ゲームのキョダイマックスと同じというわけではないように思います。どのように決めているのですか?

長島さん:
カードの選択に関しては、このように考えることが多いです。どうすればメタゲームが面白くなるだろうか。このシリーズを通じて、どのような世界観を表現すべきだろうか。そして、そのエキスパンションではどのタイプを前面に押し出すべきだろうか。
また私たちは、ゲームではあまり注目されていないけれども、カードでは活躍できそうなポケモンを、常に探し回っています。

インタビュアー:
シリーズ初弾の「ソード/シールド」では、例えば毒タイプのポケモンがカードでは悪タイプとして表現される、というように、従来のタイプ表現が大きく変更されました。この変更の根本的な理由は何だったのでしょうか。またこの変更は、期待していた通りに機能していますか?

長島さん:
例えば、悪タイプの弱点が草と闘になる、というのは、弱点を分散させる意味では有効に働きます。
また、ポケモンカードは従来、草、炎、水タイプ間の相性ジャンケンのゲームである、というように特徴付けられていました。しかしこの関係性によって、メタゲームが非常に早く回ってしまっていたのです。
そのため私たちは、「ソード/シールド」シリーズにおいて、草、炎、水、雷、そして闘タイプが、共存し、両立できるようにしています。悪タイプは新たな変更です。弱点を介して、上記のメインのタイプと関係性を持てるようにしています。この変更で、戦略的な可能性を大きく広げられると考えています。

インタビュアー:
ポケモンカードには定期的に、明らかにビデオゲーム側の独特な要素を基にデザインされたカード、例えばガラルヒヒダルマのようなカードが登場します。ゲームのコンセプトをカードに“翻訳”する上では、どのような手法を取っているのでしょうか。

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長島さん:
まず最初に、そのポケモンの、ビデオゲーム内での特徴と、ポケモンずかんの内容を、徹底的に収集し、理解することから始めます。そこから、ポケモンカードではそのゲーム内ギミックをどうすれば一番うまく再現できるのかを議論します。
重要なポイントは、そのポケモンを、シンプルかつ、ポケモンカードが面白くなるよう表現し、できるだけ多くのプレイヤーに楽しんでもらえるようにすることなのです。

インタビュアー:
トレーナーカードの効果に対して、それが合いそうな人物キャラクターが誰かというのは、どのように決めているのですか?

長島さん:
ビデオゲーム内での人物キャラクターやどうぐに関しては、ポケモンカードではどんな効果やテキストがありうるだろう、と考えながら見るようにしています。また、時には、作りたい効果やテキストから始めて、それとマッチしそうなキャラクターや要素と合せてみる、というようなこともしています。

インタビュアー:
今回のエキスパンションのミュウVやウオノラゴンのような、過去の人気カードと同様のテキストを持ったカードを目にすることがあります。過去の人気コンセプトを再び取り上げる上では、どのようなことを考えているのでしょうか。

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長島さん:
まず第一に、過去のカードのコンセプトに関しては、徹底的に分析するようにしています。その上で、それらのコンセプトは現在どのように進化すべきかを検討します。
とはいえ、あるギミックやコンボが過去のカードと同じ効果を持っていたとしても、新しいカードは、以前とは全く違う、面白い体験となるようにデザインしています。ポケモンが同じ効果を持っていても、そこには変化があり、対戦環境を創り上げている他の多くのカードとの相互作用もまた異なっているのです。

インタビュアー:
"Darkness Ablaze"に登場する以下のカードについて、特性やワザをどのように考案したのか、HPや逃げるコスト等とのバランスをどのように調整したのか、教えていただけないでしょうか。

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長島さん:
アーマーガアのアイディアは、ビデオゲームのプレイヤーにはお馴染みの、そらとぶタクシーから来ています。アーマーガアは、ポケモンをプレイヤーの手札へと送り届けられるカードになっています。

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ポケモンブリーダーの育成についてですが、進化ポケモンを一度にたくさん育てるのは難しい、という点から、複数の進化ポケモンを入ったデッキを支援したい、という意図があります。

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ポケモンカードでは、リザードンといえば大ダメージです。リザードンVMAXは300ものダメージを出すことができますが、これは他のVMAXと比べても圧倒的なダメージ量になっています。

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オーロンゲは、毛むくじゃらの強いポケモンというイメージがあります。このカードでは、エネルギーがつけばつくほど強くなるカードとしてデザインしました。
同じ"Darkness Ablaze"のサザンドラと組み合わせれば、一瞬で最大枚数までエネルギーをつけられるという強力なコンボを作り上げます。

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ムゲンダイナVMAXは、ゲームのストーリーでは圧倒的な存在感を持っています。その存在感を、340という、現在のところ最大のHPを与えることで表現しました。またムゲンダイナは、そもそもシリーズ当初から、登場すればメタゲームに大きな影響を与えるに違いないと思われ続けていたポケモンです。
そのため私たちは、このエキスパンション自体を、ポケモンカードの環境にとって、あっと言わせるようなものになるようデザインしました。必然的に、カードテキスト単体だけでなく、他のポケモンとどのように関わるか、どのような戦い方が可能かを考えたのです。

株式会社クリーチャーズには、カードがどのように機能するのか、一日中プレイしてデータを集めてくれるテスターチームがいます。チームの役目は、新カードやギミックがどれほどの強さなのかを調べ、また同時に、新エキスパンションが登場しても、メタゲームのバランスがきちんと維持されるかを確かめることです。
プレイテスターは、新カードが登場した際に、競技プレイヤーたちが使いそうな戦略や、また新カードが過去セットのカードとどのように組み合わせられるかを予測する必要があります。テストの結果として施される修正には、HPやワザダメージの増減などがあります。
製作チームは、テストチームと綿密にコミュニケーションを取り合い、彼らのフィードバックを用いながら、私たちが作り上げたいゲームを実現させるために動いているのです。

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以上になります。お読みいただきありがとうございました。

タイプ変更と、中心となるタイプについての話は、「ソード/シールド」発売時の長島さんのインタビューでも語られています。
特にタイプ変更の話はそのインタビューのほうが詳細に語られていますので、気になる方はぜひお読みください。

ところで今回の本文中の、「そのため私たちは、「ソード/シールド」シリーズにおいて、草、炎、水、雷、そして闘タイプが、共存し、両立できるようにしています」という一文は、理解がやや難しい箇所に思います。
この「共存し、両立」という部分は、原文では"compatibility"という語が使われています。直訳では、「交換可能性、互換性」。コンパチという表現であれば聞き覚えのある方もいると思います。
これは解釈の範囲ですが、ここで言われているのは、「メイン5タイプがどのタイプでも関係なく環境内で戦えること=弱点2倍の相性ゲームは望んでいない」だと思えます。いわばマジック:ザ・ギャザリングでいう色のような、タイプごとの特色は出すが、極端な相性ゲームにはしたくない、というイメージでしょうか。

新型コロナウィルスで大きな影響を受けている海外ポケカですが、今だからこそ、今後もこういったインタビューがどんどん公開されると良いですね。

※文中の画像は元記事および海外公式サイトから借用しました。

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