世界は狭い ービザの闇ー(イギリス)

小さい頃は外国に住むのにビザが必要だなんて知らなかった。住みたい人は移住出来てしまう、そんなもんだと思っていた。

が最近分かったのはかなり移住のハードルが上がっているようだということだ。私がイギリスの大学院に留学した2017年、イギリスは1年のコース期間にプラスしてたった4ヶ月しか有効なビザをくれなかった。(ブレグジットの影響で今年?の学生からプラス2年になるよう。)たった4ヶ月でビザスポンサーになってくれる会社を探すのは至難の技で基本的には非ヨーロッパ人にはimpossibleと言われていた。私の院の時の友人もイギリスに残って働きたいと言っていた人はたくさんいたが皆コースが終わると結局国に帰ってしまった。

私はというと留学前からとにかく修士が終わったらイギリスで就職する、残ると固く決めていたのでかなり早くからインターンやらしたり大学のCVの書き方セミナーに参加したりして準備を進めていた。それが功を奏したのかラッキーなことにロンドンの映画のマーケティング・エージェンシーのインターンに合格した。創設者が私の大学出身ということで大学のウェブサイトを通じてインターンを募集していたのだ。9月にコースが終わり10月からインターンが始まって、11月か12月くらい?にボスが「残りたいんでしょ?」と言ってくれた。ものすごいラッキーである。でも会社は元々ビザスポンサーではなかったので彼らもビザに関する知識はほとんどなく、自腹を切って移民アドバイザーに話を聞きに行かなくてはならなかった。これがまた胡散臭い上に高額なのだ。確か30分のコンサルテーションに£100ほど払った気がする。さらに彼らは自分たちなら問題なくビザが降りるように書類の記入などやってあげると不安を煽り更に金を巻き上げようとしてくる。実際自分で書類記入などやってみると大して難しくないことが分かるのだが。

とにかくこの4ヶ月の間は頭がおかしくなりそうになりながらビザ申請の準備をした。当時付き合っていた彼は同じ大学でPhDをしていたのでどうしてもイギリスに残らなければという焦りもあった。(その後彼はPhD4年目の奨学金が自国政府から出ないことがわかりアメリカに働きに行ってしまい遠距離無理となって破局するのだが・・・)そしてなんとかかんとかビザを申請した後、私はBRPカードという滞在許可証が発行されるまでイギリスに滞在し続けなければならなかった。この間に日本にいる姉が大きな病気をし、入院・手術することになった。各所に問い合わせたが、もし一度日本に帰ったらあれだけ大変だったビザ申請を再度しなくてはならないと言われイギリスにとどまるしかなかった。これだけですでに闇を感じて頂けただろうか・・・

私は今の会社には私のビザについてサポートしてくれたことについてはとても感謝している。でもなぜ私を雇い続けているのか謎に思うこともある、というのも他の社員はほとんど白人・イギリス人なのだ。正社員で白人・イギリス人でないのは私だけだ。悪い人たちではないが私がマイノリティであることをしばしば忘れてしまうようで、ignoranceを感じることが度々ある。そんなわけでラインマネージャーと上手くいかないでいることもあり、元々映画のセールス会社で働きたいと思っていたので1年間何度も会社を抜け出して面接に行っていた。しかしこれが全く上手くいかない、そもそもwork permitが無い人は応募出来ない仕事も多いし、自分が受からないのは英語ネイティブでないからなのか、ビザの件が問題なのか、そもそも映画業界が人気という話もあるしモヤモヤする。(大体はもっと経験のある人を採用した、としか説明されない。)友人には1年イギリスのローカルの会社で働けば信頼度も上がると言われていたがそろそろ諦める頃合いかと思っている。

ある銀行の人から聞いた話だが、彼の韓国人の同僚は他の人が30Kのボーナスをもらっているところボーナス0だったそうだ。ビザを出しているといううことで会社が弱みに漬け込み、他の会社にそう簡単には移れないだろうというのを見越してのことだろう。更に嫌だなと思ったのは彼はこの件で会社に文句を言ったり訴えたり出来ないというのだ。なぜなら皆入社時にNon disclosure agreementを書いているので原則自分たちがいくら給料をもらっているかということを話し合ってはいけないというのだ。それでなくてもイギリス人は基本的に自分たちの給料がいくらかという話を開けっ広げにはしない、ということはこの彼のように他のみんなと自分の扱いが違うことを知らないまま働き続けていた可能性もあるわけだ。私だってもしからしたらこいつはビザでお金がかかるからその分給料から引いてやれ、と実はなっているかもしれない、と思うと怖くなった。会社の募集要項には良くequal opportunityです、人種や宗教などに関係なく応募待ってます、というようなことが書いてあるが、応募先から「我々はビザのスポンサーはしません、withdrawしますか?」と連絡が来たこともある。withdrawしますか、というより彼らが私をそういう理由で落とすということだろうにずるいなと思う。

Twitterで海外移住組のアカウントを良く見ていて海外に住んでいる日本人って多いんだなあと思うけどそれぞれ苦労はあると思う。もちろん国によって、持っている技能によってもちろん制度や就職しやすさは異なると思うじけど。例えばアナウンサーだった小島慶子さんはオーストラリアに家族で移住したけど、それは子供の留学に付き添う親のガーディアンビザというものを使っているらしい。現地で仕事をしてはいけないので小島さんが日本に出稼ぎに来ている形だとか。そもそも貯金レベルが違う気がするけれど日本とオーストラリアを頻繁に行き来しなくてはいけなくてその間子供さんたちを会えないのも大変だろうなあと想像する。留学ということだと学費も現地の子供たちとは違ってくるだろうし。ビザってそれだけ大変・・・

やはりそれだけ国内の人の仕事を奪うというのは避けられるべき、罪深いことなのでしょうか。私は日本の風土(特に男性へのトラウマ*これについてはまた次回書きたいと思っている)が合わなくて出来ればこのまま海外で暮らし続けたいのですが、お給料も現地採用よりいいし、ベストはやっぱり駐在なのではないかなと最近思います。

ちなみにPhDを持っているとスポンサーしてもらえる確率は上がるようです、というのはイギリス人でPhDまで進む人が少ないから。そして私のような修士はたった1年なので信頼に足らないというのが実情のよう・・・それでもPhDをやるなら自分で費用を確保しないといけないイギリスではなく、大学に雇われているという形で研究出来る他のヨーロッパの国の方がいいでしょうね。

状況はかなり違いますがNetflixのImmigration Nationを見始め、アメリカからdeportされる主に南米系の移民の人たちを見るにつき、結局我々は生まれた国に縛られるしかなく、世界はどんどん狭くなってしまっているような気がするのです。


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