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「入社の確約が貰えないと条件提示はしない」と言われてしまった場合の考え方について


#私の仕事


読者の皆さま、お疲れ様です。笹乃亜瑚です。


まだまだ日中暑い日が続いていますが、帰宅時等には秋の虫の音が聞こえるようになりました。季節は確実に進んでいるのだなぁと感じる瞬間です。
これからは、秋の果物が美味しくなる時期ですね。秋の味覚『旬』を味わって今年もヘルシーに過ごしていきましょう。


さて、今回は、転職活動中の友人から寄せられた相談内容について、彼女の許可を得た上で、こちらで情報共有させていただければと思います。


◆「内定受諾の意思を書面で表さないうちは条件提示できないと言われた」

とある会社の社長面接の席上、「内定を出したい。もし、本当に入社する気持ちがあるのならば、このあとすぐに人事から連絡させるから」と言われたため、「ぜひ、前向きに検討したい」と伝えたところ、人事から連絡が入り、「弊社は、入社承諾書にサインをしてから入社条件提示書をお渡しする採用フローになっているので、早急に簡易的な承諾書にサインしてほしい。今週末までに回答してほしい」といわれた。というものでした。

「オファー内容も見ていないのに入社承諾書にサインって…こういうことってよくあることなの?」と友人は不安がっていました。

「転職活動を始めたばかりで、応募して3社目で早々に内定と言われ嬉しかったし、一次面接の面接官の雰囲気が良かったし、これまでの経験が生かせそうなので、その会社には行きたい気持ちはある。
でも、まだ他の会社の選考が進んでいないし、他の条件も見てみたかったんだけど…」とのこと。

別の学生時代の友人に相談してみたところ、「簡易的な書類でしょ?いったんサインして、条件提示書類を貰って見てみれば?もしも他社からの提示がもっと良い条件だったら断ればいいよ。だって、憲法で『職業選択の自由が保証』されているんだから」と言われたのだそうです。



◆条件提示書類の提示が「先」

「笹乃は転職支援業界の経験が長いし、プロの意見も聞いてみようと思って。どう思う?」と友人。

・・・良かった。私のこと思い出してもらって。


実は、私自身、これに近いことをキャリアコンサルタントとして企業人事から言われたことがあります。

「入社承諾の意思を確認させてもらってから正式書類を発行します。概ね●●●万円台でのオファーにする予定だから、この転職者を口説いて先に承諾の確約を貰ってください」と。

きっと、この会社は何度も「オファー承諾した後でも平気で断ってくる転職者」に泣かされ続けてきたのでしょう。だから、その対策として「入社意思を書面で貰った転職者にだけ正式書類を発行する」という採用フローにしたのだと思います。

私は、「労働条件を明らかにする書面の提示がない状態では、転職者に意思決定をさせることはできません。書面でご提示いただけませんか」とこの企業に提案し、雇用条件通知書のたたき台もお渡しした上で、転職者が最低1週間は熟考する期間をいただけるよう交渉しました。


労働基準法や労働契約法上、採用時には「労働条件の明示、文書による明示」が採用企業には義務付けられています。
「入社すると約束するなら採用する」という採用手法は間違っているのです。
労働条件、採用条件をしっかりと文書(紙媒体でも電子媒体でもOK)で提示した上で、転職者に熟考してもらって意思決定するのが正しいやり方です。



◆『職業選択の自由』を振りかざすのはやめよう

「日本国憲法第22条で保証されているので、オファーの承諾をした後でも、それを辞退することは可能。」

「辞退した場合でも、採用企業は損害賠償などできない」

という考え方ですが、確かに日本国憲法で『職業選択の自由』は保証されています。

実際、キャリアコンサルタントの中には、「内定受諾をした企業を断らせてでも自社が勧める会社に意思を翻させる」かなり強引なアドバイスをする人たちがいて、彼らの論理のベースにはこの『職業選択の自由』があります。

ただ、この『職業選択の自由』の考え方は、憲法が成立した時代によくあった、身分や性別、出自によって自由に職業が選べない時代の弱者を保護・救済するために規定されたもの。何人たりとも職業選択の際に差別を受けないようにと規定されたものなのです。

日本は労働者に対する保護意識が強くて、転職者がオファーを辞退しても法的にはほとんど手段を講じられません。
そのため、対抗処置として今回のような対応を考え出さざるを得ない会社が出てきてしまうのだと思います。本当に困ったものだと思います。



◆「安易に承諾したり簡単に断ったりしない」ビジネスパーソンになろう


たとえ簡易的書類だろうと口頭であろうと、「承諾します」と回答したあとでその契約を安易に翻すことは、ビジネスパーソンとして絶対に、絶対に避けましょう。思っている以上に世間は狭かったりします。“契約概念のない人”という評価は、ずっとついて回ります。


「先に、採用条件提示書類で、労働条件を提示してくださいませんか?大事な意思決定なので書面での提示がなければ判断できません。とその会社にきちんと伝えるべき。もしもそれに応じてくれない会社であれば、そのような会社には入社は勧められない」と友人には伝えました。

(直接応募の場合、こういうやりとりがストレスですね…人材紹介会社経由であればここはキャリアコンサルタントの出番なのですが。)

ちなみに、海外の雇用契約は日本とは異なり、オファーレターにサインした後に辞退すると、場合によっては損害賠償請求の対象になり得るので要注意です。

それでは、今日はこの辺で。またお目にかかりましょう!
笹乃亜瑚

よろしければサポートを是非お願いします。現在医療介護系の人材会社に所属しつつ、これまで経験してきたことを「転職しようと思ったこともないひとたち」「転職活動したことがないひとたち」が「転職せざるを得なくなってしまった」ひとに還元できるようにしたいと思い活動を始めました。